
海外進出において、M&Aは有効な戦略の一つです。買収先やパートナー企業の選定のために行われる調査をデューデリジェンス(DD)と呼びます。本記事では海外進出を検討している企業様に向けて、デューデリジェンスの基本や種類、進め方、注意点を徹底解説します。
デューデリジェンスとは?
デューデリジェンスとは、M&Aの買収先やパートナー候補を選定する際に実施する事前調査のことです。調査は事業・労務・法務・税務などの様々な情報を収集し、分析します。
目的
企業がデューデリジェンスを行う主な目的は次の2点です。
・対象企業の価値を正確に把握するため
財務状況や事業内容を多角的に調査し、企業の真の価値を明らかにすることがデューデリジェンスの目的です。調査結果は、買収金額の妥当性や買収の可否など、意思決定の重要な判断材料となります。
評価が低すぎれば対象企業から同意を得られず、逆に高すぎれば買収後の経営に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、デューデリジェンスによって対象企業の価値を正確に把握することは、M&Aを成功させる上で不可欠です。
・M&Aに伴うリスクを把握するため
対象企業の価値を検証すると同時に、潜在的なリスクを明らかにすることもデューデリジェンスの目的の一つです。例えば、財務リスクや法務リスクなどが大きいと判断された場合には、投資額の見直しや買収の中止といった判断につながることもあります。
デューデリジェンスの種類

デューデリジェンスは調査内容や対象により分類されており、様々な種類があります。ここでは、代表的な7種類の内容と調査対象を解説します。
ビジネスデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスは、対象企業の市場における競争力や事業の成長性などの調査です。対象企業とのシナジー効果も分析できることから、パートナー企業の選定においても役立ちます。
主な調査対象
- 事業内容
- 売上構造や収益性
- 市場競争力
- 事業戦略の妥当性
- 顧客との関係性
ビジネスデューデリジェンスの流れについて知りたい方は、「ビジネスデューデリジェンス(BDD)」も併せてご参照ください。
労務デューデリジェンス
労務デューデリジェンスとは、対象企業の従業員の雇用形態や就業規則、労働組合との関係性などの調査です。買収後に労使トラブルが発生しないように、賃金の未払いや労働問題の有無などを調査します。
主な調査対象
- サービス残業の有無
- 残業手当の未払いの有無
法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスは、対象企業の訴訟や紛争の有無、知的財産権の保護状況などの調査です。法務リスクは、将来的にブランドイメージを損なう可能性があるため、買収価格にも影響を及ぼします。
主な調査対象
- 訴訟の有無
- 法律違反の有無
税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスとは、対象企業の税務状況の調査です。納税状況を調査し、潜在的な税務リスクがないかを把握します。
主な調査対象
- 税務申告書
- 決算報告書
- 税務調査履歴
財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスは、対象企業の資産や負債、収益性などの財務状況を分析する調査です。事業計画の妥当性やキャッシュフローの状況などから、財務リスクを把握します。
主な調査対象
- 財務諸表
- 事業計画
ITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスとは、対象企業のITインフラや情報セキュリティ体制などの調査です。システムの安定性や脆弱性、統合性などを把握します。
主な調査対象
- ITシステムと運用体制
- ITインフラの状況
- 情報セキュリティ対策
人権デューデリジェンス
人権デューデリジェンスは、対象企業の人権リスクを評価する調査です。具体的にはサプライチェーンにおける労働環境や強制労働の有無などを把握します。
主な調査対象
- 強制労働の有無
- 児童労働の有無
- ハラスメントの対策状況
デューデリジェンスの進め方

デューデリジェンスは、M&Aの成否を左右する重要なプロセスです。適切に進めるには、手順の明確化と体制の整備が不可欠です。一般的には、以下の4つのステップで実施されます。
方針の決定
デューデリジェンスでは、まず調査の目的や範囲を明確にすることが重要です。対象企業に対してどの種類のデューデリジェンスを行うかを決めるとともに、調査期間や予算、外部委託の有無などの方針もこの段階で決定します。事前に方針を固めておくことで、調査中に方向性がぶれるのを防げます。
デューデリジェンスチームの結成
方針に沿って各専門家を集め、デューデリジェンスチームを結成します。社内メンバーだけでなく、必要に応じて外部の専門家やコンサルタントを起用することで、より深い分析や評価が可能です。また、各メンバーの役割や責任範囲を明確にしておくことで、調査の抜けや重複を防げます。
資料やヒアリングによる調査
対象企業から実施するデューデリジェンスに応じた資料を収集します。その上で、経営陣や担当者へのヒアリングを実施し、書類だけでは把握できない情報や現場の実態を確認します。ただし、M&Aは調査段階であっても秘密保持が求められるため、休日にヒアリングを行うなど、情報が流出しないような配慮が必要です。
調査結果をもとにM&Aを検討
資料とヒアリングから得られた情報を分析し、最終的な判断材料として整理します。投資額の妥当性やリスクの大きさ、買収後のシナジー効果などを総合的に評価し、M&Aの最終的な判断をします。
デューデリジェンスの注意点
デューデリジェンスは、M&Aの成功に大きく影響する重要な調査ですが、ときにはリスクを招くこともあります。ここでは、調査を行う際に特に注意すべき3つのポイントを解説します。
調査範囲を見極める
デューデリジェンスでは、調査の範囲を明確にすることが重要です。すべての情報を網羅しようとすると時間やコストが膨らむためです。また、範囲が狭すぎると重要なリスクを見落とす可能性があります。そのため、調査対象を適切に絞り込み、どの分野に重点を置くかを事前に決めておくことが大切です。
情報管理を徹底する
デューデリジェンスで扱う情報は、機密情報が多く、情報管理の徹底が欠かせません。機密情報の漏洩や不正使用は、対象企業との信頼関係を損ねるだけでなく、法的な問題に発展するリスクもあります。そのような事態を避けるには、徹底した情報管理体制が必要です。
専門家の意見を取り入れる
デューデリジェンスを行う際には、幅広い分野で専門的な知識が求められるため、各分野の専門家の知見が欠かせません。社内の担当者だけで進めると重要な情報を見落とす可能性があるので注意しましょう。特に海外M&Aの場合は、現地の法律や商習慣に詳しい専門家の協力が不可欠です。
M&Aで海外進出・事業拡大を実現しよう
海外進出や事業拡大を目指す企業にとって、M&Aは有効な戦略の一つです。実際、多くの企業がM&Aを通じて海外市場への進出を成功させています。
しかし、M&Aを成功させるためには、質の高いデューデリジェンスが不可欠です。特に海外企業を対象とする場合は、現地の法律や商習慣、言語の違いといった独自の課題があります。そのような課題に対応できるのは、海外進出の伴奏者であるプルーヴです。
プルーヴは、これまでに海外進出をサポートしてきた数多くの実績があります。海外M&Aやデューデリジェンスについて、疑問やご質問がある企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
また、海外M&Aの詳細について知りたい方は、「グローバルを身近にするM&A」の記事も併せてご参照ください。