先日の辛亥革命110周年記念大会で、習近平国家主席は台湾統一への決意を発表しました。台湾は民主国家としての歴史が長く、民主主義の格付けにおいて高い評価を受けており、台湾が中国による脅威に晒されるたびに、民主同盟国は台湾支持を表明しています。
今回は辛亥革命110周年記念大会について、台湾をめぐる日中関係や岸田政権の中国に対する姿勢について記述をしていきます。
辛亥革命110周年記念大会 演説のポイント
辛亥革命110周年記念大会で中国国家主席の習氏は、「中国内政である台湾問題に対しては、いかなる干渉も許されない」と中台統一、そして一つの中国を主張しました。それに対して中華民国(台湾)外交部は、「台湾は一つの民主国家であり、中国内政とする民主主義の潮流を無視した考えは受け入れられない」と訴えました。さらに対中政策を所管する大陸委員会も習氏の演説は、歴史を歪曲する発言であると非難しました。
台湾は民主国家としての歴史が長く、海外機関からも民主主義の格付けにおいて高い評価を受けており、台湾が中国による脅威に晒されるたびに民主同盟国は台湾支持を表明しています。各首脳会談やG7サミットなども、台湾海峡の平和と安定に強い関心を示しており、それは中国共産党の台湾に対する軍事的脅威が国際社会からの期待と反していることを意味しています。
台湾をめぐる日中関係と岸田政権の中国に対する姿勢
台湾をめぐる日中関係
中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相は「東京-北京フォーラム」にて、台湾問題を「重要で敏感な問題」であるとの認識を示し、日本はこの問題に対して一線を超えることは許されないと岸田政権を牽制しました。「台湾は中国の領土の不可分の一部」と主張する中国の考えについて、日本側が理解を示したという政治文書にも触れています。
一方日中関係について、中国外務省 汪文斌 報道官は、「両国の健全で安定した発展と促進を望んでいる」と呼びかけました。習政権も岸田政権との良好な関係を望んでおり、岸田政権の安定化が実現するかどうかについて関心を寄せていると見られます。自民党総裁選に岸田氏が選出されたことについて、欧米各国メディアは一斉に取り上げたうえで、中国・台湾問題や日韓関係の改善に向けて日本が今後どのように立ち向かっていくかを注視しています。ワシントンポストは、日本が台湾を受け入れる姿勢に今後どのような変化が見られるか、いかにして日韓関係の改善に取り組んでいくかが大切であるという見方を示しています。
岸田政権の中国に対する姿勢
また英紙も岸田総理の慰安婦問題における日韓合意を取り付けた実績についても触れたうえで、日韓関係の改善に期待を寄せています。さらに独紙は、岸田氏が日米同盟を重視していると指摘したうえで、他の民主的国家と連携し、中国に対抗していくための手段を構築していきたいとの考えを主張しています。
一方で、自民党の体質に対して指摘する報道も見られます。英誌エコノミストは、「強いビジョンを持たない岸田氏が、記憶に残るリーダーになるとは考えにくい」とし、英フィナンシャル・タイムズは自民党に対して、「次世代のリーダーに託したのではなく、安定を求めた」と論評しました。岸田氏について、「現状維持の男」と非難する声も見られます。
台湾はどのような歴史を歩んできたか
~19世紀頃
台湾は18世紀ごろまでは、中国に加えて、スペインやオランダの植民地でもありました。もともと台湾は先住民族が10民族程度ありましたが、いずれも少数民族でした。そこで中国が清の時代に入ると、中国本土からの漢民族の移住が一気に加速し、台湾における人口の大半が漢人となりました。ただし、台湾にも支配は及んでいたものの、十分に統治してこなかったために、台湾は混沌状態がしばらく続く形となりました。
日本統治時代
日本は日清戦争に勝利後に台湾の統治権を獲得し、その後50年ほど、台湾は日本の植民地となりました。植民地化した当初は台湾内でも非難が強く戦死者が出るほどでしたが、植民地政策によってインフラ整備や教育水準が劇的に改善され、経済も飛躍的に成長しました。
太平洋戦争
この頃(1911年)、中国大陸では中華民国が成立されました。日本は太平洋戦争で敗れたことをきっかけに台湾領有権を放棄しました。代わりに戦勝国の中国(中華民国)が台湾統治を開始し、当時の代表政権は蔣介石率いる国民党でした。
当初台湾は、統治が中華民国に移行したことをポジティブに捉えていましたが、国民党の統治意識の低さや、度重なる略奪や粗暴行為に対して非難してきました。台湾人の日本に対する良好な国民感情は、この頃の歴史が大きく関係しているとも言われています。
蔣介石時代
毛沢東率いる共産党との内戦に敗れた国民党では、多くの政治家や官僚が台湾に逃れました。総統の蒋介石は、日本語禁止、教育における反日教材の使用を徹底するなど、日本色の統治を排除する政策を取り入れました。国民党政権による独裁色の強い統治となった一方で、中華民国では工業と経済の発展が飛躍し、生活水準が徐々に向上していきました。
1970年代、中国大陸の治安維持が進み、国連は中華人民共和国を国家として承認することに至りました。当時、中華人民共和国、中華民国ともに台湾は「一つの中国」であると主張しており、中華人民共和国が新たに国連に加盟して以来、台湾問題は中国の内政問題であるという認識が強くなりました。
現代
蒋経国総統の頃、国民の所得水準の向上などによって、国民批判を政府が押さえつけることが難しくなり、1987年には戒厳令が解除し、台湾の自由化が始まりました。自由化が進むと同時に、経済の発展にも成功しました。国民党は、政権を奪われた野党民主党から2008年に再度政権を取り戻しましたが、2016年の総統選では民進党の蔡英文が女性初の総統となり、台湾の新たな歴史が幕を開けました。
台湾、中国、アメリカの関係
エコノミスト誌は、台湾を「地球上で最も危険な場所」と表現し、台湾戦争の回避のためにより一層働きかけていく必要があると強調しています。
数年以内に中国による台湾進行があるとも懸念されており、戦争となれば大惨事となりかねません。台湾の人々への影響や核保有国同士の対立が加速するだけでなく、経済的にも大きなダメージを被ることとなりそうです。その一つが、電子産業への悪影響です。半導体メーカーである台湾積体電路製造(TSMC)は、最新半導体において世界シェア84%を誇っており、仮にTSMCの生産がストップするようなこととなれば、国際的に大きな損失となることは容易に想像できます。
蔡英文総統は米国に対して、中国による台湾侵略があれば、米国が台湾を防御してくれると期待しており、中国の膨張戦略に対して民主主義国家が団結して立ち向かう必要があるとも訴えています。一方で蔡英文氏は、中国との緊張感が高まる状況であっても、習氏との対話への期待は持ち続けていくと主張しています。両国間での対話は誤解を回避するための最善策であり、これまでも台湾は中国に対して対話を訴えかけてきたと述べました。さらに習氏が台湾国民、体制をしっかりと理解してもらえるようにしていきたいと対話の重要性を強く訴えています。
蔡英文氏はさらに、習氏が中国と全世界で友好な関係を築きたいのか、それとも全世界を支配、抑圧していく立場であることを望んでいるのかを明らかにすべきであると主張したうえで、平和と共存していくことが台湾人に限らず、中国人にとっての共通の願いでもあると付け加えました。
https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=148,149,150,151,152&post=209004
https://www.sankei.com/article/20211009-NMSVJ56EM5MFVE4K5CRVBR7CBU/
https://www.asahi.com/articles/ASPBT4SLKPBTUHBI008.html
https://style.nikkei.com/article/DGXDZO38348550X20C12A1TY1P01/?page=2
https://www.yomiuri.co.jp/world/20211009-OYT1T50223/
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23035
https://benesse.jp/teikitest/chu/social/social/c00749.html
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65152?page=4
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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN29EFY0Z20C21A9000000/
https://www.tabitabi-taipei.com/kihon/basic/history.php
https://www.wowkorea.jp/news/korea/2021/1028/10320620.html