インドネシア財閥のサリム・グループとは?歴史や主要事業を解説

インドネシアは、2022年・2023年の実質GDP成長率が5%を超え、高い成長率を維持しています。一方、日本の2023年度の実質GDP成長率は1.2%でした。このことから、インドネシアへの進出を検討している経営者もいるでしょう。

インドネシアへ進出するのであれば、同地域で大きな影響力を持つサリム・グループについて押さえておく必要があります。本記事ではインドネシア財閥のサリム・グループの歴史や主要事業を徹底解説します。

参考:内閣府「国民経済計算(GDP統計)

参考:JETRO(日本貿易振興機構)「2023年のGDP成長率は5.05%、輸出減速が影響

Salim Group(サリム・グループ)とは

出典:Indofood

Salim Group(サリム・グループ)とは、インドネシア財閥の1つです。インスタント麺メーカーのインドフード、自動車メーカーのインドモービル・グループ、コンビニチェーンストアのインドマレットなどを率いています。サリム・グループは食品・小売り・自動車・不動産・メディア・インフラなどに進出しており、多くの分野で影響力のあるインドネシア財閥といえます。

歴史

サリム・グループは1972年10月に、創業者のスドノ・サリム氏(中国名は林紹良)が設立したコングロマリットです。スドノ・サリム氏は中国福建省の生まれで、1938年にインドネシアに移住しています。そのためサリム・グループはインドネシアを代表する華人企業でもあります。

※華人企業とは、中国にルーツを持つ経営者が中国以外で操業している企業のことです。

サリム・グループが大きく成功した背景には、インドネシア第2代大統領のスハルト氏との密接な関係にあります。スハルト氏は1968年から30年以上にわたって大統領に在任し、インドネシアの工業化を推進しました。

スドノ・サリム氏はスハルト氏と懇意であったことから、国家事業に参画することで幅広い分野に事業を拡大したのです。

現在サリム・グループは、息子のアンソニー・サリム氏(中国名は林逢生)が引き継いでいます。また、Forbes JAPANの「2023年インドネシア長者番付」によると、同氏の資産は103億ドルでインドネシア5位の富豪としてランクインしました。

このことからも、サリム・グループのインドネシアにおける影響力の大きさがわかるでしょう。

主要事業

サリム・グループは、幅広い分野に事業を拡大しています。そのなかでも主要事業は以下の4つです。

  • インスタント麺
  • コンビニチェーン
  • 自動車
  • セメント製造

この章では、サリム・グループの理解を深めるために、主要事業の内容や業績を紹介します。

インドフード:インスタント麺

出典:Indomie

主要事業の1つはインスタント麺の製造・販売です。同事業は、関連会社のインドフード(PT Indofood Sukses Makmur Tbk)が担っています。

インドフードは1969年に設立した企業で、Indomie(インドミー)のブランド名で知られています。インドネシア・マレーシアなどに30以上の工場を有し、年間360億パックの生産能力で世界最大級のインスタント麺メーカーです。

また、インスタント麺以外に乳製品やスナック菓子、食品調味料なども取り扱っています。なお、2023年の売上高は111兆7,036億ルピア(約1兆1,170億円)でした。※1ルピア=0.01円で換算

インドマレット:コンビニチェーン

サリム・グループのコンビニチェーン事業を担っているのは、インドマレット(Indomaret)です。インドマレットは、2023年に1,200店舗を追加し、合計22,400以上の店舗を展開しています。インドネシア最大級のコンビニチェーンで、2023年の売上高は105兆1,254億ルピア(約1兆512億円)でした。

インドモービル・グループ:自動車

サリム・グループの自動車事業は、インドモービル・グループ(IndoMobil Group)が担っています。自動車・商用車・大型機器などの製造・販売を行っており、2023年の売上高は28兆8,920億ルピア(約2,889億円)でした。

インドセメント:セメント製造

インドセメントは、サリム・グループのセメント事業を担う企業です。セメントや生コンクリートの製造・販売が主な事業内容で、2022年の売上高は16兆3,280億ルピア(約1,632億円)でした。

日本企業との協業事例

日本企業のなかにはサリム・グループの影響力を活用し、インドネシアへの進出を果たしている企業があります。そこで、この章ではサリム・グループと提携した日本企業の事例3選を紹介します。

株式会社ポケモン:インドネシア語版ポケモンカードゲーム

株式会社ポケモンは、人気キャラクターの「ポケットモンスター」に関連した事業を行う企業です。任天堂株式会社・株式会社クリーチャーズ・株式会社ゲームフリークの出資により設立され、ポケットモンスターのビデオゲームやカードゲーム、映画などの開発・販売に携わっています。

その株式会社ポケモンは2019年8月8日にサリム・グループと提携し、インドネシア語版ポケモンカードを販売開始しました。これにより、インドネシア市場を拡大することを目指しています。

なおポケモンカードとは、ポケットモンスターを題材にしたトレーディングカードのことです。複数のポケモンカードを使う二人対戦のゲームで、ポケモンカードはゲーム用としてだけではなく、コレクション用としても世界中で人気があります。

株式会社ダスキン:ミスタードーナツ

株式会社ダスキンは清掃や衛生用品のレンタルサービスや販売を行う企業です。また関連性がないと思うかもしれませんが、ミスタードーナツを運営している企業でもあります。

そのミスタードーナツ事業では、インドネシアへの進出のためにサリム・グループと提携し、2015年にはインドネシアに1号店をオープンしました。

現在、ミスタードーナツ事業の海外進出の状況は、タイ・フィリピン・台湾・インドネシアの4カ国に11,362拠点(2022年12月末時点)を持つまでに成長しています。国内での店舗数は997店舗(2023年3月末時点)であることから、海外進出に成功した企業といえるでしょう。

日清オイリオグループ:チョコレート事業

日清オイリオグループがサリム・グループと提携した事例は、子会社の大東カカオ株式会社のチョコレート事業です。大東カカオ株式会社は、業務用チョコレート製品や製菓・製パン原料などを製造・販売しています。

その業務用チョコレート製品を東南アジアで展開するべく、サリム・グループとの合併会社(PT Indoagri Daitocacao)を2017年に設立しました。2019年には、PT Indoagri Daitocacao工場の工事が完了し、本格的に稼働を開始しています。

インドネシアへ進出するなら!サリム・グループとの連携を検討しよう

成長が続くインドネシアに進出したいと考えている経営者も多いでしょう。そのような方は、紹介した事例のようにサリム・グループとの連携も1つの方法です。サリム・グループはインドネシア財閥の1つで、インドネシアで大きな影響力を持っています。この機会に、サリム・グループとの連携を検討してみてはいかがでしょうか。


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