インドネシア財閥のアストラグループとは!歴史や主要事業を徹底解説

インドネシア財閥のアストラグループは、インドネシアの自動車産業を牽引しているコングロマリットです。アストラグループと提携してインドネシアに進出した日本企業は多くあります。そのため、自動車関連事業でインドネシアに進出するのであれば、アストラグループの情報は把握しておきましょう。

本記事では海外進出に興味のある経営者に向けて、インドネシア財閥のアストラグループについて徹底解説します。

インドネシア財閥のアストラグループとは

出典:アストラグループ

インドネシア財閥のアストラグループ(Astra Group)は、自動車・金融・重機・農業・インフラ整備・コンサルティングなど、多様な事業を展開しているコングロマリットです。

インドネシア全土で286(2024年2月時点)の子会社・合併会社・関連会社を展開し、200,713人(2024年2月時点)の従業員を雇用しています。とくにインドネシアの自動車産業に強い影響力を持っており、インドネシア国内で最大の自動車生産数・販売数を誇っています。

歴史

アストラグループの始まりは、華人実業家のウィリアム・スルヤジャヤ氏が1957年に貿易会社Astra International Inc.(現在のPT Astra International Tbk)を設立したことです。

その後、1969年にインドネシアにおけるトヨタの自動車の販売代理店となり、1970年にホンダの自動二輪車の総代理店に任命されました。このように、日本企業と提携し、自動車・自動二輪車を販売したことで成長を遂げました。

主要事業

アストラグループの主要事業は以下の5つがあります。

  • 自動車
  • 金融サービス
  • 重機
  • 農業
  • インフラ整備

PT Astra International Tbkの「2023年Annual Report」によると、アストラグループ全体の売上高は、316兆5,650億ルピア(約3兆1,656億円)でした。事業別の売上高の内訳は以下のとおりです。※1ルピア=0.01円換算

参考:PT Astra International Tbk「2023年Annual Report

グラフからわかるように、自動車と重機の2つの事業で全体の売上高の80%以上を占めています。ここではさらに、各事業の事業内容について解説します。

自動車

自動車事業は、自動車・自動二輪車の生産・販売・アフターサービスが主な事業内容です。日本企業のトヨタ・ダイハツ・いすゞ・ホンダに加えて、BMWと提携しています。2023年の売上高は126兆3,060億ルピア(1兆2,630億円)でした。

なお、2023年のインドネシア国内の自動車販売台数は100万5,802台で、そのうちアストラグループは56%(約56万台)を売り上げています。そのため、インドネシア最大の自動車部門といえます。

金融サービス

金融サービス事業の主な事業内容は以下の5つです。

  • 消費者金融
  • 自動車ファイナンス
  • 自動二輪車ファイナンス
  • 重機ファイナンス
  • 損害保険

このなかでもとくに消費者金融事業が好調です。2023年の消費者金融事業の売上高は、29兆8,000億ルピアで前年比13%増を達成しています。また、金融サービス全体の売上高は、29兆7,650億ルピア(約2,976億円)でした。

重機

重機事業は、重機・鉱業・建設業・エネルギーを担う事業です。同事業はインドネシアで50年以上の歴史を持っており、再生可能エネルギーを推進している事業でもあります。2023年の売上高は128兆2,570億ルピア(1兆2,825億円)で、グループ全体で最も多くなりました。

また重機事業では、2005年に日本企業の株式会社小松製作所と提携し、出資比率が50対50の合弁会社を設立しています。株式会社小松製作所は、「KOMATSU(コマツ)」のブランドで知られる建設・鉱山機械や産業機械などの大手企業です。

農業

農業事業はパーム油製造・販売やプランテーション(大規模農園)の運営を行っている事業です。2023年の農業事業の売上高は、20兆7,450億ルピア(約2,074億円)でした。

インドネシアにおいてパーム油は国家戦略上重要な地場産業で、2023年には350億米ドルの外貨獲得に貢献しています。ただし、インドネシアのパーム油の価格は下落傾向にあり、生産量の減少に苦しんでいるのが現状です。なお、パーム油は食品や化粧品、バイオ燃料などとして使われています。

インフラ整備

インフラ整備事業は、インフラ整備や物流を担う事業です。具体的には有料道路の運営・管理や物流サービスの提供です。2023年のインフラ整備事業の売上高は8兆3,880億ルピア(約838億円)で、前年の7兆2,660億ルピア(約726億円)と比較して15%の増加となりました。

日本企業との協業事例

アストラグループは日本の企業と提携を結ぶことで、大きく発展したコングロマリットです。その代表的な提携先であるトヨタ自動車株式会社と本田技研工業株式会社の協業事例を紹介します。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社とアストラグループの提携は、1969年にトヨタが生産した自動車の販売代理店にアストラグループを指定したことから始まります。

現在では、双方50%を出資するPT. Toyota Astra Motor(TAM)がインドネシアで「トヨタ」や「レクサス」のブランドを展開しています。TAMの2023年の「トヨタ」と「レクサス」の自動車の販売数は33万9,292台でした。

なお、自動車の製造事業についてはトヨタ自動車株式会社が出資比率を95%としています。

本田技研工業株式会社

本田技研工業株式会社とアストラグループの提携は、1970年に自動二輪車の総代理店の指定が始まりです。そして翌年の1971年には、自動二輪車の組み立て工場の関連会社(PT Federal Motor)を設立しました。

50年以上経った現在でも両者の協力関係は続いています。

実際、2023年にはインドネシア向けに16の新モデル、輸出向けに5モデルの自動二輪車を発表しました。また、2023年にアストラグループがインドネシアで販売した自動二輪車の台数は488万台にもなります。このように、本田技研工業株式会社はアストラグループと提携することで、インドネシアへの進出に成功したといえます。

アストラグループの中期経営戦略

アストラグループの中長期経営戦略は「Astra Triple-P strategy(アストラ トリプル P戦略)」です。「Astra Triple-P strategy」は持続可能な成長目標のことで、具体的には以下の10項目の達成を指します。

1. グループ全体のスコープ1および2の温室効果ガスを30%削減する

※スコープ1は自社が直接排出する温室効果ガスで、スコープ2は自社が間接的に排出する温室効果ガスのこと。

2. 事業で使う50%を再生可能エネルギーにする

3. グループ全体の取水量を15%削減する

4. 固形廃棄物のリサイクル・回収率を99%にする

5. 非石炭収入を88%に拡大する

6. 従業員の多様性と包括性を推進する

7. グループ全体で従業員の死亡事故ゼロと労働災害率を60%削減する

8. 取締役員・経営幹部の多様性・包括性を推進する

9. 地域開発プログラムを通じて250万人を支援する

10. 企業統治を国際基準に合わせて強化し続ける

また、アストラグループは火力発電所へ投資せず、非石炭産業への多角化と再生可能エネルギーの推進を掲げています。

インドネシアの自動車産業ならアストラグループ

アストラグループはインドネシアでの自動車産業に強みを持つ財閥で、日本の多くの自動車メーカーと提携しています。自動車関連の事業でインドネシアへ進出を検討している経営者は、アストラグループとの提携を検討してみてはいかがでしょうか。


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