現在、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス(COVID-19)。プルーヴではこれまでに日本企業の海外進出支援を数多く行ってきましたが、このような状況下では海外ビジネスの見通しが立たず、お困りの方も多いと思います。
そこでプルーヴでは、これまで築いてきたネットワークを駆使して世界各国のパートナーにオンラインでヒアリングを行い、現地におけるコロナショックの影響について伺いました。
今回は、アメリカ・シカゴとシリコンバレーに住むパートナーへのヒアリングを基に、現地の状況や今後の見通しについてお伝えします。
※本記事は2020年4月30日時点の情報です。
アメリカの現状
アメリカでは現在、全50州のうち42州で外出禁止命令が出され、全米の94.5%(約3億人)が自宅待機を迫られています。
3月半ばには50人以上が集まるイベントに対して禁止勧告が出されており、日用品や薬の購入、必要な仕事などを除いて外出が制限されている状態です。
スーパーマーケットでは、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を確保するために入場制限をかけたり、レジなどをビニールシートで覆ったりといった対策を設けています。
企業活動については、医療機関や交通機関、生活必需品の生産・物流・販売といった必要不可欠な事業(Essential Business)以外は、基本的に全て操業停止を命じられています。
※必要不可欠な事業の例
・スーパーマーケット、食料品店、大型小売店、薬局、コンビニ、ディスカウントストア、ゴミ収集
・医療機関、保育所、銀行、ガソリンスタンド、自動車修理、郵便・宅配サービス
・動物病院、ペットショップ、農産物直売所、フードバンク
・経済的に困窮している人のための物資やシェルターを提供する事業
・eラーニングなどのオンラインを前提とした教育関連事業
・食品加工業、倉庫保管業、配送業
・航空会社、タクシー、ライドシェアなどの交通関連事業
こうした状況下で失業にあえぐ人が続出しており、カリフォルニア州だけでもすでに約200万人が失業保険の申請を行ったと報じられています。
政府は緊急経済対策として国民一人あたりに最大1,200ドル(約13万円)の現金給付を開始していますが、州や都市によっても生活水準は大きく異なるため、依然として厳しい状況が続いていることには変わりありません。
さらに、コロラド州などの一部地域では外出制限に対するプロテスト(抗議活動)も発生しているようです。
苛烈な資本主義のアメリカにおいて、経済活動の停滞が貧困層の生活を直撃しており、日本のような皆保険制度がないことも相まって余計に不安や危機感が増しているのかもしれません。
現地パートナーの声:シカゴとシリコンバレーの状況
詳しい現地の状況やビジネス環境について伺うため、アメリカ在住のパートナー2名にヒアリングを行いました。
シカゴ:大手建築設計事務所に勤めるAさん
まずはAさんが暮らすシカゴの様子を伺ったところ、迅速にコロナ対策を行った政府に対して市民からの信頼感が高まっており、多くの人がルールに従って在宅していると言います。
Aさん自身の仕事や会社の状況としては、クライアント都合で一時中断しているプロジェクトもある一方、現在進んでいる案件についてはそれほどスケジュールに影響はないとのことです。
ただし、クライアント側の経済的余裕がなくなっているため、今後は受注が減るなどの影響もあるだろうと懸念していました。
実際にAさんの会社は先月と今月の売上が5~10%程度減少しており、同僚の中には仕事が無くなることを危惧している人も多いようです。
また、ニューヨークでWebデザイナーをしているAさんのご家族の話によると、今は彼以外のチームメンバー全員が無給休暇の状態にあり、アメリカの失業状況は今後さらに厳しくなるのではないかと話していました。
シリコンバレー:コンピューター・ハードウェア製造会社に勤めるBさん
Bさんの話によると、シリコンバレーでは元々リモートで働きやすい環境が整っているため、仕事面での影響は比較的少ないと言います。
リモートワーカーが増えたことで、ソフトウェアはもちろんハードウェアの需要も増し、今後はより充実した通信環境を整えるために5G機器設置の需要も高まるのではないかと話していました。
Bさんの会社は生産ラインをアメリカと中国に持っており、アメリカの工場が操業停止している一方で、中国の工場は年始に遅延があったものの現在はほぼ通常通り稼働しているとのことです。
今回のように世界的なパンデミックなどが起きた場合、生産拠点をどこに構えているかによっても会社の状況は大きく変わるでしょう。
サプライチェーンを止めずに経営できる状態を保つためには、Bさんの会社のように生産拠点を分散しておくことが望ましいのではないかと感じました。
今後の成長が見込まれる分野について
最後に、今後の成長が見込まれる分野や現在利用が増えているサービスについて伺ったところ、以下のようなものが共通して話題に上がりました。
特に最近利用が増えているのはフードデリバリー。日本ではチェーン店が多い印象ですが、アメリカでは地元の飲食店を支えるために利用する傾向にあるようです。週2~3回程度、Uber Eatsを経由して注文することが多いと言います。
次に、eラーニングや遠隔医療サービス、身近なところではTikTokのような動画アプリや、在宅時間が長いことから料理を楽しむ人が増えたため、料理動画の人気も高まっているとのことです。
このようなオンラインサービスやリモートでのコミュニケーションの増加に伴い、今後は5Gテクノロジーの需要がさらに加速するのではないかとも話していました。
こうして見ると、フードデリバリーやeラーニング、動画サービスなど、日本でも昨今人気が高まっているものが多く、どの国や都市でも傾向は似ているようです。
そして、オンラインサービスの需要が高まる一方、観光業や飲食業などオフラインの体験に価値を置く産業が苦境に立たされているという点も同様でした。
そんな中、シリコンバレーに本社を置く民泊最大手のAirbnbは4月から新しいオンライン体験サービスを開始しており、苦境を乗り越えて生き残っていくために新たな産業が生まれる可能性を示しています。
コロナショックによるマーケット分析・情報収集支援
今回はアメリカ在住のパートナーへのヒアリングを基に、現地におけるコロナショックの影響や今後の見通しについてお伝えしました。
世界各国のパートナーと提携するプルーヴでは、現在のように海外渡航が難しい状況でも、現地の“生”の声を集めることに注力しています。コロナショックの影響に関してより詳細な情報をお求めの方は、ぜひ一度プルーヴにご相談ください。
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※補足:2020年5月の状況について
4月16日、ホワイトハウスからロックダウン解除に向けた3段階のガイドライン(「Opening up America Again」)が発表されました。
アメリカではこのガイドラインの内容を基に、各州知事の判断によって規制緩和を進めていくようです。
これを受け、アラスカ州、コロラド州、ジョージア州などを含む30以上の州がロックダウンの解除または緩和を行っています。
対して北カリフォルニア州の6つの郡(アラメダ、コントラコスタ、マリン、サンフランシスコ、サンマテオ、サンタクララ)では、外出制限が5月末まで延長されることとなりました。
州や地域によって対応が分かれつつありますが、経済活動の再開に向けて徐々に規制が緩和されはじめています。