日本では高級ブティックのようなチョコレートブランドの出店が相次いでおり、女性は自分にアクセサリーを買うようにしてチョコレートを買うようになっています。もうすぐバレンタインがやって来ます。
ここでは、日本における近年のバレンタインのマーケット動向や、チョコレート市場、チョコレートを販売する菓子メーカーについてご紹介します。
チョコレートの市場規模
菓子とチョコレートそれぞれの市場規模
全日本菓子協会の調査によると、2019年の国内菓子業界の市場規模は3兆4,298億円となりました。区分別ではチョコレートがトップで約5,500億円となりました。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20180407-00083538/
バレンタインの市場規模と拡大の背景
次に、1年で最もチョコレートが売れるバレンタインの動向はどのようになっているかを見てみましょう。下記の「JR名古屋駅高島屋のバレンタイン催事売上高」では毎年緩やかながらも売上高が上昇していることが分かります。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41330850V10C19A2L91000
記念日文化研究所調べでは、2020年のバレンタインデー市場規模は推計で、前年比約4%増の約1,310億円とされています。この研究所によるとバレンタイン市場は2017年から2019年までやや縮小傾向にありましたが、近年回復の兆しを見せるようになっています。この市場が拡大した背景にはどのような要因があるのでしょうか。
2018年、大手高級チョコレートブランドのゴディバが「義理チョコをやめよう」という広告を新聞に掲載し、義理チョコの恩恵を強く受けているゴディバという有名ブランドが発信したことは世の中の反響を呼びました。このタイミングから、女性の義理チョコからの解放が進み、女性達が自分のために高級なチョコレートを買うようになったと言われています。女性の心を掴んだことがチョコレートの売上増につながったという事実は、重要な視点でしょう。
https://www.buzzfeed.com/jp/harunayamazaki/ゴディバ-girichoco
日本のバレンタインの歴史
日本にヨーロッパからバレンタイン文化が伝わったのは20世紀、第二次世界大戦後まもない1956年でした。神戸のモロゾフ製菓が外国人向け英字新聞で、「バレンタインにチョコレートを贈ろう」という広告コピーを掲載したことが大きなきっかけと言われています。
当初はチョコレートだけがプレゼントの対象でもなく、女性から男性という風習もありませんでした。恋人に限らずかぎらず、友人や家族間でのプレゼント交換が勧められていたようです。
しかし、バレンタイン文化を取り入れて販売促進を行う流通業界や製菓業界による販売戦略によって、昭和30年代後半から「女性が男性にチョコレートを贈る」という文化が定着し始めました。日本のバレンタインは、キリスト教の意味は全くなく、商業的に作り出された文化なのでしょう。
他国のチョコレート市場規模とバレンタイン文化
世界のチョコレート市場におけるシェアは、1位はアメリカで市場全体の約20%も占めており、日本は5.3%、韓国は1%となっています。日本では女性が男性にチョコレートを贈るのが文化として当たり前になっていますが、アメリカやヨーロッパ男性から女性にプレゼントを贈るのが主流となっており、ホワイトデーも義理チョコの概念もありません。
それでは日本のバレンタイン文化に最も近いと言われる韓国に日本との違いはあるのでしょうか。
韓国人は平均して1人当たり年間70グラムの(板チョコにして約9個)食べ、チョコレート市場は2015年は日本円にして約1141億円でした。ここ5年間の増加率は2%未満と、市場はあまり拡大していないようです。
しかし、その割に韓国のバレンタインデーは、毎年日本と同じくらいの盛り上がりを見せています。
韓国でもデパートやスーパーやコンビニなどの多くのお店でバレンタイン向けのチョコやアイテムが並んでいます。
文化も日本とほとんど変わらず、女性から意中の男性にチョコレートを贈り告白するというのが若い女性の間に浸透しています。
韓国では本命の男性にチョコレートを贈るパターンがほとんどで、日本のように義理チョコや友チョコの習慣はありません。
韓国では儒教の影響により、元々上司や先生など目上の人にギフトを送る習慣が根付いているため、最近では本命とは違う手軽なチョコを贈り合うこともあるようです。
日本と異なる点は、韓国ではチョコを渡すラッピングに大きなバスケットを使用し、華やかにラッピングして贈るという文化がある点です。
日本で最も有名な「GODIVA」
ベルギー王室御用達のチョコレート「ゴディバは1972年に日本で販売を始めた海外チョコのパイオニアとして、一粒400円は当たり前という高級チョコの新しい概念を定着させてきました。
ゴディバは、現在はトルコの企業ウルケルグループの傘下にあり、アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおいて、チョコレートだけでなくチョコレート関連商品の販売を行っています。
日本ではゴディバ・ジャパンが輸入販売を行い、1972年に日本橋三越の第1号店オープン以来、現在約300店舗を構えています。実は日本はゴディバにおける国別売上で世界1位となっており、年間売上にして約400億円を売っています。
また、7年間の売上はここ最近では3倍に急成長しているということが分かっています。
3倍に急伸した背景は、ゴディバのブランドイメージが「高級路線」から「親しみやすさ」へと変わったことです。ショッピングモールへ出店し、約500円の冷たいチョコレートドリンクを販売したり、手軽に買うことのできる商品をコンビニで販売開始しています。2017年にローソンの組んだスィーツが大ヒットしました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32406530Z20C18A6HE6A00/
国内菓子メーカーのチョコレート
日本のチョコレートメーカーの市場占有率は、ロッテと明治が約30%以上を獲得しており、その次にグリコ、森永と続いています。
https://suit-chocolate.com/maker/
チョコレート市場で国内大手のロッテと明治はチョコレート商品やチョコレートの販売戦略にどのような強みを持っているのでしょうか。
ロッテ
https://www.lotte.co.jp/products/brand/ghana/products/
ロッテは他社と比べて、創業者の出身国である韓国を始めとし、海外展開を積極的に行っています。、韓国百貨店チェーン最大手の「ロッテ百貨店」、韓国最大のホテルグループの「ロッテホテル&リゾート」を運営しており、製菓メーカーの枠を大きく超えた企業です。
日本では、創業70周年を迎えた2018年に、ロッテ、ロッテ商事、ロッテアイスの3社が合併したことにより新生ロッテが誕生しました。意志決定の迅速化、事業競争力の向上、一本化することによるガバナンス強化が目的でした。
同社には「ロッテインサイトセンター」という組織を持っています。この組織は、商品の陳列の仕方で購買者の気持ちがどのように変化するかというものを深く研究します。
この研究によって開発された什器には、実は他社製品も陳列されており、顧客視点に立つと自社商品だけ並べても購買者の満足につながらないと考えた結果だそうです。
今後は、ブランドポートフォリオ戦略を明確にし、強みのあるブランドの競争優位性をさらに高め、ベトナム、タイ、インドネシア、欧州のポーランドのグローバル事業の強化をしていく方向です。
https://www.lotte.co.jp/corporate/about/outline/outline.html
明治
https://www.timeout.com/tokyo/blog/meijis-new-range-of-bean-to-bar-chocolate-is-a-hit-103117
明治が2016年に一新した「明治 ザ・チョコレート」の売れ行きが好調です。産地ごとのプレミアムなカカオ豆を使用し、それらの風味や特性を生かして作られています。カカオ産地での栽培から製造まで一貫して関わる「ビーン・トゥ・バー」により誕生しました。
カカオ産地ごとの風味や特性を活かし、これまでの板チョコレートにない個性を持っていることが大ヒットにつながり、2017年3月末までに約2000万枚の売上を記録したほどです。
一般的なチョコレートが100円前後ですが、このチョコレートは200円で販売されています。ですが、1000円以上する高級チョコレートと比較して手が出ない価格帯でもないことから、100円以下のものと高級チョコレートの間にあった価格帯の需要を掴みました。
次に江崎グリコ、森永についてご紹介しますが、これらの企業はチョコレートよりも他の製品ラインナップが主力商品となっているようです。
江崎グリコ
https://www.nikkei.com/nkd/company/yutai/?scode=2206
グリコの代表的な商品として「ポッキー」や「プリッツ」があります。創業者の息子の病気の治療に寄与した「グリコーゲン」を世に広めたいという思いから創業されました。近年では健康志向の高まりと、グリコの国民の「健康の向上に貢献する」という姿勢に基づいて、健康食品にも力を入れています。
昨今、グリコ事業戦略で大きな成功を収めたのが「オフィスグリコ」です。
https://getnavi.jp/life/60691/
1998年、「さり気なく置かれている文具」と喩えられたオフィスグリコは、「リフレッシュメント」をコンセプトに販売開始されました。
https://www.sankei.com/smp/west/news/160718/wst1607180002-s1.html?pdm_ref=rna
2002年に1万2000台の導入により売上高3億円の事業規模でしたが、2015年度には13万台、53億円のビジネスに成長しています。
森永
森永は、初の国産ミルクチョコレートの発売や飲用ココアの発売を行うなどして、元々チョコレート商品に強みを持っていました。最近では、チョコレートだけでなくホットケーキの素やINゼリーの発売など革新的な商品を大ヒットさせています。
森永の強みはこのように、「既に市場に出回っているが、人気が出ていないもの」を自社で開発し直すことが非常に得意と言われています。従って、長年抜群の商品開発力を保持してきました。
既存領域としてはこれらの8つの商品に注力しています。
https://finance.logmi.jp/370378
カテゴリー別の売上も割合が平均的でバランスが取れているのも特徴です。
https://bunsekizaimu.com/morinagaseika1/
コロナ渦で成果を上げている海外事業の商品は「ハイチュウ」で着実にシェアを上げています。アメリカの人口増加の背景だけでなく、キャンディ市場が3パーセントという成長率が要因とされています。アメリカではまだハイチュウの認知度が低いため、伸びしろが大いに期待されています。
今後拡大が期待される無糖チョコレート市場
Kenneth Researchは調査レポート「世界の無糖チョコレート市場2023年」を2020年に発刊しました。このレポートには、世界的に糖尿病に対する懸念が高まっており、無糖チョコレートのニーズの高まりや、砂糖代替品を使用することに伴うコスト削減の利点について書かれています。
世界の無糖チョコレート市場は2023年末までに1億3376万米ドルの価値を超えることが予想されており、すでに参入している著名なプレイヤーには、キャドバリー、ネスレSA、キットカット、ハーシー、江崎グリコ、明治などがあります。
明治は糖分をカットしカカオを増量した「チョコレート効果」の売上が好調です。
最後に
ゴディバが一番売れている国が日本というのは意外に感じたのではないでしょうか。しかし日本では戦後から商業的な目的でバレンタインが定着していたので、チョコレートが日常にかなり浸透している国なでしょう。
もうすぐバレンタインですが、バレンタイン文化が日本に入ってきた背景を知るとまた一段と楽しめるかもしれませんね。
https://s.japanese.joins.com/JArticle/225718?sectcode=400&servcode=400
https://www.hr-force.co.jp/careerdojo/1907031110
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000171.000059861.html
https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/feature/post_106357/
https://special.nikkeibp.co.jp/atcl/NBO/18/topinterview0518/