アメリカのローカルマーケット進出のためのM&A

今や企業の成長戦略としても欠かせないM&A(合併・買収)。

特にこれから少子高齢化が深刻化することを免れない日本では、日本国内市場はより厳しいものとなってきます。

アメリカの市場において欠かせないM&Aは大きな手掛かりとなりそうです。

今回は、アメリカのローカルマーケット進出に関す

日本ブランドが通用しないアメリカ

近年、アメリカ進出を考えているお客様から現地企業の買収に関するご相談をいただくことが増えてきました。

なぜ地道に事業展開を行うのではなく、一足飛びに「買収」を選択するのかと疑問に思う方もいるかもしれません。

その理由の一つとして、アメリカや欧州においては日本ブランドが通用しないという問題が大きく関係しています。

これにおける主な理由は、アメリカブランドの製品・サービスが日本のものよりも長けているということが1つ挙げられます。

例えば、プラットフォームビジネスです。

アメリカ企業は近年、世界の時価総額ランキングで上位をほとんど占めています。

マイクロソフトやアップル、アマゾンやフェイスブックなど超有名企業がトップに並んでいます。

こうした世界トップ企業に共通していることがプラットフォームビジネスなのです。

そもそもプラットフォームビジネスとは、「土台」や「基盤」、「場」を語源とし、不特定多数の顧客向けに複数のサービスや製品を展開していて、更新が可能な環境であるビジネスのことを指します。

アマゾンやフェイスブック、アップルなども多くの会員や、ユーザーを有しており、製品またはサービスが豊富で、随時更新が可能となっています。

こうしたビジネスは市場競争が激化する現代において、顧客との関係を強化したり、複数のパートナー企業と連携を組むことで、より顧客ニーズへの対応の幅が広げられるという重要な役割を果たしています。

一方で日本はこうしたプラットフォームビジネスはなかなか成長していません。

この点が日本ブランドがアメリカで通用しないポイントになります。

日本が世界的に時価総額ランキングで上位を占めていた40年ほど前は、日本人が得意とする「ものづくり産業」が世界の需要に適していたため、日本ブランドが世界で通用していました。

しかし現代では、ものづくりの技術でビジネスを進めていっても、他国から似たような製品を安価で作られて市場競争に負けてしまったり、プラットフォームによる生産・販売に追いつけないといったケースがあります。

物を作ったところでこのプラットフォームビジネスを上手く活用していかないことには、アメリカで通用しません。

WAKMAN vs iPod

携帯オーディオプレーヤーの分野で日本のソニーが手掛けるWALKMANがアメリカのアップルが手掛けていたiPodに負けたという実例があります。

この分野に先に手掛けていたのは日本のソニーであり、初めてウォークマン1号機が発売されたのは1979年です。

一方iPodはそれから約20年後の2001年に初代の物が発売されました。日本は20年ものアドバンテージがあったにも関わらず、アップルに追い越されてしまいました。

ソニーが負けた理由は、消費者目線から見て、使い勝手の悪さを改善していけなかったことが敗因の一つとされていますが、

最も悪かった点は、消費者が使い勝手がベターなアップル製品に流れていくことに加え、さらにiTunesというデジタル案限を音楽業界全体に巻き込んでいったことアップルのビジネス戦略についていけなかったことと一般的に言われております。

こうしたプラットフォームによるビジネス戦略の力が弱い日本ブランドだからこそアメリカではなかなか通用しない状況になってきているのです。

今後もGAFA、テスラ(電気自動車)、ウーバー(タクシー配車アプリ)などあらゆるプラットフォームビジネスが様々な分野を巻き込んでビジネス展開をしていくでしょう。

アジアブランドはなかなか米国ローカル人に浸透しない

日本のプラットフォームビジネスの欠如以外で、日本ブランドがアメリカで通用しない原因は、食品などにおいてアジアンマーケットにしか展開できないことが挙げられます。

アメリカには日本人、韓国人、中国人が多く住んでおり、その人口は1447万人にも上ります。

アジア人が多い地域である、ニューヨーク、ワシントン、シカゴ、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ヒューストンなどの主要都市では大型のアジアンマーケットが存在します。

多くは韓国系、中国系の企業がそうしたマーケットを運営している場合が多いです。

具体的には、Hangkook SupermarketやH martといった名前のスーパーです。

米国のアジア系スーパー

韓国系が一番多いので韓国の食材が豊富に並んでいますが、日本の製品もたくさん取り扱っています。

日本製品ではおかめ納豆やハウス食品のこくまろカレー・シチュー、キューピーマヨネーズ、

S&Bのチューブ状のわさび、しょうが、からし、マルちゃんの焼きそばなど、日本人なら誰もが知っている商品があります。

アジアンマーケットの中では進出して、強い存在感を出していますが、こうした分野の日本製品は現地の消費者というよりは、現地に住むアジア人に限られているのが現状です。

食文化、好みの味が異なり日本の製品を求めないことやアメリカ人が日本の製品の良さに気付く機会がないといったことなどが原因となっています。

こうした現状がありますが、現段階での進出先だけでは今後の将来性は期待できません。

なぜならアメリカのアジアンマーケットはそれほど規模が大きくないため、やはり人口が圧倒的に多い現地のアメリカ人にもアプローチすることが必要不可欠となってくるのです。

ただ日本ブランドが通用しない以上、いきなりマスマーケットに進出するのはかなり難しく、まずはローカルマーケットに入り込んでいく必要があります。

ローカルマーケットに入り込んでいくには、M&Aが欠かせません。

以下ではM&Aを行う際のメリットをお伝えし、M&Aでどのように販路を獲得していけばよいのかという点を詳しく述べていきます。

M&Aのメリット

M&Aにおいて、一般的なメリットは、意外にも低リスク低コストで事業を拡大できる点です。

新規授業の成功確率は5%と言われており、かなり低いです。

そのわずか5%に賭けて、大資金を無駄にさせたくないというのが一般的な意見です。M&Aによって事業を進めることで、一から始めることがなく、時間とお金の節約にもなります。

アメリカにおけるM&Aのメリットは、現地のM&A市場が活況し続けている点です。

M&A市場規模はこの数年で100兆円を超えています。

このように金額が伸び続けている理由の一つには、アメリカのトランプ政権がアメリカの国益につながるのであれば、M&Aを推奨すると前向きな姿勢を見せていることが挙げられます。

また、連邦準備銀行(FRB)が行った金融う緩和政策やアメリカの景気が好調していることもあり、アメリカ国内のこの市場の金額は伸び続けているのです。

実際のところ世界経済が低成長している時代に入っていますが、多くの会社は大きく成長するための戦力の一つとして、M&Aが必要であると考えており、不景気時の企業体力をつけておく必要もあるため、今後もこうした動きは頻繁にみられるでしょう。

また、日本の政府も日系企業の海外進出を推奨しています。

先ほどもお伝えしました通り、日本は将来的にますます深刻な超高齢化社会を迎えることになります。

そして日本人人口も年々減っています。

こうした状況を踏まえると、日本国内の市場だけで生き残っていくのはかなり難しくなっていきます。

海外市場の獲得のための戦略的取り組み

日本政府はこの状況を懸念し「海外市場の獲得のための戦略的取り組み」を掲げて、以下の具体策を出しています。

  1. インフラ輸出、資源確保に向けて経済協力の戦略的な活用や公的ファイナンススキームの充実などを実施すること。
  2. 潜在力のある中堅・中小企業などに対する重点的な援助として、海外展開支援体制の強化すること、海外現地でビジネス関連の相談ができるよう窓口の設置、日系企業の人材の育成とグローバル化の推進をすること。
  3. 外国人がクールと捉える日本の魅力を発信し、クールジャパンの戦略的な推進、コンテンツなどの海外進出の促進を実施すること、となっています。ちなみにクールと捉える日本の魅力というのは、日本酒や和食といった飲食、アニメや着物、ファッション、ドラマや音楽などのジャンルです。

アベノミクスがこうした目標と具体策を立てていることで、貿易や風潮などの面で今までよりも海外・アメリカでのビジネスを円滑に出来るような形に近づいていると言えます。

M&Aに対するアメリカと日本の意識差

では、実際にアメリカ人はM&Aについてどのように考えているのでしょうか?

いまだに終身雇用制度が深く根付いている日本では、会社への帰属意識の高さからM&Aにマイナスイメージを持っている人も多いでしょう。それこそ自社が海外企業に買収されるとなれば一大事です。

しかし、転職によるキャリアアップが一般的なアメリカでは、日本ほどM&Aに対してネガティブなイメージはありません。

もちろん業界や企業にもよりますが、「会社を高く買ってくれるなら売りたい」と買収に積極的な企業も多く、ある種のサクセスストーリーとして歓迎されるケースもあるようです。

もう一つの理由としては、1970年代にアメリカのM&A市場が活況し、コングロマリットという複合企業が増え、アメリカの大企業が大きく成長していった歴史があることです。

この時期やアメリカの文化的な価値観から、大きくしたもの勝ちというような雰囲気があったため、無駄が多い状態になってしまった企業もありました。

しかし、10年後には簡単に資金が調達できる資本市場のシステムができました。

こうしたことにより、資本市場の効率化が進み、M&Aをより有効に活用しようとする企業が増えていったのです。

このようにM&Aが普及し、アメリカの中で一般化していった歴史があるため、アメリカではむしろポジティブにM&Aをとらえる人が多いのです。

こうした文化の違いによる意識差を理解することは、海外進出を行う上で非常に大切なポイントです。

M&Aによるスピーディーな販路獲得

アメリカでは効率性と合理性が重要視されている社会であるため、M&Aによってスピーディーに販路を獲得していくことがM&A市場の成長に繋がっています。

今から工場や事務所を作って、駐在員を派遣して…と何年もかけて地道に販路を開拓するのは容易なことではありません。

アメリカでは新しく事業を始める際は、こうしたゼロからのスタートではなく、もう既に立ち上がっている事業を買収することによって、低コスト、低リスク、短時間で事業をスタートさせるのが一般的です。

このようにスピーディーかつ確実にローカル販路を獲得するためには、すでに流通ルートを持っている現地企業を買収するのが手っ取り早いのです。

日本ブランドの人気が高い東南アジアであれば地道に販路を開拓していくのも一つの手ですが、アメリカのローカルマーケットに進出するためには、上記の理由などからもお分かりいただける通り、悠長にしている時間はありません。

まずは買収によって迅速にローカルネットワークを獲得し、そこからさらに事業を拡大していくのが最も効率の良い方法といえます。

実際に、現地でもこれからローカルネットワークに入り込んでいくのであれば買収や合併しか方法がない、という声を多く耳にしています。

まとめ

さて、これまで日本製品が通用しないアメリカにおいて、日系企業が成長していくにはどうしたら良いのかという点をおM&Aの策略の観点からお伝えしてきました。

アメリカ(欧州)に限らず、今後東南アジアやアフリカ、南米地域など、さまざまな国で日本ブランドが通用しなくなっていくのを見越した場合にも、M&Aによる販路獲得という方法は選択肢の1つとして有効でしょうか。

アメリカや欧州など地道な販路開拓が難しい地域への進出を考えている企業は、日本の常識にばかりとらわれず、このM&Aを一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

るご相談の中で感じたM&Aの可能性についてお伝えします。

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