イスラエルに学ぶ、世界を見据えたビジネスの在り方

皆さんは、「イスラエル」と聞いてどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
報道を通じて見る光景から、宗教や紛争、砂漠の国…といったイメージを持っている方も多いでしょう。しかし、それらはあくまでもイスラエルという国の一面にすぎません。

今回は、イスラエルで感じたイメージとのギャップや、イスラエルでのビジネスの在り方についてお伝えします。

普段から無意識に受け取っているイメージと現地のギャップ

イスラエルでは車で長い距離を移動していたため、道中でさまざまな景色を見ることができました。
昔ながらの旧市街が見られるエルサレムは、ユダヤ教の聖地である「嘆きの壁」やキリスト教の聖地である「ゴルゴダの丘」などがあり、宗教的な世界観が広がっています。
一方、イスラエルの経済や文化の中心地となっているテルアビブは多くの高層ビルが立ち並ぶITの街。こちらは日本人にとって少し意外な姿に思えるかもしれません。

イスラエル ビジネス

 
こうした都市を移動する間には、一面に広がる小麦畑やオリーブ、ブドウなどを育てている畑も見ることができ、市街地とのギャップも含めてとても印象に残りました。
砂漠のイメージが強いイスラエルですが、過酷な環境の中で独自の農業技術を発展させてきた農業国でもあります。

 
イスラエル南部のベルシェバでは、砂漠の中に古い建物が並んでいたり、遊牧民がいたりと、また少し違った光景を見ることができました。
牧歌的な風景に癒やされたのも束の間、町のすぐ近くでは軍事演習が行われ、レストランに入れば軍の関係者がVIP席で食事をしているなど、現地の人々にとって軍が非常に身近な存在であることも感じました。

 
皆さんがイスラエルと聞いて思い浮かべるのは、どのような光景でしょうか。おそらく、多くの日本人にとってはエルサレムのイメージが最も近いのではないかと思います。
しかし、実際に現地を訪れてみると、普段ニュースなどで見聞きしている情報とは大きなギャップを感じる光景に数多く出会いました。

 
われわれはさまざまなイメージを普段から無意識に受け取り、時には恣意的に植え付けられ、物事の一面しか見えていないことも多いのではないかとあらためて考えさせられました。

成長著しいイスラエルの最新フードテック企業

イスラエルのビジネス面でいえば、やはり特筆すべきはIT分野です。イスラエルはここ10年ほどでIT関連のスタートアップ企業が大きく成長し、今や「中東のシリコンバレー」とまで呼ばれています。

 
天然資源に乏しく、国内マーケットも狭いイスラエルでは、最初から海外市場を視野に入れてビジネスを展開するのが当たり前の発想になっています。
また、イスラエルは徴兵制があるため、軍がIT技術の養成所のような役目も果たしており、国の支援も手厚いことからスタートアップ企業が成長するための土壌ができあがっているのです。
このように魅力的な市場ではあるものの、イスラエルのIT市場はすでにアメリカや中国資本が参入して激戦区と化しており、日本が今から参入するのは非常に厳しい状態です。

 
そんなIT分野に続き、昨今では食とITを組み合わせたフードテックや水処理といった環境ビジネスの分野も大きな盛り上がりを見せています
世界的なニーズをいち早く捉えるイスラエルでは、こうした分野でもすでに世界的な注目を集める企業が出てきており、彼らのテクノロジーに投資する企業も増えています。

 
ここで、現在注目を集めているイスラエルのフードテック企業をいくつか紹介します。

ソーダストリーム(SodaStream)

イスラエルフードテック企業 ソーダストリーム

http://www.sodastream.jp/

イスラエルを本拠地とするソーダストリームは、家庭用炭酸飲料マシンを手掛ける清涼飲料水メーカー。2018年8月には、アメリカの飲料メーカー・ペプシコが32億ドル(約3,500億円)で買収する意向を明らかにしたことでも話題を呼びました。

スーパーミート(Super meat)

イスラエルフードテック企業 スーパーミート

https://www.supermeat.com/

動物の幹細胞を培養した人工肉「クリーンミート」の普及に取り組むスーパーミート。2018年にはシードラウンドで300万ドルの資金を調達し、OurCrowdによる世界投資家サミットでも注目企業の一つに挙げられました。

フューチャーミート・テクノロジーズ(Future Meat Technologies)

イスラエルフードテック企業 フューチャーミート・テクノロジーズ

https://www.future-meat.com/

エルサレムを拠点とするバイオテクノロジー企業、フューチャーミート・テクノロジーズ。動物細胞から培養した人工肉の開発に取り組み、2018年にはアメリカの食肉加工最大手であるタイソンフーズから200万ドルの出資を受けたことでも注目を集めています。

ジェット・イート(Jet-Eat)

イスラエルフードテック企業 ジェット・イート

https://www.jet-eat.com/

フードプリンタの技術開発に取り組むジェット・イートは、3Dプリント技術を生かした世界初の“ビーガンステーキ”を開発したと発表。また、2018年11月にパリで開催されたEITフードベンチャーサミット(Food Venture Summit)では、食品アクセレレーターネットワークプログラム部門で入賞を果たしました。

イスラエル独自の共同体「キブツ」

イスラエルにおけるビジネスの特徴として、もう一つ紹介したいのが「キブツ」の存在です。
あまり聞き慣れない言葉ですが、キブツ(kibbutz)はヘブライ語で集団や集合を意味し、村を一つの共同体とするイスラエル独自の集団形態のことです。社会主義理念に基づき、村で産業を興してその利益をみんなで分け合いながら生活し、教育や育児なども共同で行います。

 
かつては農業共同体として存在していましたが、そのアイデアやテクノロジーに目をつけた民間が資本を投じることもあり、現在ではさまざまな分野にも発展しています。
実際に、今回現地でヒアリングを行った企業の中にもキブツ発祥という会社がいくつかありました。

 
イスラエルでビジネスを行う際は、こうした独自の文化や歴史についても事前に把握しておくことが重要です。

世界を当たり前に見据えたこれからのビジネス

さまざまな面からイスラエルを紹介してきましたが、これまで思い描いていたイメージと大きなギャップを感じた人も多いのではないでしょうか?
近年発展してきたIT大国というイメージですら、現在では少しずつ変わってきています。

 
彼らのビジネスの特徴は、国内マーケットがないことから必然的に海外に目が向いているということです。アメリカやヨーロッパ、中東を明確なターゲットとして定め、そのニーズを拾いながらビジネスを展開しています。

 
もちろんイスラエルだけでなく、今後われわれが競争していく相手は当然のようにグローバルに目を向け、日本企業とは全く違った発想や視点を持っているはずです。
今回お伝えしたイスラエルのイメージと現地のギャップのように、物事の一面やイメージだけで判断しているようでは、これからの世界と戦っていくことなど到底できません。

 
特にスタートアップ企業や新規事業においては、当たり前のようにグローバルを見据えて展開していくという考え方を持たなければいけない時代になっているのではないでしょうか。

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