海外事業を展開するにあたって、その国独特の文化や人々の気質、ビジネススタイルなどを理解することはとても重要です。
ただ一口に国と言っても、エリアや都市によってその特徴が大きく異なる場合もあります。
今回は、アメリカの東西で感じたそれぞれの違いから、海外でビジネスを進める際の注意点についてお伝えします。
ヒアリングで感じたアメリカ東西における気質の違い
世界第3位の広大な国土を誇るアメリカは、エリアによって人々の気質や雰囲気が異なるといわれています。
現地の飲食店で飛び込みのヒアリングを行ったところ、その際の対応にも東西の違いがはっきりと表れていました。
今回は、アメリカ西海岸(サンフランシスコとロサンゼルス)と東海岸(ボストンとニューヨーク)、その間に位置するシカゴを含めた5都市で現地調査を行いました。
まず東海岸で飲食店の店員にヒアリングした際は、声をかけたスタッフが必ず責任者を連れてきて、責任者が対応してくれました。責任者からは「どうしてそれを聞くのか?」と詳細な説明を求められます。最初は冷たく感じましたが、こちらが質問の背景や目的を丁寧に説明すると、細かい回答をしてくれ、店内や厨房を隈なく見せてくれ、写真も撮らせて頂けることが多くありました。
東海岸の人々は真面目で閉鎖的なところがあるものの、こちらが理由を説明して、それが理解し納得して頂くことができれば、相手もそれにしっかりと応えてくれるようです。
対する西海岸では、東海岸の対応とは異なり、その場にいたスタッフがすぐに愛想良く対応してくれました。
しかし、態度は友好的でありながらも浅い情報しか教えてくれていないという印象も受けました。
一般的に東海岸は「真面目で伝統を重んじる」、西海岸は「開放的で自由」といわれていますが、まさにそういった気質の違いを目にし、とても興味深く感じました。
自社の強みや評価軸をきちんと持てているか
アメリカでビジネスを行う際も、こうした東西の気質の違いには注意する必要があります。
西海岸の人々は友好的な態度で接してくれ、情報を開示してくれることも多いため、一見すると仕事がとてもスムーズに進んでいるように見えるでしょう。しかし、それが期待する方向に進んでいるかどうかを冷静に見極める必要があります。
実際にビジネスを一緒にやっていけるか判断するためには、表面的な部分だけを見るのではなく、評価軸をしっかり定めて慎重に検討することが重要です。
また、東南アジアの人々もどちらかというと西海岸と似た傾向があります。西海岸や東南アジアでビジネスをする際は、「なんとなく」の準備でも話が進んでしまう良さと怖さに気を付けなければなりません。
一方、東海岸では相手の心を開くまでが一苦労です。彼らの信頼を勝ち取るためには、自信と根拠を持って、多少誇張してでも相手のメリットを明確に示し続けることが重要になるでしょう。東海岸の場合、西海岸のように「なんとなく」の準備では話になりません。
その反面、相手の心が開いた時点で、すでにお互いの評価がある程度できているという利点もあります。時間をかけて信頼関係を築いていく姿勢は、どこか日本人の真面目な気質やビジネススタイルにも通じるような気がします。
しかし、今回取り上げたアメリカ東西における気質の違いは、あくまでもただの傾向にすぎません。
どんな相手にせよ、あらかじめ準備をしておくことが何よりも重要です。「なんとなく」の準備では、遅かれ早かれどこかの段階でつまずいてしまうことでしょう。
大切なのは、自社の強みや根拠、相手へのメリットを伝え、評価軸をしっかり定めて判断すること。これが備わっていれば、アメリカに限らず全世界においてもビジネスをスムーズに展開していけるのではないでしょうか。