先日、出張でインドの西海岸に位置する都市・ムンバイと、南インドの玄関口である港町チェンナイを訪れた時のことです。現地の人々にヒアリングを行う中で、彼らは日本人と全く違う“モノの選び方”をしていることに気付き、とても印象に残りました。
そこで今回は、インドの消費者が商品を購入する際の考え方についてお伝えしたいと思います。
テクノロジーやメカニズムを重視するインドの消費者
皆さんは、何かを購入する際にどのような点を重視してモノを選んでいますか?
日本の消費者の場合、その製品のブランドやデザイン、あるいは口コミなどを見て選んでいるという人が多いと思います。
しかし、今回ヒアリングしたインド(ムンバイとチェンナイ)の消費者の多くは、製品のスペックやメカニズムをしっかり把握し、そこに使われているテクノロジーの価値を見極めた上でモノを選ぶ傾向にありました。
日本でも家電が好きな男性は比較的そういう傾向にあると思いますが、インドでは若い女性をはじめとした多くの人がブランド戦略や口コミなどのマーケティングよりも、製品そのものの技術やスペックを重視しているようです。
そのため、インドで育った現地パートナーのお子さん(大学生の女性)にマーケティングを重視しがちな日本人のモノの選び方について伝えたところ、「スペックを見ずにどうやって選ぶの?」と反対に驚かれてしまいました。
もともとインドではDIY文化が根付いており、家電の配線なども自分でやる人が多いといいます。普段から“どうやってモノが作られているか”という仕組みや構造と接しているため、より製品の中身を重視する価値観が醸成されてきたのかもしれません。
技術力の高い日本製品への信頼感
こうした価値観を持つインドの消費者にとって、高い技術力を誇る日本製品には大きな信頼感があるようです。
もちろん「日本製品だから良い」と日本ブランドを過信しているわけではなく、その製品のテクノロジーやメカニズムを正しく理解した上で冷静に評価し、アメリカや中国製品とは一線を画すモノだと認識しています。
日本製品は技術力だけでなく耐久性の高さも魅力の一つですが、欧米などでは耐久性よりも安さが重視され、安価な中国・韓国製品が人気を得ています。
しかし、欧米ほど経済的に豊かではないインドの消費者は「できるだけ長く使いたい」「高くても最終的なコストメリットがあるならそちらを選びたい」という人も多く、長く使い続けられる日本製品が好まれているようです。
日本製品と親和性があるインド市場への進出

昨今は「良いモノを作るだけでは売れない時代」だといわれています。製品そのものの価値だけでなく、ブランド力やマーケティングの巧拙が売り上げを大きく左右するのが現在の市場です。
確かな技術力を持ちながらも、マーケティングで海外に後れを取る日本企業が苦戦を強いられているのは当然の結果と言えるでしょう。
ただし、インドの消費者のようにマーケティングよりも製品そのものの価値を見極められる人々の間では、日本製品の技術力がきちんと評価されているということも忘れてはなりません。
その一方で、ASEAN諸国などに比べるとインドに進出している日本企業はまだまだ少ないのが現状です。
インドの車市場で圧倒的なシェアを誇るマルチ・スズキ・インディアのような成功例もありますが、インド市場ならではの難しさから撤退を余儀なくされている日本企業も多いといいます。文化的な違いや心理的な距離を理由に、インド進出を躊躇している企業も多いでしょう。
しかし、インドの人口はこの数年の間に中国を抜くと予想されており、大きな可能性を秘めた市場であることは明らかです。特に技術力を誇る日本企業にとっては親和性の高い市場の一つでもあり、もっと進出が検討されてもいいのではないでしょうか。