アメリカのペットフード業界から学ぶ法律の見通しを探ることの重要性

海外進出をする際、進出先の法律や慣例に準じてビジネスを展開することは避けては通れません。それらの情報は今やインターネットで簡単に調べることができそうですが、実情はネットの情報とは異なるケースが多々あります。今回は、アメリカのペットフード業界を実際に視察したことで、改めて現地に赴きリアルな情報を得ることの重要性を感じましたので、ご紹介したいと思います。

ペットフードにも適用される連邦法「FSMA」とは

(スーパーのペットフード売り場、ワシントンD.C)

2011年、アメリカではFSMA(米国食品安全強化法)が制定されました。これは食品全般の安全性を高めるために国が定めた連邦法です。人間向けの食べ物はもちろんのこと、ペットフードもこの法律の適用範囲です。

FSMAが正式にペットフードにも適用されるようになったのは最近の話です。FSMAの適用範囲は動物が口にするもの全てが対象であり、その数は膨大です。そのため、徐々に適用範囲を広げていき、ようやくペットフードも範囲内となりました。

州ごとに独自の法律が存在するアメリカ

(穀物貯蔵と配合飼料施設、イリノイ州)

今回訪れたケンタッキー州・イリノイ州では、FSMAを採択していませんでした。日本人からすると「国が定めた法律を守らないことは違法なのでは?」と思ってしまいますが、アメリカでは州が定める州法が存在し、それぞれの州には独自の法律があります。理論上は連邦法は州法よりも優位性が高いですが、実際は事業者と連邦よりも物理的距離も近い州政府は州法に則ってのみ活動を行うことができ、そういった意味で州の活動は連邦法で示されてる事項と異なることもあります。

食品の安全を高めるためのFSMAを遵守することで消費者からの信頼度も上がるはずなのに、なぜこの2つの州でFSMAが否決されているのでしょうか。実際にお会いしたペットフード関係者によると、「州内の小規模事業者を守るため」という理由からでした。

大規模なペットフード事業者はFSMA制定前から高い安全基準を独自で設けて運用しており、資金や人員も潤沢にあるため、法律が強化されても問題なく適用できます。しかし、家族経営のファーム(例えば、数十頭の牛や豚を飼っており肥料も自ら飼料も生産しているようなところ)にとっては非常に難易度が高く現実的に厳しいとのことでした。

さらに、ペットフードの消費において「FSMAを遵守しているか」はあまり重要視されていない、ということも理由の一つだそうです。その代わりに、アメリカではAAFCO(米国飼料検査会協会)という団体が存在し、ペットフードの栄養基準やラベル表示に関する基準を制定しています。アメリカのペットオーナーは「AAFCOが認証しているペットフードなのかどうか」を気にしているとのことでした。

実際にFSMAを導入している州は現在のところ数えるほどしかなく、その決断に至った背景もまた州によって異なります。1つの州が1つの国のようなアメリカにおいて海外進出を考える際は、現地に足を運び実情を把握することがより地に足の着いたビジネスを展開することにつながるのではないでしょうか。

法律の見通しを探る

今回の事例でいうと、インターネットでは「アメリカではFSMAという食品安全基準法が存在する」という情報を入手できますが、実際に現地で得た情報はインターネットで探せるものではありませんでした。

さらに、概して法律の策定や改定は水面下で行われることが多く、適用も段階的にされていく傾向があるため、「どの内容が最新なのか」「いつまでに何を対応すればよいのか」が分からないということは多々あります。

現地に赴いたからこそ得ることのできる情報は確実なものであり、それを基に「実際にどのように立ち回ればいいのか」という法律という枠を超えたイメージも掴むことができます。

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