今回は、高級スーパー「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」を通じて見えてきた、アメリカの食トレンドについてお伝えします。
「ホールフーズ・マーケット」とは
皆さんは「ホールフーズ・マーケット」をご存知でしょうか?
ホールフーズは、アメリカを拠点に世界約460店舗を展開する高級志向のスーパーです。オーガニック食品を数多く取り扱い、食への関心が高い消費者の間で人気があります。
日本ではあまり馴染みのない名前ですが、2017年8月にアマゾンが137億ドル(約1.5兆円)という高額でホールフーズを買収したことが話題となりました。
ホールフーズはファンも多い一方、他のスーパーと比べて価格設定が高いことから「ホール・ペイチェック(給料の大半を持っていかれる場所)」と一部で揶揄されてきました。
これを受け、アマゾンは買収を機にホールフーズで取り扱う一部商品の値下げを実施。また、アマゾンサイトを通じてホールフーズ商品の販売を始めるなど、アメリカの小売業界に大きな影響を与えています。
今、アメリカでもその動きが注目されるホールフーズ。
出張の際に足を運んでみたところ、現地の食トレンドが見えてきました。
オーガニックやグルテンフリーなど健康志向がトレンド
アメリカの食文化といえば、高カロリーかつボリューム満点というイメージを持っている人も多いでしょう。しかし、アメリカでは成人の3人に1人が肥満とされるほど深刻な社会問題となっており、近年は健康志向の食品が人気を集めています。
特にホールフーズは自然食品を中心に取り扱うスーパーということもあって、その傾向が顕著に表れていました。
店内に置かれた食品の多くにオーガニックや「NON-GMO(非遺伝子組み換え食品)」といった表示が並び、原材料へのこだわりを強く感じます。
スナック類ではシュガーレスやカロリーオフなど、ダイエット志向の商品を多く見かけました。
また、日本でも注目を集めているヴィーガンやローフードを意識したもの、ナッツ類やドライフルーツ、野菜などの素材を使った商品も人気です。
さらに、陳列棚のいたるところで目についたのが「グルテンフリー食品」。グルテンは、主に小麦に含まれるたんぱく質の一種です。アメリカでは食物アレルギー患者が年々増加しており、グルテンフリー食品はアメリカの食品市場に欠かせない存在となっています。
作り手の理念に対する高い関心
写真を見ても分かるように、どの商品のパッケージにも詳細な成分が表示されています。味や価格以上に、原材料や製造工程を購入時の基準にする消費者が多いのでしょう。
また、オーガニックやグルテンフリーと並んで、多くの商品には「フェアトレード」のマークが表示されていました。フェアトレードとは、発展途上国の原料や製品を持続的に購入することで、生産者の自立や生活向上を支援する運動です。
アメリカの消費者は、その食品に「何が使われているか」だけでなく、「どういった背景で作られた商品なのか」という生産者の理念やストーリーに対する関心が非常に高いようです。パッケージ自体にも、生産者の顔や想いが伝わるような工夫がされています。
「サステナビリティ」を求めるミレニアル世代の存在
現地の専門家に話を聞いたところ、こうした流行の背景には「ミレニアル世代」の存在があるといいます。
ミレニアル世代とは、1980年代から2000年代初頭に生まれた人たちを指します。デジタル・ネイティブ世代ともよばれ、厳しい社会情勢の中で育ったことから、これまでの世代とは異なる価値観を持った世代とされています。
アメリカの年齢別人口分布図
出典:https://www.dvrpc.org/Newsletters/DVRPCNews/2017/January/
ミレニアル世代の消費者は、生まれた時からモノが当たり前にあるからか、よりユニークなものやプレミア感のある商品を好む傾向にあります。エコや社会問題への関心も強く、商品を購入する際には「サステナビリティ」を非常に重視します。
サステナビリティ(持続可能性)とは、環境や人を犠牲にすることなく、将来にわたって持続可能な社会システムを目指すという概念です。先ほど紹介したフェアトレードも、まさにこういった考えに基づく運動といえるでしょう。
社会貢献意識の高いミレニアル世代がトレンドをリードする現在、社会的価値のある企業やその商品へのニーズが高まりを見せています。流通側もその重要性を認識しており、大衆向けスーパーのCostco(コストコ)やWalmart(ウォルマート)、街角のドラッグストアでもミレニアル世代の興味を引くような商品が扱われていました。
ミレニアル世代が社会の中核を担っていくにあたり、こういった動きは今後も加速すると予想されます。サステナビリティという概念も一時の流行ではなく、将来的には一般的な概念として浸透していくのかもしれません。そのとき、企業は自らの利益を追求するばかりでなく、社会的責任を果たすことが強く求められるのではないでしょうか。