ASEANドラッグストア市場。日本では馴染みのないWatsonsのマーケティング成功事例

近年、日本における小売各業態の市場規模において、ドラッグストアが急成長しています。

しかし、一方で、国内は少子化に伴う人口減少が続いています。そのような将来を見据えて、ドラッグストアを展開する日本企業は、少しずつ海外進出に踏み出しています。

ここでは、日本のドラッグストアで海外展開している企業の紹介と、アジアで著しい成長を見せるワトソンズの成功要因、海外のドラックストアの動向についてお話します。

 

ASEANドラッグストア市場規模

ドラッグストアには医薬品や化粧品などが販売されていることから、ASEANのドラッグストア市場のポテンシャルを「医薬品市場」、「化粧品市場」、「小売市場」3つの観点で見てみたいと思います。

 

医薬品市場

みずほ銀行のレポートでは、ASEAN地域6カ国(タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、シンガポール)の医薬品市場は、年率7.0%、中国も同6.4%成長すると予測されています。

医薬品

 

成長の背景には、所得水準の上昇、医療提供体制の整備、生活習慣病の増加があります。

一方、日本市場の成長率は年1.4%程度。これは中国やASEANを大きく下回ります。

高齢化で需要そのものは拡大するものの、薬価の引き下げや、後発医薬品の使用促進が影響しています。

薬価への圧力は高まっているため、日本市場は近い将来縮小に転じるとも指摘されています。

日本のドラッグストア企業が新たな収益源を得るために成長の著しいアジアに目が向くのは当然です。

 

化粧品市場

市場調査会社のTPCマーケティングリサーチによると、東南アジア6カ国の化粧品市場の規模は、2019年度に9,295億円に達する見通しと明らかになりました。これは、10年前と比較すると2倍の水準です。

化粧品

 

小売市場

ASEANにおける小売市場も着実に成長していることが分かります。

小売り

https://www.mizuho-fg.co.jp/company/activity/onethinktank/vol012/pdf/14.pdf

上記3つの視点から、ドラッグストアの市場規模の拡大には期待が見込めると言えるでしょう。

 

ASEAN、アジアへの進出状況

次に、ASEAN諸国に店舗展開している日本のドラッグストア企業の一覧をご紹介します。

日系ドラッグストア

https://hbol.jp/199053

 

ウエルシアホールディングス

中国上海を中心に海外店舗を出店。出店先はイオンが展開する日系のショッピングセンターを中心としに、今後は20店舗まで出店を目指します。

 

ココカラファイン

同社は東アジアでの展開を強化。

2012年以降、中国では100%出資の現地法人によって店舗展開をスタートしており、その他ではロシア、ベトナム、タイにも出店しています。

 

ツルハホールディングス

2012年、タイに海外1号店を皮切りに、タイ国内におけるドミナント展開によって積極的な出店を進めています。

バンコクを中心に現在24店舗を展開し、今後は、タイ国を起点にASEAN諸国やアジア地域への多店舗展開に向ける意向。

 

トモズ

同社は親会社である住友商事と共同で設立した合弁会社を通じ、台湾進出を果たし、現在の店舗数は約50店舗になっています。

 

マツモトキヨシホールディングス

同社はタイの大手財閥企業セントラルグループ傘下でスーパーマーケットを運営するセントラルフードリテールと協業。

2014年からスーパー「トップス」の23店舗でマツモトキヨシのPB商品を販売。タイで早期に100店体制を目指しています。

 

ワトソンズ

日本のドラッグストア企業の海外展開はまだまだ店舗数が少ないと言えるでしょう。

現在アジアで飛ぶ鳥を落とす勢いで店舗数を拡大しているのが、香港のワトソンズです。

WATSONS

 

ASEAN諸国への出店だけでなく、トルコ、エストニア、スロベニアなどの欧州諸国にも展開しており、2018年の段階で、中国の438の都市に合計3200以上の店舗を、欧州を含めると世界に6,000を超える店舗を有しています。(2020年時点で、日本にはまだ進出の予定はありません。)

 

ワトソンズはドラッグストアとしてなぜこれほどまでに成功を収めたのでしょうか。その要因を6つご紹介します。

 

①マーケティング戦略

ワトソンズのマーケティング戦略は、市場を各セグメントに分け、「あるマーケットセグメントの中で1番になるべき」という信念を持っています。もしそのセグメントの中で1番になれなければ、コンセプトを創り上げて新しい分野を定義するというマーケティングを行ってきました。

 

そこでワトソンズはyour personal store”というコンセプトのもと、他のドラッグストア、小売りスーパーマーケット、現地ローカル化粧品専門店とは異なる独自のポジションを築いています。

 

②ブランド認知

“your personal store”をコンセプトとし、“ヘルス・ビューティー・ハッピー”の三つの理念をのもと、商品陳列棚、レジ、ビニール袋にそれぞれを象徴したハート、唇、スマイルマークを付けています。また、エレガントなショッピング環境とプロフェッショナルによるカウンセリングを提供しています。

 

③明確なターゲット層

ワトソンズが消費習慣について調べたところ、欧米とアジアの女性のショッピングにかける時間が異なることが分かりました。店舗平均滞在時間はアメリカ人はわずか5分、アジア人は約20分と、アジアの女性はかなり時間をかけています。そして、さらに分かったことは「より安くて自分に合った商品を探す」ために時間をかけているということでした。

そこでワトソンズはこのような動向を主に示している18歳~40歳の女性をターゲットとしています。

 

 

④PBブランド開発により低価格・高品質を実現

2004年、ワトソンズは人気の健康商品とスキンケア商品1,200アイテムを小売価格より約5%OFFにして販売促進活動を行いました。

その結果、その商品群の中にPB商品が15%以上占めているということが分かりました。

それらのPBブランドの値段は、ほかの小売店に販売されている同類の商品よりも20%~30%安かったため、知名度あるブランド商品を取り入れながらも、品質管理やパッケージデザインを工夫したPBブランドも積極的に展開しています。

 

⑤EC戦略

先ほど、ターゲット顧客である18~35歳の女性は、「より安くて自分に合った商品を探す」ために買い物に時間をかけるとご紹介しましたが、この年齢層の中には同時に「消費購買力はありが、時間の余裕がなくショッピングに行く暇がない」女性もいます。

そのような女性はワトソンズの店舗のような広い敷地のドラッグストアやショッピングモールに行って時間を取られることを嫌います。

 

このような層を取り込むためにも、ECにも力を入れています。

2018年初め、ワトソンズは「定時配送」サービスをリリースしました。

これによってワトソンズの200数店舗は「倉庫」へと変わり、3キロ以内の購買者にスピーディーな配送を行っています。

オンラインストアの商品は2,000種類以上で、オフライン2,500店舗の商品をオンライン化するように進めています。

 

⑥ARの導入

ARを使ったスマートミラーも積極的に店舗に導入しています。

実際にその化粧品を使用した場合、どのような仕上がりになるかを瞬時にミラー型モニターに映し出す技術です。100種以上の化粧品を対象になっています。

 

2017年2月にまず上海の店舗で導入し、その後、台湾や香港の店舗でも導入されています。

 

ASEANのドラッグストア動向

それでは次に、ASEAN各国のドラッグストアの市場動向をご紹介します。

 

シンガポール

シンガポールはアジアの中でも成長著しく、かつオープンな市場である一方で、急速に高齢化が進展しております。BIZLABマガジンによるとシンガポールの医薬品市場は2018年に11億2,000USDにまで成長すると予測されています。

シンガポール政府

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/91a0338b87113e7c/hls-spr.pdf

シンガポールドラッグストア

 

シンガポール政府観光局によると、中国からの訪問者は2016年の280万人から2017年の320万人へ13%増加しています。

WeChatとDFSGおよびNETSとの提携により、シンガポール国内でより便利なキャッシュレス決済を普及させ、ターゲット層である中国人観光客の取り込みを狙っています。

 

 

日本のドラッグストアでは、ウエルシアHDがシンガポールにドラッグストア事業の合弁会社を設立しました。

 

マレーシア

ワトソンズとガーディアンはそれぞれ、マレーシアに約400以上の店舗を持っています。

ガーディアンはマレーシアのドラッグストア業界において、歴史が長く、消費者に広く認知されています。

Wellness

 

イオンは、イオン・カンパニー(マレーシア)が、8月8日に同社直営のイオン・ウエルネス・チェラス・セラタン店内にクリニックを開設すると発表しました。

ドラッグストアの店内にクリニックを併設するのはマレーシアにおいて初の取り組みとなります。「365日受診可能」という利便性に加えて、医師が常駐するクリニックを併設。「ワンストップヘルスケア」をコンセプトとし、より便利で身近な総合医療サービスを提供します。

 

タイ

タイ保健省によれば、タイのドラッグストア市場は全国15,000店舗、296億バーツ規模となっています。

大手チェーンが続々と店舗を増やす中、Bangkok Hospitalのような市立病院も参入し、セブンイレブンも処方せん薬局を開店させています。

首都バンコクに約4,800店、地方都市に約10,500店の薬局が存在しています。

急速な増加に対応するための薬剤師の確保が課題であり、また競争は激化しているものの、大都市には未だ成長の余地があります。そのため各社はサプリメントや美容用品の開発に注力しています。

 

ワトソンズのタイ支社は15日、今年の投資予算を5億バーツ(約16億4,500万円)に設定し、店舗増設やオンライン販売の強化、取扱商品の拡充に注力し、2桁増収を目指しています。

日本企業で健闘しているのはツルハです。タイ国内のグループ店舗は、1店舗の新規出店と2店舗の閉店を実施。同国内における店舗数は2020年5月15日現在で22店舗となりました。

 

 

インドネシア

基礎クリニック、薬局などは外資が認められないため参入しにくいと言われています。

ガーディアンは、医薬品や健康関連商品を取り扱うドラッグストア大手で、スーパーマーケット大手のHero Supermarketの傘下にあり、現在、インドネシア全土で300を超える数の店舗を展開しています。

インドネシア全国に1,276店舗の薬局を展開しているキミアファルマ。ドラッグストアではワトソンズが最大40店舗の出店を目指しています。

 

インドネシアでは、ムスリム(イスラム教徒)女性の間でハラールに対する認識が高まり、中間層の増加の増加につれ、ハラール化粧品を求める女性も多くなっています。

 

フィリピン

それぞれのドラッグストア企業は年1%ほどの割合でマーケットを拡大しており、ドラッグストアの店舗数は毎年50店舗以上増え続けています。

フィリピンにおいてワトソンズのシェアはわずか10%以下。最も勢力を伸ばしているのが、1945年に設立されたマーキュリードラッグです。

フィリピンのローカル企業で一番の老舗で、店舗数は約1,100店舗を誇ります。売上、ドラッグストア市場の約60%のマーケットを占めています。

 

ベトナム

ベトナムの医薬品は海外からの輸入に依存しているため、海外の製薬会社にとってはビジネスチャンスが大きい国です。

医薬品小売市場、21年に77億USD規模へ拡大すると言われています。

 

ベトナムの大手ドラッグストアチェーンは、ファーマシティ、メディケア、ロンチャウの3社です。

最大手のファーマシティは2020年は新規に225店舗を、合計480店舗をオープンし、2021年末までに1,000店舗まで拡大する予定です。

しかし、大手3社とも売上高は拡大していますが、最終利益は赤字に陥っています。

これは急速な店舗拡大が赤字拡大を招いています。マツモトキヨシも2019年にベトナム進出を正式公表しました。

ベトナム店舗では日本の化粧品、世界的な有名ブランドの化粧品以外に、健康補助食品、機能性食品、ボディケア用品の販売を計画しています。

 

 

最後に

日本のドラッグストアの海外進出状況や、ASEAN諸国のドラッグストアの動向をご理解いただけましたでしょうか。

ワトソンズはまだ日本に進出していませんが、今後は日本の市場も視野に入れてくるかもしれません。

日本のドラッグストアの進出状況はまだまだ店舗数が少ないですが、今後はますます本格化していくでしょう。

 

<参考>

https://diamond-rm.net/management/44426/

https://www.syogyo.jp/column/2020/01/post_026390

https://hbol.jp/199053

https://asiaclick.jp/2015/04/02/dragstore/

https://www.syogyo.jp/column/2019/11/post_026017

https://bizlab.sg/magazine/blog/2019/03/02/singapore-drugstore-3/

https://domanda.jp/singapore_m-and-a_pharmaceutical_industry-report/

https://www.syogyo.jp/news/2013/02/post_005457

https://roboteer-tokyo.com/archives/15183/3

https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP438241_R00C17A3000000/

https://www.nikkei.com/article/DGXNASFC2000I_Q1A920C1L41000/

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/01/ccebb77698f761c9.html

https://cross-b.jp/blog/1231

https://bizlab.sg/magazine/blog/2019/02/19/philippines-drugstore-3/

https://onevalue.jp/drugstore/

https://www.nna.jp/news/show/1609248

https://www.nna.jp/news/show/1700777?id=1700777

https://www.ryutsuu.biz/accounts/m062314.html

https://cross-b.jp/blog/433

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/91a0338b87113e7c/hls-spr.pdf

https://www.viet-jo.com/news/economy/190405153030.html

https://www.google.co.jp/search?q=ASEAN%E3%80%80%E5%8C%96%E7%B2%A7%E5%93%81%E3%80%80%E5%B8%82%E5%A0%B4&tbm=isch&ved=2ahUKEwil6Znnr6XtAhWLAqYKHfFQC0oQ2-cCegQIABAA&oq=ASEAN%E3%80%80%E5%8C%96%E7%B2%A7%E5%93%81%E3%80%80%E5%B8%82%E5%A0%B4&gs_lcp=CgNpbWcQAzIECAAQGDoKCAAQBBAlECAQGFCd0wZYpeAGYNrhBmgAcAB4AIABuAGIAZEMkgEEMS4xMpgBAKABAaoBC2d3cy13aXotaW1nwAEB&sclient=img&ei=b1TCX-X1LouFmAXxoa3QBA&bih=915&biw=2000#imgrc=vhoBW0paX6yrtM&imgdii=HEnYGoWF7c6tGM

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%88%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%82%BA

https://beautytech.jp/n/n276b8434f71c

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