日本が世界に誇る産業の1つがゲームです。「ファミリーコンピュータ」や「PlayStation」など、古くからハードの開発が盛んで、世界においてもシェア獲得に成功しているためです。
そのため、ゲーム業界では世界展開に成功した事例が多くあります。本記事ではゲーム業界の市場規模や成功事例を紹介します。世界進出のヒントが詰まっていますので、ぜひ参考にしてください。
ゲーム業界の市場規模
ゲーム業界は、スマホの普及によりアプリゲーム市場を中心に拡大を続けています。
株式会社角川アスキー総合研究所の「ファミ通ゲーム白書2022」によると、国内だけでもアプリゲームユーザーは4,231万人に達しているとのことです。
この章では、国内・海外のゲーム業界の市場規模について解説します。
国内の市場規模は2兆円以上
同調査によると2021年の日本の市場規模は2兆円を超えており、前年から微減したものの、2012年と比較すると2倍以上拡大しています。そのなかでもオンラインプラットフォームのゲームコンテンツの伸びが著しく、2012年と比較して約3倍の1兆6,414億円でした。
世界の市場規模は21.9兆円
2021年の世界の市場規模は21.9兆円で、前年の20.6兆円より約1.3兆円も拡大しています。海外市場の主要な地域と市場規模は以下のとおりです。
- 東アジア:8.8兆円
- 北米:6.4兆円
- 欧州:4兆円
このように、ゲーム業界は世界市場に大きなチャンスのある分野といえるでしょう。
TVゲーム機(ハード)の地域別の販売台数
ゲーム業界の世界展開を考えるうえで、ハード機の普及は切っても切れない関係です。地域によって、売れ筋のハード機が異なるためです。この章では主要ハード機の地域別の販売台数をVGChartzの「Platform Totals」のデータをもとに紹介します。
- Nintendo Switch
Nintendo Switchは2017年3月から任天堂より販売された、持ち運べる家庭用ゲーム機です。全世界で1.2億台が販売されており、各エリアの販売状況は以下のとおりです。
北米:4,545万台
ヨーロッパ:3,230万台
日本:2,982万台
- PlayStation 5
PlayStation 5は2020年11月からソニーインタラクティブ・エンターテイメントより発売された、次世代型の家庭用ゲーム機です。従来機種のPlayStation 4と互換性があり、4,000タイトル以上のゲームをプレイできます。高性能さ・遊べるタイトル数の多さから人気のハード機です。
全世界で3,871万台が売れており、各エリアの販売状況は以下のとおりです。
北米:1,567万台
ヨーロッパ:1,168万台
日本:751万台
- Xbox Series X/S
Xbox Series X/SはMicrosoftが開発し、2020年に販売が開始された家庭用ゲーム機です。初代のXbox・Xbox 360・Xbox Oneと互換性があり、過去に購入したタイトルで遊ぶこともできます。
全世界で2,199万台が売れており、各エリアの販売状況は以下のとおりです。
北米:1,182万台
ヨーロッパ:598万台
日本:47万台
上記の3機種を比較すると、日本ではXbox Series X/Sの販売数が伸びていません。一方、北米は3機種とも販売数を伸ばしています。
このように地域によって、ハード機の普及状況が異なります。つまりゲーム業界で世界展開を成功させるためには、ターゲット地域のハード機の普及状況を参考に、どのハードに対応したソフトを出すかが重要なポイントです。
マルチプラットフォーム・クロスプラットフォームが成功のカギ
ゲームといえば、上記で紹介したようなハード機を利用する方法を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、ハード機を利用せずにゲームを楽しむ方法も一般的になりつつあります。
例えば、Steam(スチーム)やRoblox(ロブロックス)などです。
SteamはPCゲームを数多く取りそろえているプラットフォームで、世界中の有名なタイトルをプレイできます。
Robloxはオンライン上で他ユーザーとゲームをしたり、他ユーザーが作ったゲームをプレイしたりできるプラットフォームです。世界中でプレイヤーが急増しており、月間アクティブユーザーが1億5,000万人を超えるほどです。
このように、現代ではゲームを楽しむための選択肢が複数あります。
そのため、ゲーム業界で成功を収めるためのカギは、マルチプラットフォームやクロスプラットフォームといえます。
マルチプラットフォームとは、複数のハード機・プラットフォームに対応できるように開発されたソフトのことです。例えばPlayStation 5とNintendo Switch、Steamでリリースするといった具合です。このようにすることで、Nintendo Switchは持っているけれど、PlayStation 5は持っていないユーザーもプレイできます。
クロスプラットフォームとは、異なるハード機・プラットフォームのユーザーがオンライン上で一緒にプレイできるソフトのことです。世界中で人気の「Minecraft(マインクラフト)」や「Fortnite(フォートナイト)」が有名です。クロスプラットフォームに対応することで、より多くのユーザーと一緒に遊べるので、友人らとゲームを楽しみやすくなります。
つまり、マルチプラットフォーム・クロスプラットフォームに対応することで、ターゲットユーザーを増やせます。
ゲーム業界の世界展開に成功した事例3選
ゲーム業界では世界展開で大きな成功を収めている事例は数多くあります。今回はそのなかでも、近年注目されている3タイトルについて紹介します。
事例① 任天堂「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」
1つ目の成功事例は、任天堂の「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」です。
2023年5月12日に販売された「ゼルダの伝説」シリーズの最新作で、3日間で1,000万本を売り上げています。このうち224万本が国内で販売されたため、海外では776万本以上が売れたことになります。
ゼルダの伝説は1986年に初代が登場して以来、長い間ファンを獲得し続けている任天堂のビッグタイトルの1つです。海外でも成功を収めた要因は、知名度・ユーザーの期待値の高さといえます。
売上本数の7割以上が海外で売れていることから、世界展開で成功すると大きな売り上げが見込めることを示す良い事例です。
事例② カプコン「モンスターハンター:ワールド」
2つ目の成功事例は、カプコンの「モンスターハンター:ワールド」です。
2018年1月に販売を開始した同タイトルは、1ヵ月でカプコンの歴代販売本数を更新し、2023年3月時点で1,880万本を売り上げています。また「モンスターハンターワールド:アイスボーン マスターエディション」を含めると、販売本数は2,250万本で、カプコンの代名詞ともいえるほどのビッグタイトルになっています。
このように、「モンスターハンター:ワールド」が成功した要因は以下の4つです。
- 世界で同時発売したこと
- グローバルで大々的なプロモーション活動をしたこと
- 長期的に販売していること
- マルチプラットフォームに対応したこと
つまり「モンスターハンター:ワールド」は、開発時点で世界展開を想定していたこととマルチプラットフォームに対応することで成功した良い事例といえます。
事例③ miHoYo「原神」
中国のmiHoYoはゲームアプリ「原神」で、中国・日本・アメリカなどにおいて大成功を収めています。
「Sensor Tower」の調べによると、原神モバイル版の収益の内訳は1位が中国で32.4%、2位が日本で24%、3位がアメリカで18.2%です。つまり収益の67.6%を中国国外で売り上げています。
このように海外展開に成功した要因は、「マルチプラットフォームに対応したこと」と「開発当初から全世界同時配信したこと」です。
具体的には2020年9月にモバイル版を発表して以降、PC版・PlayStation 4版・PlayStation 5版がリリースされています。さらに今後、Nintendo Switch版の投入も予定されています。
このようにマルチプラットフォームへの対応を進めることで、ユーザーの囲い込みに成功しているのです。
出典:Sensor Tower「モバイル版原神がリリースから2年4ヵ月で日本市場累計収益10億ドルを突破」
まとめ
ゲーム業界は21兆円を超える市場規模があります。その多くは海外市場のため、海外展開することでビッグチャンスをつかめるかもしれません。紹介した事例をみると、「開発時点から世界展開を想定していること」と「マルチプラットフォーム展開」が成功のカギといえるでしょう。 ゲームソフト・アプリで海外展開を予定しているのであれば、開発前の調査や事業性の検証はProveにご相談ください。