
トランプ米政権は、各国に対して相互関税を発動*し、特に中国には145%という高い関税を課しています。これに対して、中国も125%の報復関税を実施し、米中間の対立は一層激化しています。そのため、市場は混乱しており、アメリカの相互関税の影響を見極めることは難しい状況です。このような中、アメリカ経済の先行きを示す重要な指標の一つとして、FOMC(連邦公開市場委員会)の判断に注目が集まっています。
本記事ではFOMCの概要やスケジュール、経済に与える影響について、わかりやすく解説します。
(※2025年4月時点)
FOMCとは何?
FOMCとは、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が約6週間ごとに開催する会合で、金融政策や公開市場操作の方針を決定する重要な場です。年に8回開かれ、四半期ごとに経済見通しを発表するのが特徴です。ここでは、検討事項や参加メンバーについて解説します。
検討事項
FOMCで検討する内容は主に、政策金利・量的緩和・量的引き締めについてです。これらの用語の解説は以下のとおりです。
政策金利(FF金利)
FOMCで最も注目されるのは、政策金利です。アメリカの政策金利は「FF金利(フェデラル・ファンド金利)」と呼ばれ、民間銀行同士が短期間で資金を貸し借りする際の金利を指します。景気の過熱やインフレを抑えるために、一般的に以下のように調整されます。
景気が拡大している時:政策金利を引き上げる
景気が減速している時:政策金利を引き下げる
量的緩和(QE)・量的引き締め(QT)
FOMCでは長期金利の調整のために、量的緩和・量的引き締めの検討も行います。量的緩和と量的引き締めの違いは以下のとおりです。
量的緩和:国債を買い入れて市場に大量の資金を供給する金融緩和政策のことです。賃金上昇や雇用の安定が期待できます。
量的引き締め:国債を売却して市場から資金を引き上げる金融引き締め政策のことです。景気の過熱やインフレの抑制が期待できます。
※アメリカの長期金利は、一般的に米国債10年物利回りのことです。
FOMCの参加メンバー
FOMCの参加メンバーは、7名のFRB理事と5名の地区連邦準備銀行総裁の合計12名です。参加メンバーからもわかるように、FOMCの中心的な役割はFRBとその下部組織である12の地区連邦準備銀行が担っています。
「タカ派」と「ハト派」の違い
FOMCの話題になると、必ずと言っていいほどよく出る用語が「タカ派」と「ハト派」です。これらはFOMCの動向を探る上で重要な用語なので、2つの違いについて簡単に紹介します。
タカ派:利上げ賛成派
タカ派は物価安定を重視し、金融引き締めなどの利上げ策を支持する人のことです。
ハト派:利上げ反対派
ハト派は景気刺激を重視し、金融緩和などの利下げ策を支持する人のことです。
FOMCでは参加メンバーのタカ派とハト派の人数によって、市場が会合の意思決定を予測し、為替レートや株価が大きく変動することがあります。
次回のFOMCはいつ?
FOMCへの影響に備えるためには、会合がいつ開催されるのかを押さえておくことが大切です。2025年のFOMCのスケジュールは以下のとおりです。

FOMCが経済に与える影響
FOMCが金融政策を変更すると、その影響はアメリカ国内にとどまらず、世界経済全体へと広がります。アメリカは名実ともに世界最大の経済大国であり、その動向は各国の市場や経済政策にも波及するからです。ここでは、FOMCの決定が具体的にどのような影響を及ぼすのか、4つの側面から解説します。
為替市場への影響
FOMCが金融政策を変更すると、ドル円の為替レートが急激に変動する可能性があります。なぜなら、金利が変動するとアメリカに資金の流入や流出が起きるからです。利上げした場合は海外からの投資が増えるためドル高になり、反対に利下げした場合はドル安になる傾向があります。このように、金融政策の変更は為替市場に影響を与えるため、輸出入を行う企業にとってはリスク要因です。
株式市場への影響
一般的に、政策金利が下がると株価は上昇し、政策金利が上がると株価は下落します。FOMCが金融政策を変更すると、アメリカ企業の株価に変動が生じ、国際経済にその影響が波及する可能性があります。
債券市場への影響
国債などの債券価格は、長期金利の変動に大きく左右されるのが特徴です。例えば、FOMCが金融引き締めを行い長期金利が上昇すると、新たに発行される債券の利回りは高くなります。すると、既存の債券は相対的に魅力が薄れ、価格が下落します。このように、債券市場は長期金利の変動の影響を強く受けるのです。
物価や雇用への影響
FOMCの金融政策は、アメリカの物価や雇用にも影響します。金利が下がり資金が流入すると、物価が高まりやすく、雇用も維持しやすくなるためです。反対に金利が上がると、資金が流出するため、物価や雇用が減少する可能性があります。
最近のFOMCの動向
アメリカの政策金利の変動を示したグラフは以下のとおりです。

出典:Board of Governors of the Federal Reserve System 「Economy at a Glance – Policy Rate」
グラフから、政策金利は一時期5.5%まで上昇したものの、直近では減少傾向にあることがわかります。
2025年3月に開催されたFOMCでは、政策金利の目標レンジが4.25~4.50%に設定され、2回連続で据え置かれました。FRBのパウエル議長は、インフレの再加速の懸念から「利下げを急ぐ必要はない」という立場のためです。しかし、トランプ米大統領は「利下げをすべき」という立場を取っており、両者の対立が激化しています。
FOMCの注目ポイント
「FOMCで何に注目すればいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。そこで、最低限押さえておきたいFOMCの3つの注目ポイントを紹介します。
政策金利の判断
FOMCで最も注目されるのは、政策金利の判断です。現在、FRB議長はインフレの加速を懸念して政策金利を据え置いているため、引き下げた場合はインフレのリスクが軽減したことを意味します。このように政策金利の判断から、FOMCがどのようにアメリカ経済の現状を捉えているのかを推測できます。
経済見通し
FOMCは四半期に一度、経済見通しとして以下の予測値を公表します。
- 政策金利
- 実質GDP成長率
- 失業率
- PCEインフレ率
※個人消費支出の物価変動から算出した物価上昇率
- コアPCEインフレ率
※食品とエネルギーを除いた個人消費支出の物価変動から算出した物価上昇率
これらの指標は、今後のアメリカ経済の動向を予測する上で、非常に重要な役割を果たします。
議長の発言
経済状況を判断する上で、重要な手がかりの一つがFRB議長の発言です。FOMCの会合後に声明文が発表され、その後にFRB議長による記者会見が行われます。この会見での発言内容は市場に大きな影響を与えることがあり、特に金融市場関係者の間で注目されています。
日本企業も無関係ではない!FOMCの判断に注目
FOMCの金融政策は、アメリカ経済だけでなく、世界中の経済や市場に大きな影響を及ぼします。日本企業においても、為替市場や株式市場を通じて、経営環境に影響が出る可能性があります。このように、あらゆる業界に波及する可能性があるため、ビジネスパーソンは今後のFOMCの動向に注目しましょう。