メード・フォー・ジャーマニーとは?概要や世界経済への影響を解説

ドイツ経済はここ数年間、長引く低迷から抜け出せずにいます。実際、2025年7月時点の失業率は6.3%と依然として高い水準にあります。こうした厳しい状況の中で設立されたのが、民間主導の投資イニシアチブ「メード・フォー・ジャーマニー(Made for Germany)」です。設立と同時に国内への巨額の投資計画が発表され、注目を集めています。 

ドイツは欧州最大の経済大国で、その動向はEU全体、さらには世界経済にも波及します。また、多額の資金流入は新たなビジネスチャンスを生み出すことから、日本企業にとってはドイツ進出を検討する機会と言えるでしょう。 

そこで本記事では海外市場の注目の動向として、メード・フォー・ジャーマニーの概要や設立の背景、世界経済への影響についてわかりやすく解説します。 

メード・フォー・ジャーマニーとは 

メード・フォー・ジャーマニーとは、ドイツ国内外の61社が参加する民間主導の投資イニシアチブです。2025年7月21日に設立が発表され、同時に2028年までにドイツ国内へ総額6,310億ユーロを投資する計画が発表されました。日本円で107兆円(※1ユーロ=170円換算)にのぼり、その規模の大きさから注目を集めています。 

構成企業 

メード・フォー・ジャーマニーは、61社の企業や投資家で構成されています。ドイツ国内の主な企業は次のとおりです。 

  • ドイツ銀行 
  • シーメンス 
  • フォルクスワーゲン 
  • BMW 
  • メルセデス・ベンツ 

このように、ドイツを代表する大手企業が名を連ねています。さらに、米国からもエヌビディア、ブラックロック、ブラックストーンといった大手企業が参加しています。 

投資分野 

同イニシアチブの投資計画では、主に次の分野への投資拡大が見込まれています。 

  • 新拠点の開設 
  • 研究開発 
  • ドイツ国内のインフラの近代化 

具体的には半導体やAI、量子技術などの先端分野への投資が拡大される予定です。これらは次世代の産業基盤を支える分野で、世界各地で開発が進められており、ドイツにおいても重視していることが伺えます。 

メード・フォー・ジャーマニーが創設された背景 

同イニシアチブが創設された背景には、ドイツ経済が抱える課題が関係しています。ここでは4つの背景について解説します。 

ドイツの景気後退 

ドイツ政府は、2025年の経済成長率をゼロと予測しています。すでに2023年と2024年はマイナス成長を記録しており、このままでは3年連続のマイナス成長となる可能性があります。実際に失業者数は10年ぶりに300万人に迫るなど、景気後退の影響は深刻です。こうした経済低迷の状況を打破し、成長軌道に戻すことが、メード・フォー・ジャーマニーが設立された背景の一つです。 

国内製造業の競争力低下による輸出の減少 

ドイツは輸出大国として知られる国です。しかし、2017年以降、輸出は減少傾向にあり、特に2021年以降はその傾向が顕著になっています。 

ドイツ連邦銀行の分析によると、2021年から2023年にかけて輸出が減少した主な要因は、国内企業の競争力低下による世界市場のシェア縮小です。そのため、ドイツ経済の回復には、国内企業の競争力強化が不可欠です。こうした背景から、国内への巨額の投資計画が立案されました。 

参考:ドイツ連邦銀行「Monthly Report – July 2025」 

米国の相互関税政策による悪影響 

ドイツ経済の復活には、国内企業の競争力強化が不可欠ですが、これを妨げる要因の一つが米国の相互関税政策です。IFO経済研究所の調査によると、相互関税政策の不確実性を理由に約30%の企業が投資計画を延期し、さらに15%が中止したとのことです。これは、ドイツの競争力を低下させかねない動きで、このような雰囲気を打破することが設立の背景の一つと言えるでしょう。 

参考:Reuters「ドイツ企業約30%が関税不確実で対米投資延期=IFO調査」 

ドイツ政府による民間投資の促進 

7月11日、ドイツ政府は民間の投資促進策として、減価償却の優遇策や減税措置などの支援策を可決しました。この支援策に民間企業が呼応する形で同イニシアチブの設立が発表されました。このことから、政府の投資促進策が設立の背景の一つと言えます。 

メード・フォー・ジャーマニーによる世界経済への影響 

メード・フォー・ジャーマニーはその規模の大きさから、ドイツ国内だけではなく、世界経済にも影響を及ぼす可能性があります。ここでは、考えられる影響について解説します。 

ドイツへの投資拡大 

まず考えられる影響は、海外企業からの投資の拡大です。同イニシアチブはドイツの大手企業のみならず、米国の大手企業も参加しています。このことから、ドイツ市場に資金と人材を投入する価値があるという認識が広がれば、さらなる海外企業からの投資を呼び込む可能性があります。こうした国際的な資金と人材の流入は、ビジネス拠点としての評価を高めるでしょう。 

サプライチェーン再構築の可能性 

世界的に注目されるのがサプライチェーンへの影響です。近年、半導体不足や米中対立、コロナウイルス流行による物流の停滞を経て、各国はサプライチェーンの多様化を進めています。こうした中、先端分野の製造・研究拠点の投資拡大により、サプライチェーンの一部がドイツに移行することが考えられます。 

ドイツの競争力の復活 

ドイツが再び競争力を取り戻せば、世界市場のシェア率にも影響します。例えば、自動車市場ではEVや次世代電池をめぐる競争が激化していますが、ドイツメーカーが技術革新を進めれば、中国や米国メーカーとのシェア争いに変化が生じる可能性があります。このように競争力の復活は、ドイツ国内の景気回復を後押しするだけでなく、世界経済にも影響を与えるでしょう。 

メード・フォー・ジャーマニーの懸念点 

一方で、このイニシアチブの投資計画には懸念点も指摘されています。それは、投資総額に既存のプロジェクトが複数含まれている点です。 

例えば、以下のプロジェクトは以前から進められており、完成間近なものもあります。 

  • シェフラー:EV関連拠点の拡張工事は2022年から計画され、建設が始まっている 
  • インフィニオン:半導体工場を建設中で、2023年には竣工式が行われている 

このように、発表された6,310億ユーロの投資額の中には、既存のプロジェクトも含まれています。 

そのため、新規にどれだけの資金が投入されるかは不透明で、経済成長や競争力強化にどの程度寄与するかは未知数です。一部の専門家からは、官民によるPR活動の一環ではないかという見方も出ています。 

参考:WirtschaftsWoche「Allianz „Made for Germany“ Wie Merz’ PR-Gipfel im Kanzleramt verpufft」 

ドイツ経済の動向に注目しよう 

メード・フォー・ジャーマニーは、大規模な投資計画により、ドイツ経済の復活と競争力強化を目指す民間投資イニシアチブです。その規模の大きさから、世界経済やサプライチェーンなどに変化をもたらす可能性があります。 

一方で、総投資額の内訳が不透明であったり、既存プロジェクトが含まれていたりと懸念も指摘されています。どの程度の投資が行われるのか、どのような経済効果があるのかを見極めるためにもドイツ経済の今後の動向に注目しましょう。 

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