
化粧品・ヘアケア・スキンケア業界は、世界的な需要の拡大を背景に成長を続けています。一方で、日本市場は成熟化が進んでいるのが現状です。世界市場が拡大し、国内市場が縮小すると見込まれる中、日本企業にとって海外展開の重要性が増しています。そこで本記事では、世界の美容メーカーランキングを基に業界構造を整理し、日本の大手企業の海外戦略をわかりやすく解説します。※2026年3月時点の情報を基に執筆しています。
日本の化粧品・ヘアケア・スキンケア業界の現状
日本の化粧品・ヘアケア・スキンケア業界は、長年の研究開発に加え、消費者の安心・安全への意識の高さを背景に高機能・高品質な製品を提供してきました。これらは、日本製品の大きな競争優位性です。
しかし、国内市場はすでに成熟しており、人口減少や少子高齢化の進行により、今後は市場の縮小も懸念されています。実際に、新型コロナウイルスの影響を受けた2020年以降、回復基調は見られるものの国内の化粧品製造業の出荷額は低迷が続き、海外製品の輸入も増加しています。

出典:経済産業省「化粧品製造業をめぐる状況」
特に韓国やフランス、中国からの輸入が拡大しており、国内市場の競争は一層激化しています。

出典:経済産業省「化粧品製造業をめぐる状況」
こうした状況の中、日本企業が持続的な成長を実現するためには海外展開を強化していくことが不可欠です。
美容業界の世界市場規模
世界の化粧品・ヘアケア・スキンケアを含む美容市場は、安定した成長を続けています。株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、美容業界の世界市場規模は2025年に2,680億ドル、2026年に2,835億ドル、2030年に3,504億ドルに達する見込みです。年平均成長率は5.4%と堅調で、成熟化が進む日本市場とは対照的です。
この成長の要因の一つとして、東南アジアやインドをはじめとする新興国が挙げられます。これらの地域では経済成長に伴い所得水準が向上し、都市化も進展していることから、美容や身だしなみに対する支出が拡大しているためです。加えて、世界的なオーガニック志向・ウェルネス志向の高まりも市場拡大を後押ししています。
また、世界の美容市場は地域ごとにニーズが異なる点も特徴です。主な傾向は以下のとおりです。
- 東南アジア:スキンケア
- 欧州:スキンケア・フレグランス
- 北米:メイクアップ・スキンケア
- 中南米・中東:フレグランス
- 南アジア:ヘアケア
このように地域ごとに求められる製品の需要が異なるため、企業には市場ごとに最適化した製品戦略が求められます。なお、日本市場はスキンケア製品の比率が高く、東南アジア市場との親和性が高いと言えます。
参考:株式会社グローバルインフォメーション「化粧品と美容の世界市場レポート 2026年」
美容業界の世界メーカーランキング【トップ10】
美容業界の世界市場の構造を把握するため、アメリカの業界誌WWDが公表した「The 2024 Top 100 Beauty Companies」を基に、2024年の世界メーカーランキング上位10社を紹介します。
| 順位 | 企業名 | 売上高(美容関連) | 国・地域 |
| 1位 | L’Oréal S.A.(ロレアル) | 470億ドル | フランス |
| 2位 | Unilever PLC(ユニリーバ) | 266億ドル | イギリス |
| 3位 | Estée Lauder Companies(エスティ・ローダー・カンパニーズ) | 152億ドル | アメリカ |
| 4位 | Procter & Gamble(P&G) | 150億ドル | アメリカ |
| 5位 | LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン | 91億ドル | フランス |
| 6位 | Chanel(シャネル) | 85億ドル | イギリス |
| 7位 | Beiersdorf AG(バイヤスドルフ) | 85億ドル | ドイツ |
| 8位 | 株式会社資生堂 | 66億ドル | 日本 |
| 9位 | Coty(コティ) | 61億ドル | アメリカ |
| 10位 | Puig(プーチ) | 48億ドル | スペイン |
参考:WWD「The 2024 Top 100 Beauty Companies」
トップ10のうち9社を欧米企業が占めており、美容業界は欧米企業を中心とした構造となっていることがわかります。一方で、日本企業も1社ランクインしており、世界市場で一定の競争力を有していることを示しています。
ランキングから見る世界大手企業の特徴
世界の美容メーカー上位企業には、次の共通点が見られます。
① グローバル展開
上位企業の多くは、北米・欧州・アジアをはじめとする世界各地で事業を展開しています。特定の地域に依存せず、複数の市場で収益を確保することで、安定した成長を実現している点が特徴です。例えば、ロレアルは世界150カ国以上で製品を展開しています。また、美容業界は地域ごとにニーズが異なるため、各市場に合わせた商品開発やマーケティングが不可欠です。そのため、上位企業は現地に生産拠点を設けるなど、ローカライズ戦略を推進しています。こうした取り組みが、世界市場における競争優位性につながっています。
② 多様な事業ポートフォリオ
もう一つの特徴は、複数のブランドやカテゴリーを組み合わせた多様な事業ポートフォリオです。上位企業は、スキンケア、メイクアップ、ヘアケア、フレグランスなど幅広い製品を展開しています。
日本の大手企業の海外戦略
化粧品・ヘアケア・スキンケア業界の世界市場では、欧米企業が主導的な地位を占めています。こうした中でも成長の機会を探るには、日本の大手企業がどのような海外戦略で事業を拡大しているのかを把握することが大切です。ここでは、代表的な3社の取り組みを解説します。
株式会社資生堂

出典:株式会社資生堂
株式会社資生堂は、スキンケア・メイクアップ・フレグランスを中心に事業を展開する化粧品メーカーです。120カ国以上で製品を販売し、世界に11の生産拠点を持っています。2025年の海外売上比率は69.6%に達しており、海外進出の成功例の一つと言えます。同社の海外戦略の特徴は、中国市場への早期参入と現地ニーズに合わせたローカライズ戦略です。これにより中国での市場シェアを拡大し、2025年には中国市場の売上は全体の35.3%に達しました。
株式会社コーセーホールディングス

株式会社コーセーホールディングスは、スキンケア・メイクアップを中心に事業を展開する化粧品メーカーです。同社の海外戦略の特徴は、2030年までに海外売上比率50%の達成を目標に掲げ、ASEANやインドといった成長市場への展開を強化している点です。その手法として、M&Aや現地企業との提携を積極的に推進しています。なお、2024年時点の海外売上比率は35%でした。
この背景には、中国市場への依存度の見直しがあります。コロナ禍においては中華圏と海外免税が売上の約25%を占めていました。しかし、直近では10%程度まで低下しています。こうした市場環境の変化を受け、同社は次の成長市場としてASEANやインドに注目しています。
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス

株式会社ポーラ・オルビスホールディングスは、高価格帯のスキンケア製品を中心に展開する化粧品メーカーです。カウンセリングを軸としたビジネスモデルにより、顧客との長期的な関係構築を重視しています。
同社の2023年の海外売上比率は16.7%でした。これを2029年には30~35%まで引き上げることを目標に掲げています。その実現に向け、ASEAN市場への投資を加速しているのが同社の海外戦略の特徴です。2024年末時点で23店舗を展開しており、2027年までに店舗数を約2倍へ拡大する方針です。
まとめ
日本の化粧品・ヘアケア・スキンケア製品の強みは高機能・高品質という点です。一方で、国内市場は成熟しており、今後の成長には海外展開が重要となっています。実際に、日本の大手企業は次の成長市場としてASEANやインドに注目し、積極的な投資や事業展開を進めています。進出先に迷う場合は、こうした大手企業の動向を参考にしてみてはいかがでしょうか。
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