コロナ・米中貿易摩擦で特需の台湾IT・半導体デバイスマーケット産業、HUAWEI(ファーウェイ)問題

新型コロナウイルスの感染拡大によって在宅勤務や自粛の流れを受け、世界経済は動乱の時代に突入しました。当初から中国を痛烈批判していたトランプ大統領がコロナウイルスに罹患したことも、ますます米中貿易摩擦を激化させると言う専門家もいます。

HUAWEI(ファーウェイ)の関連会社にファーウェイとの取引を禁止させる「エンティティリスト」に追加されてしまったソニーやキオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)は、ファーウェイへの輸出を許可してほしいとして米商務省に申請を出しています。

しかしこれらのネガティブな状況に影響を受けるどころか、むしろ恩恵を受けている企業があります。

今回は台湾のITマーケットの切り口から、追い風が来ている企業をご紹介します。

米中貿易摩擦

ファーウェイ

ファーウェイへの追加制裁の動き

「米中貿易摩擦」という言葉は2018年頃からよくニュースで聞くようになったのはではないでしょうか。

2016年11月にアメリカ大統領に選出されたトランプ大統領が、対中貿易赤字の解消、貿易の不均衡の解消を公約に掲げ、具体策として、中国の鉄鋼製品などへの関税引き上げを宣言しました。

トランプ氏は貿易赤字を悪と捉えたため、他国の製品に関税をかけて値段を上げることで自国の製品を売りやすくしようと考えたのです。

今年に入り、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって米中の関係は悪化。

もともと貿易摩擦によって緊張状態だったのがますます対立を深めています。

商務省は今年5月、外国製の半導体でも米国の製造装置や設計ソフトを使っていればファーウェイに輸出するのを禁じ、9月17日に、事実上の禁輸措置をさらに強化しました。

米国技術が関わる半導体やソフトがファーウェイで使用されるのを完全に遮断し、第三者を通して半導体を調達し続けることを不可能にするとのことです。

禁輸リストである「エンティティー・リスト」にはファーウェイの関連会社や取引先企業の約275社(全世界の企業)が現在ブラックリスト入りになっています。

アメリカだけでなくや他国のファーウェイ排除の動きは止まりません。

9月30日、米政府のファーウェイへの制裁を受けて、米マイクロン・テクノロジーは最大の顧客であるファーウェイへの出荷を停止することになりました。

英国は2027年までの排除を決め、フランスも事実上の排除に向かっています。

ドイツは、最大の貿易相手である中国のファーウェイ問題について決断を迫られており、11月に閣議決定する予定です。

日本では、スマホのカメラに使用するイメージセンサーを手掛けるソニー、半導体メモリーを提供するキオクシア(旧東芝メモリ)、電子部品の村田製作所などが該当します。これらの企業は現在コメントを控えていますが、今後規制を受ける可能性があるでしょう。

電子部品メーカーは製品がファーウェイの手に渡らないどうかの調査義務まで課せられ、サプライチェーンは広範囲に及びます。電子部品でシェアの高い日本企業は訴訟などのリスクを回避することが重要になってくるでしょう。

ファーウェイの取引先メディアテック(台湾)が制裁を受けるまで

ファーウェイの半導体は米クアルコムとメディアテックの製品の供給がなければ携帯を製造できないほど、ファーウェイにとってこの2社は命綱のような存在です。

今年5月、コロナウイルス感染拡大後、米国による最初の制裁がなされてから、米国以外の他国の半導体メーカーを利用することが迫られています。しかし、台湾のメディアテックに頼ろうとした矢先、この取引までもが制裁の対象になっているのです。

ファーウェイへの部品販売制限を続けるなら他国の同業他社に最大80億ドル(約8400億円)の受注を奪われてしまうとして、クアルコムが販売制限の撤回を米国政府の議員や官僚に積極的に働きかけている

完全な取引禁止を受けるまでどのような経緯があったか、メディアテックの事例で見てみましょう。

※メディアテックはスマートフォン向けSoC(システムオンチップ:CPUや通信モデムなどの基幹部品を1つの基板にまとめたチップ)を製造しています。

5月19日:中国政府が報復措置

ファーウェイの半導体は米クアルコムとメディアテック(台湾)製が多かったのですが、5月に米国政府がファーウェイに対する「禁輸措置強化」を発表したことを受け、中国政府が報復措置を取りました。

ファーウェイはサプライチェーンから米メーカーを除外し始め、メディアテックの受注を拡大する姿勢を見せました。

8月4日:ファーウェイとメディアテックとの巨額契約

ファーウェイはメディアテックと部品調達の巨額契約に基本合意。メディアテックから1.2億個のチップを調達しました。ファーウェイのスマートフォンの年間出荷台数は、直近2年間で、年間約1.8億台でした。

そのため、メディアテックはファーウェイのスマホの2/3のチップを供給することになり、第2位のサプライヤーであるクアルコムを大きく引き離し、メディアテックには思いもよらない利益が期待されました。

実際、売上高は42%増え、単月として過去最高の売上高を記録しました。

5G対応スマートフォンの半導体において、米国がファーウェイ傘下の半導体設計会社ハイシリコンに制裁を科したことも吉と転じました。

8月17日:米政府のファーウェイに対する追加制裁

ファーウェイにメディアテックという退路が存在することに気づいた米国は、規制対象をアメリカ由来の技術が使用された全ての半導体チップにまで拡大します。

ファーウェイに対して「サードパーティ企業が米国の技術で開発、製造したチップの購入も禁止」との追加制裁を課しました。これによって半導体メモリー大手の韓国のサムスン電子なども対象に含まれるようになり、取引継続には米商務省の許可が必要になりました。

9月15日:米政府のファーウェイ供給禁止

米政府は米国の技術を用いて製造した半導体をファーウェイに供給することを禁止しました。

台湾積体電路製造(TSMC)、台湾の聯発科技(メディアテック)、米クアルコム、韓国のサムスン電子、韓国のSKハイニックスなど、各国の企業は軒並み米規制に従った。

許可が必要とされた複数の半導体メーカーが(メディアテックが含まれているかどうかは不明)自社製品のファーウェイへの出荷許可を、アメリカ商務省に申請していることが判明しました。

しかし、9月時点、申請に対して商務省の許可は明示されていません。

ファーウェイに残された道は中国国内での調達しかありません。しかし、中国の半導体製造でトップの中芯国際集成電路製造(SMIC)でもTSMCの技術に追いつくには10年かかると言われるほどその差は大きいようです。

また、米トランプ政権はSMICもリストに追加することを検討しているためゆくゆく供給を停止にされることになるかもしれません。

ファーウェイはこのままではスマートフォンが完全に製造できなくなるリスクが想定されています。そこで、日本の半導体企業の存在が期待されているようです。

しかし今回、ソニーや村田製作所が米国に許可を求める必要が出てきたように、リストにまだ含まれていない半導体企業への規制も大いに起こってくるでしょう。

ファーウェイの停滞によりサムスン電子(スマホ供給)にビジネスチャンス

下記の2つ表は、2019年通年の各ベンダーの出荷台数とシェアと世界シェアを示しています。

通年で最もシェアを占めているのはGalaxyブランドを抱えるサムスン。

出荷台数2億9810万台・シェア21.8%でした。2位が出荷台数2億4060万台・シェア17.6%のファーウェイで、前年比でなんと通年出荷台数が17%増加という成長を遂げました。

Appleは、2018年の通年ではファーウェイを超えて第2位のシェアでしたが、2019年通年では出荷数が前年から7%減少し、ファーウェイに2位の座を明け渡してしまいました。

サムスン電子
サムスン電子②

しかし、米中貿易戦争の最中にも関わらず、ファーウェイは驚きの結果を見せました。

市場調査会社Counterpoint Researchのレポートによると、2020年5月時点、4月から6月にかけてのスマートフォンの世界シェアは、ファーウェイが20.2%と1位。サムスン電子は20.0%と、わずか0.2ポイントの差で2位に後退しています。

スマホ世界シェアの調査では、ファーウェイはサムスンを抜いて世界シェア第1位となっているのです。ファーウェイとの差はわずか0.1ポイントです。

ファーウェイ2

しかしこのファーウェイの1位の結果は一時的なものだったようです。アメリカが制裁を強化し始めた5月以降から、ファーウェイは携帯電話の生産に必要な部品受給に苦戦しています。

8月29日、市場調査企業「カウンターポイント・リサーチ」の調査発表では、サムスン電子が世界スマートフォン市場でシェア22%を記録し1位となったとレポートされています。

2位が16%のファーウェイ、3位が12%のアップル、4位が11%のシャオミでした。今後米国の締め付けの影響が少しずつ出だすと、サムスン電子とファーウェイの間のシェア格差はさらに広がると予測されています。

現地の台湾企業からは、ファーウェイのスマホのシェアが落ちれば、韓国サムスン電子や台湾メーカーのシェアが上がるとして、その受注を獲得することを期待しています。

コロナや米中貿易摩擦で追い風の台湾IT企業

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界的に企業活動が停滞を続けています。

しかし、この停滞している企業活動の代わりに在宅勤務が広がり、自粛によって巣ごもり需要を追い風とするGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)やZoomなどの企業も出てきました。

日本では在宅勤務の環境が整っている企業がそれほど多くなく、コロナウイルス感染拡大をきっかけに企業や学校が「在宅用の個人PC」を必要とする動きが出ました。

この世界的な需要を受けて、世界5位のPCメーカーである台湾本拠のエイサー(Acer)は、リモートワークやオンライン学習向けの需要の高まりを受けて売上を伸ばしています。

コロナ禍でも米中を中心に半導体、パソコン、サーバーの需要が旺盛なことが示されました。

半導体はファーウェイ向けの特需が続いている。台湾のIT企業は9月時点で、中国の華為技術(ファーウェイ)に対する米国の制裁強化で駆け込み特需が生まれ、テレワークの拡大や「5G」本格化の追い風も強く吹きます。

ファーウェイ向け駆け込みがあり、特需 8月売上高最高になりました。8月の主要19社の売上高は前年同月比9%増え、同月として過去最高の1兆913億台湾ドル(約4兆円)となりました。

一時的な可能性もありますが、コロナウイルスや米中貿易摩擦の追い風によって増収した台湾IT企業の一覧です。

台湾IT

上記のIT企業のうち、ノートPCやPCのメーカーのご紹介をしたいと思います。

エイスース(ASUS)

ASUSは日本の家電量販店でも目にすることがあるのではないでしょうか。

インドをアジア太平洋地区の「最重要市場」と位置付ける台湾のPC世界大手のASUS(エイスース)。今回、個人向けPC市場でシェア3位となりました。

ASUS

コンパル(COMPAL)

台湾のEMS(電子機器の受託製造サービス)大手、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)は、従来の4,240万台から前年並みに引き上げ、2020年のノートPC出荷目標を4,390万台にすると発表。

COMPAL

クアンタ(Quanta)

広達電脳(クアンタ)の8月のノートPC出荷は630万台。単月として過去最高を記録しました。

新型コロナウイルスをきっかけにテレワークやオンライン授業の普及が予想以上に進み、米グーグルの基本ソフト(OS)を搭載した廉価版ノートPC「クロームブック」が各社から発売され、受託生産が急増しました。

Quanta

エイサー(acer)

パソコン大手エイサーは2011年から2013年の間、スマートフォン市場で顧客を取り込めずに苦戦していましたが、今回のコロナウイルスの影響によって「ここまで市況が好調なのはかつてない」と陳俊聖CEOは話しています。

9月時点で、テレワークやオンライン授業の拡大でノートPCは大盛況。受注の3割しか対応できていないようです。

2020年第2半期決算では、純利益は12億台湾ドル(約43億円)で、前年同期比2.9倍に増加しました。

acer

 5Gと台湾IT企業

新型コロナウイルスの発生がなければ、2020年当初は消費者の携帯端末の買い替え気運が見込まれて、AIなどと共にデジタル化を加速させる5Gが爆発的に成長すると言われていました。

台湾において5G関連の成長ビジネスは、実は半導体業界です。

台湾の半導体産業やICT産業は強固な基盤を持っており、特に「半導体ウエーハ製造」では先進的なハイエンドプロセスで世界をリードしており、業績を伸ばしている領域、企業も数多く存在します。

コロナの影響が緩和されて新しい5Gの時代に突入すると、もともとあった基盤に米中貿易摩擦の追い風を受けて、台湾の半導体業界企業はさらに存在感を増していくかもしれません。

最後に

コロナウイルスによって日本は戦後最悪の倒産件数になると言われています。

世界中で不景気の流れにありますが、今回ご紹介した台湾のIT企業のように、コロナウイルスや米中の貿易摩擦に恩恵を受けている業界や企業も多く存在します。

中国にあった工場を移転する動きの中に台湾が検討されていることもあり、今後台湾の市場は盛り上がりを見せていくかもしれません。

<参考>
https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=2&n_m_code=034&ng=DGKKZO63816960U0A910C2FFJ000

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64457000R01C20A0000000/

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-29/QHFSQ5T0AFBM01

https://toyokeizai.net/articles/-/376313

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/20586?page=2

https://www.asahi.com/articles/photo/AS20200911002276.html

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64178390U0A920C2000000/

https://www.ys-consulting.com.tw/news/90025.html

https://news.yahoo.co.jp/articles/4978d5f4167a6578e36f7ff3980e04f9173a76a5

https://news.so-net.ne.jp/article/detail/2022275/

https://www.excite.co.jp/news/article/Jpcna_CNA_20190328_201903280003/

https://www.sankeibiz.jp/business/news/171213/bsg1712130500001-n1.htm

https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=2&n_m_code=034&ng=DGKKZO63816960U0A910C2FFJ000

https://www.msn.com/ja-jp/money/other/%E3%80%90%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E3%80%91%E9%B4%BB%E6%B5%B7%E3%81%AE%EF%BC%94%E6%9C%88%E5%A3%B2%E4%B8%8A%E9%AB%98%E3%81%8C%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B9%E8%BB%A2%E6%8F%9B%E3%80%81%E5%90%8C%E6%9C%88%E6%9C%80%E9%AB%98%E3%81%AB%EF%BC%BB%EF%BD%89%EF%BD%94%EF%BC%BD/ar-BB13HkmV

https://www.sankeibiz.jp/business/news/200821/bsc2008210500009-n1.htm

https://news.yahoo.co.jp/articles/2a5bc3bcf2ad03b7a73b59e7dbf3f6e0143b0f11

https://36kr.jp/89472/

https://toyokeizai.net/articles/-/376313

https://news.goo.ne.jp/article/searchina/world/searchina-1692208.html

https://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=76863

https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2020/fis/kiuchi/0731

https://www.nna.jp/news/show/2090382

https://www.nna.jp/news/show/2089257

https://news.yahoo.co.jp/articles/314b851f475d29cedb5003077ca8ef5857f5a44c

関連する事例

海外進出および展開はどのように取り組めば良い?
とお悩みの担当者様へ

海外進出および展開を検討する際に、
①どんな情報からまず集めればよいか分からない。
②どんな観点で進出検討国の現場を見ればよいか分からない。
③海外進出後の決定を分ける、「細かな要素」は何かを知りたい。

このような悩みをお持ちの方々に、プロジェクト時には必ず現地視察を行う、弊社PROVE社員が現地訪問した際に、どんな観点で海外現地を視察しているのかをお伝えさせていただきます。