即席ラーメン海外進出!日清食品や東洋水産はなぜ成功したのか?

即席ラーメンは日清食品が「チキンラーメン」を発売して以降、日本の国民食として親しまれてきました。今では世界中に普及しており、海外で即席ラーメンを食べたことがある人も多いはずです。

本記事では、即席ラーメンで海外進出に成功した日清食品と東洋水産について解説します。

国内の即席めん業界の現状

まずは国内の即席めん業界の現状を確認します。

農林水産省の食品産業動態調査によると、2022年の即席めんの生産量は前年比1.8%減の389,759トンでした。内訳は袋めんが前年比13.3%減の168,224トン、カップ麺が9.1%増の221,515トンです。2009年からの生産量の推移は以下のとおりです。

参考:農林水産省「食品産業動態調査

上のグラフから2020年以降、即席めんの生産量が減少傾向にあることがみて取れます。また、2019年以前も横ばいを続けており、即席めんの国内市場はすでに成熟しているといえるでしょう。

即席めんの世界市場と企業別シェアランキング

即席めんは開発から約40年で世界中に普及し、多くの人に食べられています。その数は国内の消費量よりもはるかに多く、即席めんの海外市場は巨大です。具体的な世界各国の需要量を、世界ラーメン協会の調査より紹介します。

順位国名/地域2022年の需要量(億食)
1位中国/香港450.7
2位インドネシア142.6
3位ベトナム84.8
4位インド75.8
5位日本59.8
6位アメリカ51.5
7位フィリピン42.9
8位韓国39.5
9位タイ38.7
10位ブラジル28.3
参考:世界ラーメン協会 (WINA)

世界中の総需要の合計は1,212億食で、国内の約20倍となっています。これほど巨大な海外市場において、すでに多くの企業が成功を収めています。その証拠に、企業別の世界シェアランキング(2020年)は以下のとおりです。

順位企業名本社世界シェア
1位康師傅中国9.55%
2位日清食品日本7.29%
3位インドフードインドネシア7.04%
4位ユニプレジデント台湾6.54%
5位東洋水産日本4.58%
6位ノムシン韓国3.98%
7位サンヨー食品日本3.66%
参考:ディールラボ「即席めん業界の世界市場シェアの分布

このランキングを見ると、日本企業の日清食品や東洋水産は、即席ラーメンにおける海外進出の成功事例といえます。

日清食品/カップヌードル

出典:日清食品 チキンラーメン

世界シェア2位を誇る日清食品は、世界初の即席ラーメンの「チキンラーメン」を開発したことで知られ、「カップヌードル」や「ラ王」などの人気商品を多数生み出しているメーカーです。この章では日清食品の会社概要、海外進出の状況や成功の理由について紹介します。

日清食品の会社概要

日清食品の会社概要は以下のとおりです。

社名日清食品ホールディングス株式会社
(NISSIN FOODS HOLDINGS CO., LTD.)
設立年月1948年9月4日
資本金251億2,200万円
従業員数15,227名(連結)
売上収益6,692億円(連結・2023年3月期通期)
事業内容・即席めんの製造及び販売
・チルド食品の製造及び販売
・冷凍食品の製造及び販売
・菓子、シリアル食品の製造及び販売
・乳製品、清涼飲料、チルドデザート等の製造及び販売

海外事業については、米州・中国・アジア・欧州の計34の現地法人により展開しています。海外における売上は2,429億円(2023年3月期)で、売上全体の36.6%を占めています。

海外進出状況

日清食品の「カップヌードル」は、世界進出で成功を収めているブランドです。

1971年に世界初のカップ麺として販売された同ブランドは、インスタントラーメンの先駆けとして根強い人気を誇っています。世界進出は1973年にアメリカ、その後ブラジル・シンガポール・香港に進出し、今では世界100ヵ国で販売されるまでになりました。

また発売から50年目の2021年に、世界累計販売500億食という偉業を達成しています。

海外進出の成功理由は?「多様性」

日清食品が成功した理由は、各国のニーズや背景などの「多様性」に対応したことです。具体的には商品開発時点から現地消費者に評価をしてもらい、フィードバックを商品開発に反映することで、現地の消費者が求める商品を追求しています。

例えば、欧米では麺をすすって食べないので麺の長さを短くしたり、反対にタイでは食べごたえを重視して長い麺にしたりといった具合です。

このように国内でヒットした商品をそのまま横展開するのではなく、現地のニーズ・背景などを踏まえて商品開発したことが成功の大きな秘訣といえます。

東洋水産/Maruchan

出典:東洋水産 マルちゃん正麺

東洋水産は世界シェア5位にランクインした企業で、国内では「マルちゃん正麺」や「赤いきつね・緑のたぬき」でお馴染みのメーカーです。この章では東洋水産の会社概要、海外進出の状況や成功の理由について紹介します。

東洋水産の会社概要

東洋水産の会社概要は以下のとおりです。

社名東洋水産株式会社
(Toyo Suisan Kaisha,Ltd.)
設立年月1953年3月25日
資本金189億690万円
従業員数4,745名
売上収益4,358億円(連結・2023年3月期)
事業内容・冷凍魚介類の仕入れ
・加工・販売 ・即席麺類の製造
・販売 ・生麺類の製造
・販売 ・魚肉ハム・ソーセージの製造・販売
など

海外事業については、アメリカ・メキシコに現地法人を設立し展開しています。2022年の海外即席麺事業の売上は1,783億円で、売上全体の40%を占めており、海外事業で大きな成功を収めている企業といえます。

海外進出状況

東洋水産の即席ラーメンは「マルちゃん」のブランドで知られており、マルちゃん正麺のCMのキャッチコピー「嘘だと思ったら食べてみてください。」を覚えている方も多いでしょう。

海外においても「Maruchan」ブランドで展開しており、1972年にアメリカに現地法人を設立して以来、北米・中南米に広く商品を供給し、設備投資も積極的に行ってきました。

出典:東洋水産 IR資料「2022年3月期決算説明会資料

現在では、アメリカ・メキシコでシェア1位を獲得するほどに成長しています。メキシコでは、「すぐできる」という意味で「Maruchan」が使われるほどです。

海外進出の成功要因は?「グローカライズ」

東洋水産が成功した要因は、アメリカ・メキシコの現地の人が好む商品を投入するグローカライズです。

例えば、メキシコではスープの味を薄くして、チリソースやライムを絞る食習慣に対応しています。また、酸味と辛味を組み合わせた独特のフレーバー「レモン&ハバネロ」は、現地の人の好みにマッチして大好評を得ています。

これらの結果として、アメリカでは日本よりも製造数が多くなり、メキシコでは「Maruchan」が言葉として使われるほどにブランドが定着しているのです。

まとめ

本記事では即席ラーメンの国内市場の現状と海外市場規模、世界進出で成功した日清食品と東洋水産の事例について紹介しました。2つの成功事例より、即席めんにおいて海外市場への成功の秘訣はグローカライズといえるかもしれません。

しかし、進出する地域や取り扱う商材によって、成功のポイントは変わってきます。

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