寡占化が進む動画配信プラットフォームと新規参入を狙うコンテンツ制作会社。NETFLIX vs Amazon Prime vs hulu と SONYとApple TV+の新規参入の脅威

Netflixが2020年4月に発表した2020年1~3月期の決算報告によると2020年1~3月期の純利益は前年同期比2.1倍の7億90ドルに達し、有料会員数は3ヵ月間で1,570万人以上増加の1億8,200人を突破したことが分かりました。

動画配信市場はコロナ以前から順調に拡大してはいましたが、感染拡大防止対策として自宅で過ごす人が増えたことが追い風となりました。

コロナ渦において多くの映画の興行収入が低迷する中、10月中旬に公開された「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入が公開から10日間で107億円に達したことは史上最速とされ話題になっています。

興行収入
鬼滅の刃

『鬼滅の刃』の原作は少年誌に連載されていた漫画ですが、映画はソニー傘下のアニプレックスが制作しています。

ソニーはこれまで映画や音楽などをネットで配信するビジネスを行っており、ゲーム以外で強い基盤を構築できないという悩みを抱えていましたが、最近米通信大手のAT&Tから米アニメ配信大手のクランチロールの運営会社を買収しました。

コンテンツ制作企業がNetflixなどの配信プラットフォーマーの機能を備え大手動画配信企業に対抗する動きを見せています。ここでは、寡占化が進む動画配信業界やコンテンツ制作企業の動向についてご紹介します。

※動画配信サービスには、定額制動画配信(SVOD: Subscription ビデオ on Demand)などの有料サービスを提供するNetflixやAmazon Primeと、「YouTube」や「ニコニコ動画」に代表される広告収入などで運営している無料サイトの2種類があります。ここでは前者の有料サービスについてお話します。

動画配信サービスとは

動画配信サービスとは、インターネットやモバイル通信回線を通じて、PCやスマートフォンで動画を視聴できるサービスです。光ファイバー加入者線やLTEなどの高速回線が普及したことにより利用が広まりました。

動画配信サービス利用状況

https://ictr.co.jp/report/20190222.html

ICT総研が2019年2月、日本人4,222人のネットユーザーに対して実施したアンケート調査の結果において、動画配信・無料サービスのみを利用するユーザーは62%でした。一方、定額制サービス利用のユーザーは17%と無料サービスに比べるとまだまだ低いようです。

しかし、定額制の動画配信ビジネスの方が成長率は非常に高いと以前から予測されています。Informaの調査では、2015年時点で定額制の売上は動画配信の売上全体の70.3%でしたが、2022年の予想値では92.0%にまで達するとされています。

デジタルコンテンツ協会の調査では、日本における動画配信市場の規模は、平成30年に推計2200億円、令和5年には2950億円に成長するとの推定です。

家族が一緒になって決まった時間にテレビを見る習慣が薄れており、スマートフォンなどのモバイル端末でいつでも好きな時に動画を視聴するライフスタイルが急速に普及しています。このような要因が、動画配信サービスの浸透を加速化させているのでしょう。

動画配信市場規模

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd111320.html

上記のグラフを見て分かるように、SVOD市場は年々拡大しています。上記のInformaとデジタルコンテンツ協会の調査は、コロナウイルス感染拡大前に行われたものです。コロナ渦においては巣ごもり需要が思いがけない後押しとなり、動画配信サービスの定額制利用は急増しました。

コンテンツ制作企業のジレンマと打開策

crunchyroll

https://www.axion.zone/at-t-wants-1-5-billion-in-crunchyroll-sale-to-sony/

映画大手は映画館での公開以外に、DVDなどの記録媒体を使用したコンテンツの販売やテレビ放映によって収益を確保していました。しかし、ネット配信が普及するにつれてビジネスモデルは揺らいでおり、新型コロナウイルスが追い打ちをかけました。

このことで映画館の集客も難しくなり、各社はネット動画配信で課金収入を伸ばすことが収益確保において不可欠になっています。それでは映画制作企業やコンテンツ制作企業がネット配信することのメリットとデメリットを見てみましょう。

メリット

NetflixやAmazon Primeなどのプラットフォーマーを利用した動画配信は、幅広い顧客に自社コンテンツを提供し、販路が広げることができる

デメリット

  • 巨大な配信基盤を強みに、提供価格の交渉がプラットフォーマー優位になってしまう
  • コンテンツ制作自体の主導権まで配信事業者側が握ってしまうと収益基盤が崩れかねない

このデメリットを解消して収益性を高めるために、映画制作企業やコンテンツ制作大手が自前の配信基盤を構築することが重要です。

近年、プラットフォーマーの対抗するために、コンテンツ大手企業は動画配信サービスに続々と参入しています。映画『スター・ウォーズ』シリーズなどを展開するウォルト・ディズニーは自社ブランドによる動画配信を19年11月に始めました。

また、ソニーは12月10日、米アニメ配信会社であるクランチロールを約1200億円で買収すると発表しました。クランチロールは有料会員が300万人ですが、アニメ愛好者の間で熱烈なファンが多く、配信先は200以上の国・地域に広がります。

ソニーは傘下に人気アニメ『鬼滅の刃』などを制作するアニプレックス持っており、得意のアニメ分野で自らが配信側となって存在感を高める戦略によって、将来的にはNetflixやAmazon Primeビデオに対抗していく動きを見せています。

このような動きはウォルト・ディズニーやソニーだけではなく、多くのコンテンツ企業が動画配信で先行するNetflixなどのプラットフォーマーを意識しています。

ソニー

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ101BB0Q0A211C2000000?unlock=1

ソニーが打ち出す差別化として、アニメの他に配信大手が持たない多様な事業との相乗効果があります。というのも、アニメはゲームとファンの層が重っており、主題歌の制作など音楽事業との親和性も高いことが特徴として挙げられるからです。

ここに目をつけたソニーは、同社所属アーティストのアニメ主題歌をライブ配信するサービスを開始しています。今後、業界で先行するプラットフォーマーと急成長する配信サービスの主導権争いが激化していくかもしれません。

世界トップ3の動画配信企業

下記は、2018年に予測された世界におけるサブスクリプションの市場規模です。

動画配信企業のトップ3であるNetflix、Amazon Primeビデオ、huluについてご紹介します。

動画サービス売上比較

https://news.yahoo.co.jp/byline/kandatoshiaki/20180411-00083824/

Netflix

NETFLIX

https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1266137.html

Netflixは、1997年8月創業の、アメリカのオンラインDVDレンタルおよび定額制動画配信サービス運営会社です。オンラインでのDVDレンタルサービスを始めることを思いついたのは、スタートメンバーのヘイスティングス氏でした。

かつて彼が『アポロ13』をレンタルした際、返却期限までに返却できず、40ドルの延滞金を支払った経験がきっかけとなったそうです。

1998年、わずか30名の従業員と共にウェブサイト上でDVDレンタルサービスを世界で初めて開始しました。当初扱っていた作品数は925タイトルあり、1週間レンタルにつき4ドル、送料として2ドルという料金設定でした。

その後、1999年に定額制のレンタルサービス「マーキー・プログラム」と呼ばれる、月額15ドルでDVDを本数制限なしでレンタルできるサービスを開始しました。延滞料金、送料・手数料が全て無料というこのサービスは、当時では画期的なアイデアとして話題を呼びました。

ウォルマートやブロックバスターなど多くの大企業が月定額制でこの業界参入してきましたが、Netflixは常に業界ナンバーワンの地位を維持しています。

アメリカ60%がNETFLIX

https://synoint.jp/2018/11/vod-rankings/

ネットフリックス業績

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58340040S0A420C2000000

Netflixが21日発表した2020年1~3月期の純利益は。前年同期比2.1倍の7億906万ドル(約764億円)となり過去最高を2四半期ぶりに更新し、売上高は同28%増の57億6769万ドルとなりました。

コロナ渦の巣ごもり需要により、有料会員数は19年12月末より1577万人多い1億8286万人となりました。

Netflixがオリジナルコンテンツを作る際、「全世界同時配信」を目指すのが通常となっています。オリジナルコンテンツは190の国で配信されていますが、最新のコンテンツの場合は最大で最大24言語での吹き替え、500以上の字幕とユーザーのインターフェースを含む言語の対応が行われています。他社が簡単に真似できないサービスを差別化として持っていると言えるでしょう。

Amazon Prime video

amazonプライムビデオ

https://amazon-press.jp/Top-Navi/Downloads/Presskit/amazon/jp/Logo_Download/

Amazon primeの年間登録ユーザーは、7,500万人で、年間での課金となっています。入会するとAmazonの宅配料金が無料になる会員サービスですが、映画などの動画配信サービスAmazon Prime videoのサービスを無料で受けることができます。

日本においてはNetflixよりもAmazon Prime videoの方が圧倒的に人気のようです。ニールセンデジタルが、2019年1月の日本における無料・有料動画アプリの利用状況を調査したところ、有料動画配信の中で最も利用者数が多かったのはAmazon Prime ビデオの509万人でした。次のNetflixは大きく引き離され、171万人でした。

Amazonはコンテンツを調達する際、DVD販売から得られた顧客データを活用しており、どういう層がどういう作品を好むか、日本で展開する上でどんな作品を調達すべきかを分析しています。そのため、古い日本映画やドラマやアニメの比率がNetflixに比べて高く、このことが日本の市場で人気の秘訣となっているようです。

hulu

hulu

https://www.hjholdings.jp/

huluは、アメリカ合衆国の定額制動画配信サービスです。NBCユニバーサル及びニューズ・コーポレーション(21世紀フォックス)という巨大資本を持つメディア界の企業が始めた新しいオンラインビデオベンチャーです。圧倒的な資本力とメディア力という差別化を活かし、今日の地位を築いてきました。現在、huluの株式はディズニーのFox買収によって60%以上となっており、ディズニー社の傘下としてみることもできます。

寡占化の問題

2020年7月現在の世界のユーザー数は、Netflix 約1億9,000万人、Amazon Primeビデオ 9,000万人、hulu7,500万人です。

しかし、これらの大手動画配信企業によって「寡占化」が進んでいることが業界の課題となっており、2020年は大手動画配信事業者間においてユーザーの奪い合いが起きています。各事業者はオリジナル作品を制作するなどして顧客の取り込みをしていますが、寡占化が進んだ場合に起こりうる問題についてWOWOWの田中社長は「(作品の)権利獲得競争も放送事業者間だけにとどまらず、配信事業者との競争も厳しい面が出ている」と指摘しています。

動画配信業界の新たな脅威:Apple TV+

高速大容量の5Gの時代が到来し、一層の市場拡大が予想される中、2019年、米Appleが新たに動画配信業界に参入しています。

appleTV

https://www.apple.com/jp/newsroom/2019/03/apple-unveils-apple-tv-plus-the-new-home-for-the-worlds-most-creative-storytellers/

Apple TV+は日本では2019年11月にスタートした映像コンテンツのサブスクリプションサービスで、NetflixやAmazon PrimeビデオのApple版です。動画配信サービスといって既存の主力動画配信企業のサービスとは異なっています。

元々Appleが提供するApple TVでは映画やテレビ番組のレンタルや購入ができるサービスを提供していましたが、Apple TV+はその一角に新設された配信サービスという位置付けで、Appleが制作したオリジナルコンテンツだけが取り扱われ、他の劇場公開作品やテレビ番組などは含まていません。

Appleのエディ・キュー氏はこの動画配信サービスについて「Netflixは、いつでも何か見るものがあるようにコンテンツをたくさん作っているが、我々が目指すものとは違う。我々は、オリジナルコンテンツの数ではNetflixに勝てないが、その分各番組のクオリティは高い。」と質で勝負することを明言しています。Appleが参入することでこの業界はますます競争が激化するでしょう。

最後に

以前は自宅の外が中心になっていたエンターテイメントが自宅中心となり、動画配信サービスの需要の更なる拡大が期待できますが、Netflixは株主に対して「自宅に留まらなければならない期間が終われば、会員数の伸びは鈍化する」と伝えています。

新型コロナの影響により3月半ばから大半の独自作品の撮影を中断している同社ですが、コロナウイルスの感染拡大が長引けば新作の数や配信スケジュールに響くという懸念があり、ドル高によって海外事業の収益性も低下しています。

大手動画配信企業やコンテンツ制作企業は、このようなNetflixの指摘を念頭に置きながら、コロナ渦、アフターコロナにおいて新しいサービスを取り入れることが必要です。例えば、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などと組み合わせるなどして、視聴者を飽きさせないコンテンツが求められるでしょう。

5Gサービスが広がる現代において、携帯会社各社の協力も必要です。より高画質で安定したサービスが供給されれば1人あたりのインターネット動画視聴時間は増加するのは明確ですが、「データ容量の無制限化」のサービスも今後の動画市場拡大における大きな要素と言えるでしょう。

https://the-owner.jp/archives/3062

https://www.screens-lab.jp/article/22593

https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20200915-00197361/

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000013190.html

https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2433

https://www.sankeibiz.jp/business/news/191127/bsj1911271205007-n2.htm

https://www.sankeibiz.jp/business/news/191127/bsj1911271205007-n2.htm

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00330/00001/?P=2

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003354.000005875.html

https://news.yahoo.co.jp/articles/e1b7927539aa2390fef6764f8101846431a69ad0

https://digiday.jp/platforms/facebook-twitter-become-ビデオ-provider/

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ11717011122020000000

https://www.gizmodo.jp/2019/07/apple-tv-plus-Netflix.html

https://crevo.jp/ビデオ-square/column/20161006/

https://www.businessinsider.jp/post-163979

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