
ドイツテレコムは、ドイツに本社を置く電気通信会社です。モバイル回線や光回線などのインターネット通信のサービスを提供しており、世界50カ国以上で2億5,200万人以上のユーザーを抱えています。本記事ではドイツテレコムの会社概要や経営状況、成長戦略を解説します。
ドイツテレコムとはどんな会社

出典:ドイツテレコム
ドイツテレコムは、ヨーロッパ最大の電気通信会社です。ドイツに本社を置き、ヨーロッパを中心に50カ国以上でサービスを展開しています。Reinforz Insightの「2023年最新版:世界の固定通信会社ランキング時価総額TOP100」では、世界4位を獲得しました。ここでは、ドイツテレコムの会社概要や歴史、経営理念を紹介します。
会社概要
ドイツテレコムの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Deutsche Telekom AG |
本社 | ドイツ |
設立 | 1995年 |
進出地域 | 50カ国以上 |
ユーザー数 | 2億5,200万人 |
従業員 | 約199,652人以上 (2023年12月31日時点) |
売上高 | 1,120億ユーロ(2023年度) |
歴史
ドイツテレコムは、1995年にドイツの国営企業「ドイツ連邦電信電話会社(元ドイツ連邦郵便)」が民営化されたことで誕生しました。
2000年には、ITサービスやデジタルサービスを提供する子会社「T-Systems International GmbH」を設立。2001年には、アメリカのVoiceStream Wireless PCSとPowertel Inc.を買収し、T-Mobile USAを設立して本格的にアメリカ市場へ参入しました。
2013年にT-Mobile USAは、料金を大幅に簡素化した「シンプルチョイス」プランを発表。この戦略は大成功を収め、この年に社名をT-Mobile USに変更しました。2020年には、アメリカの競合企業であったSprint Corp.を吸収合併して、新たなT-Mobile USを構築。現在は、1億4,000万人のユーザーを抱える企業となりました。
2024年には、ブランドファイナンス社の「グローバル500」において、「世界で最も価値のあるブランド」ランキングで11位を獲得。このように、ドイツテレコムは電気通信分野の世界的なリーダーに成長しています。
経営理念
ドイツテレコムは経営理念として、次の6つの基本原則を掲げています。
・お客様を喜ばせる
シンプルで革新的な体験を通じて、お客様の目標達成をサポートする。
・成し遂げる
起業家精神とソリューション志向により、競争で優位に立つ。
・敬意と誠実さを持って行動する
いつでも、どこでも正しいことをする。
・一緒にチームを組む
一つのチームとして、互いに挑戦し、力を与え合う。
・ドイツテレコムを頼ってください
ドイツテレコムであることを誇りに思い、情熱・責任・熱意を持って行動することでお客様の信頼を得る。
・好奇心を持ち続け、成長する
好奇心を持ち、継続的に学習を行う。
ドイツテレコムの経営状況
ドイツテレコムの経営状況として、売上高とEBITDA ALの推移を紹介します。※EBITDA ALとは、利息・税金・減価償却費控除前、リース費用控除後の利益のことです。

参考:ドイツテレコム「2023 Annual Report」
2023年度の売上高は1,120億ユーロ(16兆8,000億円)で、2022年度の1,144億ユーロ(17兆1,600億円)と比較して、24億ユーロ(3,600億円)減少しました。一方、2023年度のEBITDA ALは512億ユーロ(7兆6,800億円)で、2022年度の360億ユーロ(5兆4,000億円)と比較して、152億ユーロ(2兆2,800億円)増加しました。※1ユーロ=150円換算
売上高が減少した要因は、アメリカ市場における為替レートの悪影響と端末機器の売上減少が挙げられます。一方、EBITDA ALが大幅に増加した要因は、基地局子会社GDタワーズの売却益が発生したことが挙げられます。
また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ドイツテレコム「2023 Annual Report」
グラフから、北米・ドイツ・欧州が主要地域であることがわかります。特に、北米の事業が売上に大きく貢献しています。
ドイツテレコムの事業別売上高の推移
ドイツテレコムの経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。同社の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ドイツテレコム「2023 Annual Report」
グラフからドイツテレコムの主要事業は米国事業・ドイツ事業・欧州事業であることがわかります。ここでは主要事業の内容に加えて、売上高とEBITDA ALの推移を紹介します。
米国事業
米国事業は、アメリカにおける通信サービスを担う事業です。同事業の売上高とEBITDA ALの推移は以下のとおりです。

参考:ドイツテレコム「2023 Annual Report」
2023年度の売上高は724億ユーロ(10兆8,600億円)で、2022年度の754億ユーロ(11兆3,100億円)と比較して、30億ユーロ(4,500億円)減少しました。一方、2023年度のEBITDA ALは248億ユーロ(3兆7,200億円)で、2022年度の197億ユーロ(2兆9,550億円)と比較して、51億ユーロ(7,650億円)増加しました。
売上高が減少した要因は、端末機器の売上減少が挙げられます。一方、EBITDA ALが増加した要因は、事業の合併や売却、訴訟に関する費用の減少が挙げられます。
ドイツ事業
ドイツ事業は、ドイツにおける通信サービスを担う事業です。同事業の売上高とEBITDA ALの推移は以下のとおりです。

参考:ドイツテレコム「2023 Annual Report」
2023年度の売上高は252億ユーロ(3兆7,800億円)で、2022年度の245億ユーロ(3兆6,750億円)と比較して、7億ユーロ(1,050億円)増加しました。一方、2023年度のEBITDA ALは97億ユーロ(1兆4,550億円)で、2022年度の110億ユーロ(1兆6,500億円)と比較して、13億ユーロ(1,950億円)減少しました。
売上高が増加した要因は、モバイル回線や光回線の増収が挙げられます。一方、EBITDA ALが減少した要因は、2022年度のEBITDA ALには光ファイバー敷設会社GlasfaserPlus(グラスファーザー・プラス)の非連結化による17億ユーロ(2,550億円)の利益が含まれていたことが挙げられます。
欧州事業
欧州事業は、ギリシャやルーマニア、ポーランド、オーストリアなど、多くの欧州諸国における通信サービスを担う事業です。同事業の売上高とEBITDA ALの推移は以下のとおりです。

参考:ドイツテレコム「2023 Annual Report」
2023年度の売上高は118億ユーロ(1兆7,700億円)で、2022年度の112億ユーロ(1兆6,800億円)と比較して、6億ユーロ(900億円)増加しました。また、2023年度のEBITDA ALは40億ユーロ(6,000億円)で、2022年度の39億ユーロ(5,850億円)と比較して、1億ユーロ(150億円)増加しました。
売上高とEBITDA ALが増加した要因は、契約顧客数の増加に加え、いくつかの国で製品価格が上昇したことが挙げられます。
ドイツテレコムの成長戦略
ドイツテレコムは、デジタル通信業界のリーディングカンパニーになることを目指しています。その実現のために、「フライホイール戦略」を中心に置いています。
「フライホイール戦略」とは次の4項目による好循環を生み出すことで、持続的な成長を達成する戦略です。
・INVESTMENTS(投資)
顧客がいつでも、どこでも最高のインターネット回線を利用できるように、モバイル回線や光回線に投資する。
・CUSTOMERS(顧客)
高品質な通信サービスにより顧客満足度を高めることで、ファンへの顧客育成を促す。
・EFFICIENCIES(効率化)
顧客のファン化により顧客数が増えることで、規模の経済性による効率化を実現する。
・FINANCIALS(財務)
上記3項目の結果として、健全な財務実績を達成し、さらなる投資につなげる。

出典:ドイツテレコム「Our strategy: Momentum for the Future」
ドイツテレコムは買収による海外進出の成功事例
ドイツテレコムは、北米や欧州を中心に事業を展開している電気通信会社です。同社が成長した要因の一つは、アメリカ企業を買収してT-Mobile USAを設立したことです。設立後に、買収や合併により事業規模を拡大させ、今ではアメリカを代表するモバイル通信事業者に成長しています。
これにより、ドイツテレコムの米国事業は売上高全体の64.7%を占めるに至りました。そのため、ドイツテレコムは買収によって海外進出に成功した事例と言えるでしょう。海外進出を検討している経営者様は、同社の進出方法を参考にしてみてはいかがでしょうか。