ジョー・バイデン氏が米国大統領になるとどう変わるのか。米中関係と日本への影響

11月8日、世界の行方を左右する第46代米大統領選挙は大激戦の末、バイデン前副大統領の勝利が確実となりました。

しかし、トランプ氏は敗北宣言をせず、開票結果などの手続きに異議を唱え、法的闘争に乗り出しています。

11月26日現在も、自身の勝利を信じ続けているトランプ氏は、「選挙戦は決して終わっていない」と強気な発言をしています。

トランプ陣営が訴訟に踏み切れば結果は保留になりますが、常識的に考えれば、バイデン氏が就任する可能性が高いでしょう。

ここでは、バイデン氏が大統領になることでアメリカ、中国、日本、また各国の関係性はどうなるかについてお話します。

 

トランプ氏とバイデン氏の比較

まず、トランプ氏とバイデン氏の政策や主張を比較して見てみましょう。

 

政策の違い

https://ama-shin.net/blogs/daylife/16223/

 

 

ジョー・バイデン氏とは

オバマ政権の副大統領を8年間務めたバイデン氏は弁護士出身。

家族や親戚の中で初めて大学に進学したと発言しているように、トランプ氏のような裕福な家庭の生まれではありません。

「普通のアメリカ人の心が分かる」と、労働者の家庭で育ってきたことを一貫してアピールしてきました。

 

バイデン氏は、過去にオバマ大統領が行ってきた医療保険改革であるオバマケアの拡大、気候変動対策、銃規制強化を施策として打ち出しています。

トランプ氏支持を崩すための「Build Back Better」(=より良い再建)によって、雇用創出と技術革新も狙っています。

 

バイデン氏が掲げる経済政策「Build Back Better」4つの柱

  1. 製造業の復活とイノベーション
  2. インフラとクリーンエネルギーへの投資
  3. 介護と教育への投資
  4. 人種的不平等の解消

 

また、トランプ氏によってアメリカが孤立を招いたとし、パリ協定、WHOへの復帰や欧州との関係改善なども明言しました。

 

バイデン氏勝利と共に注目されたのがアメリカ初の女性副大統領となったカマラ・ハリス氏です。

カマラ・ハリス

 

「最初の女性副大統領かもしれませんが、最後ではありません」と就任スピーチで述べ、女性たちへ力強いメッセージを送り話題となりました。

彼女は、インド出身のがん研究者の母親とジャマイカ出身の経済学者の父親を持ち、幼い頃は黒人のバプテスト教会とヒンズー教寺院の両方に通いました。

多様な文化を経験しながら育ち、ユニークな経歴を持っています。

 

バイデン氏が77歳と高齢で健康リスクが否めないのは、世界中が不安に感じているでしょう。

バイデン氏の任期の途中に、副大統領であるハリス氏が代わりに大統領になる可能性を各国は考えておかなければなりません。

ハリス氏の夫の弁護士は中国共産党と深い関わりがあるとの噂があるため、ハリス氏に代わることによって外交も大きく変わると考える必要が出てくるでしょう。

 

 

トランプ氏

トランプ氏は就任後、良く言えば新風を、悪く言えば波乱を生んできた大統領で、下記の政策はオバマ政権を否定するものでした。

 

  • さまざまな規制緩和や大型減税
  • TPP(環太平洋経済連携協定)離脱
  • パリ協定離脱
  • USMCA(新NAFTA)締結
  • イラン核合意離脱、米朝首脳会談
  • エルサレムの首都承認問題
  • メキシコ国境の壁
  • イスラエルとUAE国交正常化

 

2017年にハーバード大学が発表した「トランプ大統領の最初の100日間」によると、7つの主要メディアがトランプ大統領について報じたニュースの中で、約8割が否定的だったと分かっています。(オバマ政権では6割以上が肯定的でした。)

2020年に入り新型コロナウイルスの爆発的に感染が広まると、感染対策への不満が募り、「反トランプ」の勢いが一気に加速しました。

5月末からは人種差別反対運動も盛り上がり、引き続き問題となっています。

 

バイデン大統領 世界情勢はどう変わる

バイデン氏は演説で、再生可能エネルギー拡大など、新たな産業や技術に3000億ドル(約31兆円)投資し、300万人分の雇用を創出するつもりであると示しました。

米議会で調整が難航しているコロナウイルス対策の追加経済については直ちに可決すべきと強調しています。

 

アメリカはバイデン大統領の政策によって、具体的にどのように変わるのでしょうか。数ある計画の中から4つに絞ってご紹介します。

 

減税

年間所得が40万ドル未満の人々には増税しないとし、同時に所得が7万5,000ドル以下の人々が今後より高い税率に移行することもないと約束しています。さらに、低所得者の税引き後に所得を増やすために、新たな税額控除などを提案。

 

医療制度

アメリカには医療費高騰と保険料の高額化により、約5,000万人の保険未加入者がいると言われていましたが、政府が補助金を出すオバマケアによって低所得者層の加入が実現されました。

しかし、財政負担を懸念するトランプ氏が撤廃を訴えていました。一貫してオバマケアの重要性を訴え続けてきたバイデン氏によって、存続することになるでしょう。

 

感染対策

アメリカでは11月29日現在、感染者数が約6200万人、死者が約145万人を超え、世界最悪の感染状況となっています。

感染者数

※11月29日の世界の感染者数

 

2020年7月にトランプ氏が国連に対してWHOの脱退を通告しましたが、バイデン氏は就任初日にこれを撤廃すると述べました。

 

バイデン氏は、国民を守るための対策への意識が強く、トランプ政権よりも感染対策に力を入れると期待されています。具体的に下記の3つを徹底する計画としています。

  • 全国的なマスク義務化の実施
  • 全国的な接触追跡プログラムの導入
  • 安全で効果的なワクチン開発の支援

 

大規模な財出動に踏み切ることで短期的には株式市場が好感するでしょう。

感染拡大が収まってきてからだと思いますが、長期的な目線では、トランプ政権とは対照的な政策を取っていくようです。

金融規制の強化、法人税の引き上げ、富裕層への増税などを主張しているため、企業に対しては厳しい政策を取るのではないでしょうか。

 

 

エネルギー・環境問題政策

バイデン氏は就任後すぐにパリ協定への復帰を宣言しました。原油・天然ガス生産を擁護したトランプ氏とは反対に、バイデン氏は脱石油に舵を取るでしょう。

バイデン氏は、オバマ前政権時に中国と親密な関係を築いてきました。

では、日本だけでなく各国に影響を及ぼす対中国政策はどうなっていくのでしょうか。

 

 

対中関係

米中関係

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-11-09/QJI7M1DWLU6N01

 

トランプ氏は選挙戦の中で、「バイデン氏が当選すればアメリカ人あ中国語を学ばなければならないだろう」と皮肉交じりに発言しました。他の諸外国も、バイデン氏が中国寄りの政治や外交をするのではないかと注視していました。

 

しかし、バイデン氏があからさまに親中になる可能性は低いとみる専門家が多いようです。

コロナウイルス感染拡大によって中国に対して反感を持つ人々が増える中、中国寄りの政治は国内でますます反中意識を募らせ政治的リスクが発生するからです。

 

世論調査で評価の高い米国ピューリサーチセンターによると、「中国を好ましくない」とみる米国民の割合は、特にここ数年で大きく増加しています。

具体的には、2018年4月の47%、2019年には60%、2020年3月には66%。同年7月においては73%まで急上昇しています。

この急上昇は、中国が新型コロナウイルスの発生源となり、中国政府の感染への対策が不十分と評価しているためでしょう。

世論調査

 

以前バイデン氏は「親中」のラベルを貼られて躍起になって撤回したエピソードがあります。

バイデン氏はすぐさま軌道修正し、香港問題に関して習近平を「悪党」と呼びました。

そして、大統領選挙において、中国への厳しい措置を公約に掲げたこともあります。

 

貿易

バイデン氏は、「同盟国との協調により中国へ圧力を強めるべき」との考えと同時に「懲罰的な貿易手法は取らない」とも述べています。

トランプ政権による中国製品に対する制裁関税を見直す意向を示唆しています。

 

知的財産

半導体開発、生産などの世界経済の成長を支えるIT分野において、アメリカは知的財産や技術が中国に渡らないように規制を強化することには変わりでしょう。

 

経済

中国は急速に「デジタル人民元」の開発を進めており、デジタル化された人民元が「一帯一路」沿線国に普及し、ドルの覇権がゆらぐことが懸念されています。

世界の基軸国家として地位を守るには規制だけでなく技術力強化も必要となるでしょう。

しかし、現状では、人民元は国際決済通貨としてはドルには及んでいません。

「デジタル元」が発足したとしても、外国との資本取引が自由化されない限り人民元の国際化には限界があるでしょう。

 

チベット・ウイグル問題など

国際的に中国が存在感を増す中、東南アジアにおける安全保障や、香港、チベット・ウイグルなどの人権問題において、バイデン氏も対中強硬姿勢が続くとみられています。

 

日本が受ける影響

「米国第一主義」を徹底し、何をしでかすか分からない脅威でもあったトランプ氏と違って、「国際協調」を掲げるバイデン氏は、「政策が分かりやすい」というプラスの評価も多いようです。それによって各国は戦略を立てやすくなるという期待が持てるでしょう。

 

それでは、実際にバイデン氏の政治によって日本にはどのような影響があるのでしょうか。

 

環境政策

逆に、温室効果ガスの削減などで出遅れる日本にとって、環境政策を重視するバイデン政権の誕生はプレッシャーになるでしょう。

 

TPP

トランプ氏はTPPから離脱しましたが、バイデン氏も国内の製造業を重視しています。

そのため、保護主義的な方向性に大きな差はないでしょう。

バイデン氏は同盟国と協調しながら中国に対抗するのではないかと見られており、将来的にはTPP復帰もあるのではないでしょうか。

しかし現段階では「再交渉する」とのスタンスを示しており、日本の農産物市場の開放、原産地規則の厳格化を求めてくる可能性もあります。

 

貿易

日米の経済関係では、トランプ氏は「日本の対米黒字の大きさを縮小する」ことを要求していました。

バイデン氏に代わっても引き続き課題となり、日本は更なる対米直接投資、サプライ・チェーンの対米移転を迫られる可能性があるでしょう。

 

安全保障

トランプ氏は親台湾の姿勢を強めていました。しかし、バイデン氏にはトランプ氏のように台湾に興味を示さないどころか、台湾を見捨てる可能性もあるのではないかと言われています。

中国は「台湾は中国の一部」と主張していますが、バイデン氏はこれに対して対抗措置を起こさない可能性があるようです。

台湾の動向は日本に直結しているため、日本の安全保障も危機に脅かされる懸念も高まります。

例えば、台湾政府が中国政府によってコントロールされることになれば、台湾とフィリピンの間のバシー海峡の通航が門の役割を果たさなくなり、中国の艦船や潜水艦が障害なく通れるようになってしまいます。

そうすると、日本は台湾をめぐる情勢に単独で対処する必要が出てくるでしょう。

 

 

最後に

バイデン氏が大統領になっても変わらないことを挙げるとすれば、世界における米国経済の優位性でしょう。

個人消費の規模では米国は中国をはるかに上回る市場です。

また、資本、技術においても今後も中国企業は米国に大きく依存していくことが考えられます。

また、人種問題も引き続き課題となり、米国社会の亀裂が懸念されます。

まだまだアメリカの政治は安定の見通しはありません。

このような状況の中、日本はアメリカにも中国に対しても、なるべく依存から脱却し、自立した立ち位置を築いていくことが重要です。

 

<参考>

https://www.jftc.or.jp/kids/kids_news/japan/kyotei04.html

https://news.yahoo.co.jp/articles/48f658cd4c3bfc3e168cbccfea41637fb5aeece3?page=2

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201104/k10012692751000.html

https://news.1242.com/article/253378

https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/viewpoint/pdf/12232.pdf

https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2020/04cfdc86a1781018.html

https://www.theheadline.jp/articles/301

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00179/110500025/

https://news.yahoo.co.jp/articles/749f852d18ef92a4b495d6df9263459a3a7107db

https://ent.smt.docomo.ne.jp/article/460037

https://diamond.jp/articles/-/254409?page=4

https://personalgimmick.com/kamala-harris/#i

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-54858256

https://www.j-cast.com/kaisha/2020/11/12398664.html?p=all

https://www.newsweekjapan.jp/mutsuji/2020/11/post-100_3.php

https://japanese.joins.com/JArticle/272406

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20201117-OYT1T50190/

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/77194?page=8

https://www3.nhk.or.jp/news/special/presidential-election_2020/basic/profile/kamala-harris_02.html

 

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