ロシア滞在中に体験した医療事情とこれまでの現地調査内容を絡めて、日本とロシアの違いについてお伝えします。
私は、ロシアの都市、モスクワ、サンクトペテルブルグ、ニジニ・ノヴゴロドなどに何度も足を運んでいます。今回、2週間の滞在中に、頭痛の症状がでてしまい現地の病院を受診する機会がありました。そこで体験した内容とこれまで現地調査内容を絡めて日本とロシアの違いについてお伝えします。
現地の病院を受診
滞在中、頭痛のため、現地の公的医療機関を受診する機会がありました。医師によると、原因不明の頭痛とのこと。診察が終了し、ドクターからは近くの薬局で薬を購入し、まずは様子を見てください、とのことでした。ロシアでは日本とは異なり、当たり前に処方箋がもらえるわけではありません。基本的には麻薬以外の薬であれば処方箋がなくても薬局に行けば購入ができてしまいます。
今回はドクターに処方箋をいただけるようにお願いし、もらうことができました。
薬局で処方箋を提出すると、薬剤師は処方箋には目もくれず、どんな症状なのかと手慣れた様子で診察をはじめたのです。そして、様々な薬の説明をすると、処方箋とは別の医薬品を処方してくれました。
ロシアの薬文化
日本では、病気の際にまず行くのは病院やクリニックですが、ロシアでは薬局だそうです。処方箋がなくても抗生物質などの薬が購入できてしまうため、まずは薬で様子を見るという考えなのです。そのため、ロシア国民は医薬品や漢方に関する知識が驚くほど豊富なのです。症状によってどのような薬を服用したらよいのか個人で把握しています。
薬局では、薬剤師に相談すれば違法なものでない限り、ほとんどの医薬品を手に入れることができます。薬剤師の信頼度は高く、たとえ医師による処方箋があったとしても、薬のエキスパートである薬剤師が勧める薬を購入するのが常識のようです。なぜこのようなことが起きているのでしょうか?
ロシアでは、1993年、全国民に強制医療保険制度の加入が義務付けられました。当時はあいまいだった医療サービスの範囲も現在では整備、制定され、国民が無料で診療を受けられるのは地元の公的医療機関に限定されています。
しかし、公的医療機関に勤める医療従事者の賃金は低く、医師と医薬品メーカーとの癒着や賄賂といったダークな部分があるのも事実。医師の医薬品処方に関する規制はあるものの、現状では罰則がないため規則が遵守されていません。患者のためでなく、自分にとってメリットのある薬を処方する医師もいるのが事実です。
医薬品の規制
ロシア市場に流通している医薬品も様々です。新薬のほとんどを輸入に頼っているロシア。保健省ではジェネリック医薬品については、輸入に頼らない自国生産を推進しているようです。よって、ロシアの医薬品認可には、ロシア企業であること、国内生産であることが手続きする上で優先されるポイントになっています。医薬品業界におけるロシアへの進出は、信頼でき、機能が明確である現地パートナーと出会うことが鍵となりそうです。
これまでの現地調査においても、医薬品に限らず現地企業を訪問すると、親日家が多いロシアでは、日本製品は高価であるが、品質の良さには定評があることをよく聞きます。しかし、多くの現地企業が、慎重がゆえに取引までに時間を要する日本企業の特質を知ってのことか、何年も先のことを今交渉するつもりはないとの答えが返ってきます。しかし、中には、日本企業と一緒に成長していきたい、と話す友好的な現地企業と出会うこともできます。
実際に、ロシアへ進出している海外企業の多くは、現地企業の力を借りています。日本企業のビジネスモデルに賛同し、共に成長したいと考える企業が現地には必ず存在すると確信しました。
日本では常識であることが非常識となり得る海外。プルーヴは、独自のネットワークで現地により深く踏み込んだリサーチをこれからも行っていきます。海外で新しいエリアへ進出をご検討されていらっしゃれば、ぜひお話をお聞かせください。未来へ向けてのお力添えをさせていただきます。