未来の食品とも言える代替食とは?拡張する代替食市場における技術の発達とその意義について

昔見た未来の世界では、自動車は空を飛び、人々は宇宙服のようなピッタリした洋服を着用し、ロボット先生が授業を教え、完全栄養食のパウチに入った食物やサプリメントのようなもので食事をしていませんでしたか?現実的には叶えられていないことも多く、特に食事となると人々が日々の中で愉しみながら行うことも多いため、現実的ではないのかもしれません。

しかし現在それに近い食品が世に出始めています。さまざまな嗜好や生活様式などに特化すれば、その未来の食事も大変利便性の高いものとなります。今回は、未来の食品とも言える代替食品について記述していきます。 

代替食とは 

代替食

さまざまな理由で食品が摂取できない人々が世の中には存在しています。ヴィーガンやベジタリアンなど、肉、魚、卵、乳製品までも食することをしない信条を持つ人々や、宗教上の理由で特定の食品を口にできない人々、そしてたまごアレルギーや健康上のためなど理由はさまざま。

食肉に関しては、そのような人々のために、動物性タンパク質ではなく、植物性なたんぱく質を加工し、肉の歯ごたえ、見た目、味などを再現したものが代替食品の代表です。肉類が口にできない人々にとっては、食事でたんぱく質不足を補うことができることや、肉の代替食品を摂取することができることにより、口にできる食品が増え、クオリティオブライフも上昇するというもの。 

その他にも生産性が低い食品、貴重な食材、高級な食材なども異なる原料から再現することで大量に、そして低価格で生産可能になり、いままで手に届きにくかった食材も手軽に楽しむことが代替食品で可能となりつつあります。

さらに、世界の人口が激増し、食料危機が起こるのではないかといわれています。そのような場合に備えるためにも代替食を利用し、食糧危機を回避するために利用しようという動きも存在します。 

代替食品と環境問題との関わり

代替食品と環境

代替食品は人々が持続ために生活する上で重要な、地球環境にも配慮された食品です。昨今では地球温暖化対策や、気候について世界中で議論の的になっています。特に家畜を育てるためには、大量の餌、水を消費してしまう上、家畜の牛のげっぷは地球温暖化の原因物質であるメタンガスが大量に発生することなどが大きな問題に。これらの問題は、代替食品を導入することによって回避することが可能です。環境や食糧危機についても、最近話題のサスティナビリティや、SDGsにも繋がっています。

もちろん既述のように大量に安価で生産することが可能であれば、飢餓防止が可能で、他にも栽培可能な土地が利用できる限り、供給を持続できるサスティナビリティ性能や、生産効率が高く、消費期限も比較的長く設定できるため、食品ロスを減少させることができる利点もあげられます。気候の変動を防ぐため、食品を販売する際パッケージに、生産時に二酸化炭素排出量を把握できる「カーボンフットプリント」の記載を求める動きも活性化しています。これにより消費者が、より二酸化炭素排出量の低い生産物を選択して購入するのを促すことが可能です。

植物を栽培して作成する代替肉と比較して、通常の食肉生産ではその二酸化炭素排出量が多く、世界の二酸化炭素排出量の4分の1も占めているため、これを活用すれば、消費者意識を高めることや、代替食品の消費が増加することにより、二酸化炭素低減にも貢献することが可能です。 

そして、動物性、植物性にこだわることがなければ、タンパク質を合成する微生物の利用や、他の新たな技術も発達しており、今まで作物や家畜を育てることができなかった寒冷地、砂漠地帯などの環境下でも製造することが可能なため、さらに効率が高くなり、社会や環境に多くの貢献が可能な技術になります。 

参考:代替肉と環境との関わり

代替食品市場のポテンシャルは

さまざまな要因により、代替食品の需要は年々増加しています。企業の参入や開発、そして消費者の注目もあり、日本で、2019年で15億円であったものが、2022年には25億円、そして2025年には40億円規模となると予想されています。日本ではすでに大豆を使用した食文化がある上、肉を食すことのできない人口も少ない中でこの需要の伸びがありがあり、その注目度の高さが伺えます。既に大手スーパーマーケットの冷凍肉コーナーには数種類の大豆から作られた肉が陳列されており、一般の市民にも身近な商品となりつつあります。ヴィーガンや健康志向の人々がが多い海外においては、その増加幅はさらに大きくなり、そのマーケットだけでも年平均で20%ずつ拡大し、2028年には180億ドル規模になるであろうと予想されている巨大な市場です。 

 参考:日本の代替食品市場 

参考:ヴィーガン世界市場 

代替食品開発メーカーの事例

主に需要の多い肉類や魚類などが多く開発されています。大豆から作成された大豆ミートやえんどう豆のタンパク質から合成されたミンチ状の肉類、魚、などが存在し、そこからハンバーグ、ハンバーガーなどの料理へとアレンジされ、通常の肉を使用するのと同様に活用できる形に開発しています。形成方法は植物性のタンパク質を使用し、機械で練り、圧力、水分の量、熱を加えて、それぞれの食品に合わせた調整を行うことで、その食品に似た食感や形状を作り上げています。ほかにもさまざまな技術や需要により代替食品が製作されおり、その開発企業や商品の一部を紹介していきます。 

ネクストミーツ 

ネクストミーツ

日本の代替食品メーカーでは、ベンチャー企業でありながら代替食品を開発し、ニュースにも取り上げられた「ネクストミーツ」が挙げられます。ここでは、大豆を基にしたたんぱく質を使用し、形も本物の肉のように整形された製品を開発しており、カルビやハラミのような薄型肉、鶏肉のような厚みのある肉などを取り扱っています。肉の歯ごたえは本物のような歯ごたえをもち、焼いたたところも、その見た目、焦げ目など本物の肉と見わけがつかない位の仕上がりになっています。そして焼き肉用の代替肉を国内の焼き肉店に卸したり、海外販売を開始するなど、現在注目の的となっています。代替食品のツナも製品化し、たまごも現在開発中とのことです。 

 参考:代替肉 開発の事例

不二精油 

そして業務用チョコレートで有名な「不二製油」では、また異なる視点から代替食品を制作しています。その代替食品とは高級食材の「ウニ」。ウニは養殖に時間がかかり、鮮度管理も難しく、さらに大量に捕ることが難しいため、高価な食材のうちの一つです。そこで目を付けたのが代替食品の開発。これを使用し、料理の風味付や、味付けなどを行い、ウニよりも安価に安定して提供するが可能になりました。不二製油では他にも豆乳から作られ、麹菌と乳酸菌の2種類の発酵技術を使用し作成し、チーズの風味が味わえる「ソイデリス麹」の開発も発表しています。このように食肉だけではなく、高級食材や乳製品などの代替食品も考案されつつあります。 

 参考:ネクストミーツ、不二製油 

参考:ソイデリス麹 

 それでは、日本より代替食品需要の多い海外ではどのような企業がこの事業に取り組んでいるのでしょうか? 

Quorn 

イギリスの代替食品会社「Quorn」(クオーン)は大豆とは異なる食材で代替食品を開発しています。この企業は、きのこの仲間の菌糸の部分から取り出したタンパク質を使用し、栄養価も高く、さらに食感、味わいなども柔らかい肉に近いものを開発しました。すでに海外で、牛肉、鶏肉、豚肉の代替食品として使用されています。 

 参考:Quorn代替食品 

Meati Foods 

ミーティフーズ

この「Meati Foods」(ミーティフーズ)でも大豆ではなく、菌類の菌糸繊維から抽出したタンパク質を使用して代替肉を製造しています。きのこのタンパク質を使用することにより、大豆から作成された代替肉よりも大きな塊として作成することが可能であることや、キノコに含まれる繊維質が多く含まれているため、健康にも良いというメリットもあります。コレステロールが高く肉を食べることができない人や、食物繊細を必要としている人などにとっては大変ありがたい食品です。このように大豆以外からタンパク質を抽出する技術も生まれてきています。 

 参考:ミーティ代替肉 

Beyond Meat 

アメリカ、カリフォルニアの代替食肉製造、開発会社「Beyond Meat」は代替肉開発の他にも話題性を集めています。それは数々の投資家から資金を集め、ニュースにも取り上げられましたが、その筆頭株主がマイクロソフトの創業者で、世界長者番付でも常に上位の「ビル・ゲイツ」氏であること。その資金をもとに、すでにイギリスの大手スーパーマーケット「テスコ」やレストランフードチェーン「A&W」にも代替肉を流通させています。さらに2022年には、「マクドナルド」でもビヨンドミートの代替肉を使用し、代替肉のハンバーガーを販売する計画もあるとのことです。 

 参考:マクドナルド、ビヨンドミート 

IKEA 

イケア

日本にも多く出店しているスウェーデンの家具販売会社「IKEA」(イケア)も代替食品に力を入れています。イケアのストアを訪れると、レストランや軽食スペース、食品の販売コーナーがあり、手頃な価格で楽しむことができるため、常に多くの利用者で賑わっています。食品販売コーナーにはスウェーデンのスイーツやワイン、飲料やサーモンなどスウェーデンならではの食品が並んでいます。その中でも世界で人気の商品といえば、ミートボール。ミートボールはスウェーデンの家庭料理として親しまれている一品で、イケアにも「フヴドロル」という商品名で取り扱いがあります。これは肉を口にすることができない人たちのための、植物性タンパク質を使用したミートボールて、通常の食肉を使用せず、えんどう豆のタンパク質、オーツムギ、じゃがいもなどを使用した「プランツボール」と、ひよこ豆、人参、ピーマン、とうもろこしなどを使用した「ベジボール」が販売されており、人気を博しています。 

 参考:イケア代替肉 

参考:イケア 

ユニリーバ 

日本や世界でも有名な、DoveやLUXなどの衛生用品、リプトンなどの食品が販売されており、イギリス、ロンドンに本拠地がある「ユニリーバ」でも代替食品事業への投資のニュースが今年入ってきました。現在所有するリプトンの紅茶事業を約5800億円で売却し、それを元手に、これから伸びるであろう代替食品事業に充てるというもの。内容は計画段階ですが、大手の参入と巨額の投資をするとみられていることから、世界中の期待も高まり他の大手企業の市場参加を促すことなど、大変注目を浴びています。 

参考:ユニリーバ代替食品 

まとめ 

このように代替食品の普及は人々の生活を向上するだけではなく、環境にもやさしく、食糧危機の回避そして、貴重な食量資源を守ることにも繋がります。未来にはより手軽で安価で体に必要な栄養が多く含まれている本物の食材と見分けがつかないような代替食品で溢れ、人々の生活をより豊かにしてくれる未来が来るといいですよね。 

関連する事例

海外進出および展開はどのように取り組めば良い?
とお悩みの担当者様へ

海外進出および展開を検討する際に、
①どんな情報からまず集めればよいか分からない。
②どんな観点で進出検討国の現場を見ればよいか分からない。
③海外進出後の決定を分ける、「細かな要素」は何かを知りたい。

このような悩みをお持ちの方々に、プロジェクト時には必ず現地視察を行う、弊社PROVE社員が現地訪問した際に、どんな観点で海外現地を視察しているのかをお伝えさせていただきます。