今更聞けない、大人気のポケモンの海外戦略とは?

2023年8月8日~14日に行われた「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023横浜みなとみらいイベント」では、世界中のポケモンファンが日本の横浜に集まりました。同イベントで行われた世界バトル大会は、50ヵ国から2,000人以上が参加しています。世界におけるポケモンの人気の高さを示したイベントといえるでしょう。

しかし、ポケモンがなぜ世界的な人気コンテンツに成長したのかを知っている方は少ないかもしれません。そこで本記事では、世界中でブームになり続けるポケモンの海外戦略について解説します。

ポケモンは10兆円産業?

世界的な人気キャラクターといえば、どのキャラクターを連想しますか。このように聞くと、ディズニーの「ミッキーマウス」や「プーさん」を思い浮かべる方が多いでしょう。

しかし、ポケモンはそのような人気キャラクターを抜いて、世界1位の市場規模を誇っています。

その証拠に米金融会社TITLE MAXの2016年の調査によると、ポケモンの市場規模は921億ドル(約10兆円)で世界1位でした。なお「ミッキーマウス」は705億ドルで4位、「プーさん」は750億ドルで3位です。

この調査からもポケモンは、世界的な人気コンテンツといえます。

参考:TITLE MAX「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time

株式会社ポケモン

ポケモンのコンテンツの企画・運営・管理は、「任天堂」がしていると思っている方もいるかもしれません。しかし、ポケモンのブランドマネジメントを行っている企業は株式会社ポケモンになります。

株式会社ポケモンは、任天堂株式会社・株式会社クリーチャーズ・株式会社ゲームフリークの共同出資により設立された会社です。3社のポケモンにおける役割は以下のとおりです。

会社名役割
任天堂株式会社ポケモンのビデオゲーム製造・販売
株式会社クリーチャーズポケモンのビデオゲーム・トレーディングカードゲーム開発
株式会社ゲームフリークポケモンのビデオゲーム開発

この章では、株式会社ポケモンと主力ゲームの概要について紹介します。

株式会社ポケモンの会社概要

株式会社ポケモンの会社概要は以下のとおりです。

社名株式会社ポケモン (The Pokémon Company)
設立1998年4月
資本金3億6,540万円
事業内容ビデオゲーム、カードゲーム、アプリ、映像のプロデュース・開発、ライセンス事業、店舗運営等
海外拠点・The Pokémon Company International
・Pokémon Korea, Inc.
・Pokémon Singapore Pte. Ltd.
・Pokémon Shanghai
売上比率国内売上35%、海外売上65%

また2023年2月期の売上高は、2,345億2,800万円(前期比+14.85%)と直近でも大きく売上を伸ばしています。

主力ゲーム/ポケットモンスターの概要

株式会社ポケモンの主力ゲーム「ポケットモンスター」は、1996年に発売したゲームボーイ用ソフトの「ポケットモンスター 赤・緑」が始まりです。主なゲーム内容は、主人公が旅をしながら151種類のポケモンを収集・育成し、ポケモントレーナーとのポケモンバトルに勝利することでした。

内容に加えて、収集したポケモンを友達同士で交換・対戦できる斬新なシステムが支持され、世界で合計3,137万本という大ヒットを記録しています。同年にポケモンカードゲーム、翌年にテレビアニメの放映が開始され、それぞれ人気コンテンツに育っていきます。

また2016年にはスマホ用ゲーム「ポケモンGO」がヒットし、街や公園でスマホを片手にポケモンを捕まえる人が溢れ、社会現象にまでなりました。

さらに2021年には、Nintendo Switch用ゲーム「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」が合計2,000万本を超えるメガヒットを達成しています。

ポケモンはなぜ世界中で大ヒットしたのか?

ポケモンは多くの人気作品を生み出し、市場規模は10兆円を超えるほど巨大です。これほど世界中でポケモンがヒットした理由は、以下の3つが考えられます。

  • キャラクターの細やかなローカライズ
  • 海外での効率的な認知度向上
  • ポケモンGOなどのAR(拡張現実)アプリによる差別化

ポケモンの海外戦略の重要なポイントなので、3つの理由について詳しく解説します。

理由①キャラクターの細やかなローカライズ

ポケモンが世界的に大ヒットした理由は、キャラクターの細やかなローカライズです。

具体的には地域ごとに、ポケモンの名前を変えていることです。

例えば、カエルが球根を背負っているような見た目の「フシギダネ」や亀をモチーフにした「ゼニガメ」などのように、日本名では日本人がモンスターの特性や外観などをイメージしやすい名前になっています。しかし、海外で同じ名前を付けても外国人にはイメージしにくいでしょう。

そのため英語・ドイツ語・フランス語・韓国語・中国語など、各言語で名前を変えています。モンスターの名前をローカライズすることで、どの地域でも日本人と同じようにプレイできるのです。

先の例でいえば、フシギダネの英語名は「Bulbasaur」です。「種」を意味するBulbと、恐竜を意味する「Saurus」を組み合わせた名前で、アメリカ人には種を背負った恐竜や爬虫類を連想できる名前になっています。

またポケモンに登場するモンスターは日本だけではなく、異なる文化圏でもわかりやすいように設定されています。例えば魚や鳥、虫などのモンスターのように、どのような文化圏でも馴染みのある生物がモチーフです。また「水のなかにいる魚は電気に弱い」や「火を扱うモンスターは水に弱い」など、理解しやすいモンスターの設定も人気の秘密といえます。

理由②海外での効率的な認知度向上

日本におけるポケモンのマーケティング戦略は、ゲームを1996年に販売し、1997年にアニメ放送という流れでした。しかし海外においては、効果的に認知度を高めるために、アニメを先に放送してポケモンの世界観を広めてからゲームを販売しています。

この海外戦略によりアニメの視聴者がゲームで一層深い体験ができたことで、「ポケットモンスター 赤・緑」は3,137万本という驚異的な販売数を達成したのです。加えてカードゲームで、「戦略性の高い遊び」をユーザーに提供したことも海外戦略の成功要因といえます。

理由③ポケモンGOなどのAR(拡張現実)アプリによる差別化

2016年にスマホ用アプリとしてリリースされた「ポケモンGO」は、1ヵ月で5つのギネス記録を達成するほど世界的に大流行しました。

ポケモンGOのギネス記録

  • 配信初月で最も売り上げたモバイルゲーム
  • 配信初月で最もダウンロードされたモバイルゲーム
  • 配信初月で最も多くの国でダウンロードチャート1位を獲得したモバイルゲーム
  • 配信初月で最も多くの国で売上チャート1位を獲得したモバイルゲーム
  • 最も早く売上高1億ドルを達成したモバイルゲーム

現在では累計ダウンロード数が10億回を超え、累計売上が65億ドル(約8,660億円)を突破しています。

これほどまでにヒットした理由は、ARによる差別化が挙げられます。

ARとは現実を仮想的に拡張する技術です。簡単にいえばスマホで撮影した現実世界に、モンスターの情報を重ねて表示することで、現実世界にモンスターがいるように演出する技術です。

つまりポケモンGOは、現実世界でモンスターを発見・収集できる楽しみを味わえます。これまでのポケモンシリーズとは一味違った楽しみを提供したことで、世界中でブームを巻き起こしたのです。

まとめ

本記事では今さら聞けないが、引き続き世界中で大ヒットしているポケモンの海外戦略についてまとめました。日本の誇るゲームが世界中に愛されているのは、とても嬉しいことです。ポケモンのように海外進出で成功を目指している企業は、海外進出支援のプルーヴにぜひご相談ください。

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