
海外市場で成功するための一つの考え方として、地域の特性に合わせて最適化するローカル化があります。その代表的な戦略は、ローカライゼーションとグローカリゼーションです。名前や内容が似ているため混同されやすいものの、両者には明確な違いがあり、適した業界も異なります。
そこで本記事では、それぞれの戦略の特徴と違い、向いている業界をわかりやすく解説します。
ローカライゼーションとは

ローカライゼーションとは、進出先のニーズや文化、商習慣に合わせて製品やサービスを最適化する戦略です。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
- 映画の表現を進出先の価値観に沿って調整する
- ECサイトを母国語に翻訳する
このように、現地の顧客から選ばれるように商品やサービスを最適化する戦略がローカライゼーションです。
ローカライゼーションのメリット
ローカライゼーションの戦略を採用することで、企業には次の3つのメリットがあります。
海外市場での競争力の強化
海外市場で成功するには、競争力の強化は重要な課題です。現地企業の商品やサービスはすでに最適化されており、後から参入する外国企業はすでに不利な状態のことが多いためです。
このような状況を覆すのに、ローカライゼーションは効果があります。自社が持つ強みと現地のニーズへの適応力が組み合わさり、顧客から選ばれる可能性を高められるためです。
海外でのブランディングの強化
ローカライゼーションは、企業のブランドを現地で根付かせる効果も期待できます。地域ごとの文化や価値観に寄り添ったアプローチをすることで、顧客が身近に感じやすくなるためです。
一方、現地の文化や習慣を軽視した方法では、違和感や拒否感を生む可能性があります。このように、現地の顧客から反感を買うと、ブランドイメージが低下する可能性があります。
つまり、ローカライゼーションは自社のブランドイメージを維持・強化するための重要な戦略の一つと言えるでしょう。
顧客満足度の向上
製品やサービスが顧客にとって自然に使えるほど、顧客満足度の向上が期待できます。例えば、ECサイトで現地の通貨や決済方法に対応していれば、スムーズに購入できるでしょう。こうしたローカライゼーションによる配慮の積み重ねが、顧客満足度の向上につながります。
ローカライゼーションの成功事例
ローカライゼーションの成功事例として、ここではNetflix(ネットフリックス)と任天堂株式会社の事例を紹介します。
Netflix(ネットフリックス)
Netflixは、190以上の国で展開しているサブスクリプション型の動画配信サービスです。映画やアニメ、オリジナルコンテンツなど幅広いコンテンツを配信しており、1日に視聴される時間は合計で1億2,500万時間を超えます。
Netflixが世界規模で成功した背景として、ローカライゼーションの取り組みが挙げられます。同社は字幕や吹き替えといった言語対応にとどまらず、各国の文化や嗜好を反映したコンテンツの制作を積極的に進めてきました。つまり、現地向けのオリジナル作品を展開することで、他の動画配信サービスとの差別化を実現しています。
Netflixについて詳しく知りたい方は、「ネットフリックス(Netflix, Inc.)」の記事も併せてご参照ください。
任天堂株式会社
任天堂株式会社は、世界有数のゲームメーカーです。世界各地で数多くのヒット作を生み出している要因の一つが、徹底したローカライゼーションへの取り組みです。具体的には、ゲーム内のテキストを単に翻訳するのではなく、現地のプレイヤーに違和感なく伝わるように工夫しています。こうした配慮が、多くのプレイヤーを魅了しています。
参考:任天堂株式会社「世界で受け入れていただくために」
グローカリゼーションとは

グローカリゼーションとは、世界規模で展開する製品やサービスに、各地域の特性を取り入れて調整する戦略です。ポイントは、グローバル化とローカル化を組み合わせている点です。基本的にはグローバルに展開しつつ、必要に応じて地域ごとに最適化するアプローチを指します。具体的な取り組み例は以下のとおりです。
- グローバルブランドのアパレルを現地のサイズに合わせて展開する
- 洗剤は基本的な成分を統一し、香料を地域ごとに調整する
つまり、世界市場で共通の製品やビジネスモデルを展開しながら、現地のニーズにも対応するのがグローカリゼーションの戦略です。
グローカリゼーションのメリット
グローカリゼーションの戦略を採用することで、企業には次の3つのメリットがあります。
生産コストの削減
グローカリゼーションは、世界規模で製品やサービスを展開する戦略です。事業規模が大きくなるほど規模の経済が働き、生産コストを抑えやすくなります。また、人件費や原材料費の安い地域に生産拠点を置くことで、さらなるコスト削減も可能です。このメリットにより、価格競争で優位に立ちやすくなります。
市場規模を拡大しやすい
グローカリゼーションのメリットは、現地のニーズに対応することで市場規模を拡大しやすい点です。これまで未開拓だった地域に進出することで、新たな売上を獲得できるだけでなく、事業全体の安定性の向上にもつながります。
顧客満足度の向上
グローカリゼーションは、ローカライゼーションと同様に顧客満足度の向上につながります。いずれもローカル化された製品やサービスを提供し、現地の顧客のニーズや課題に対応しているためです。
グローカリゼーションの成功事例
グローカリゼーションの成功事例として、ここではマクドナルドとドン・キホーテの事例を紹介します。
マクドナルド
マクドナルドは、世界共通のブランドイメージとサービスの品質を維持しながら、それぞれの地域の文化や嗜好に合わせたご当地メニューを展開しています。日本の「てりやきバーガー」はその代表例です。このようなご当地メニューを世界中で展開することで、顧客獲得を実現しています。
ドン・キホーテ
ドン・キホーテは、国内有数のディスカウントストアです。ブランド力を生かし、アジア圏を中心にグローバル化を進めています。海外店舗では、国内で培ったワクワク感のある店舗運営を維持しつつ、日本製品を適正価格で提供しています。
つまり、国内では「低価格」、海外では「適正価格の日本製品」という、地域で異なる価値を提供しているのです。この戦略の違いが、ドン・キホーテのグローカリゼーションの取り組みと言えます。
ドン・キホーテについて詳しく知りたい方は、「ドン・キホーテの世界展開」の記事も併せてご参照ください。
ローカライゼーションとグローカリゼーションの違い
ローカライゼーションとグローカリゼーションの違いを、以下の表にまとめました。
| ローカライゼーション | グローカリゼーション | |
| 戦略 | ローカル化 | グローバル化+ローカル化 |
| メリット | ・海外市場での競争力の強化 ・海外でのブランディングの強化 ・顧客満足度の向上 | ・生産コストの削減 ・市場規模を拡大しやすい ・顧客満足度の向上 |
| 事例 | ・Netflix ・任天堂株式会社 | ・マクドナルド ・ドン・キホーテ |
どちらを選ぶべきか?
ローカライゼーションとグローカリゼーションは、特徴やメリットが異なることから、ビジネスモデルに応じて使い分けることが大切です。ここでは、それぞれに向いている業界を紹介します。
ローカライゼーションが向いている業界
ローカライゼーションは、現地の文化や習慣、価値観に合わせた対応が重視される業界に適しています。具体例は以下のとおりです。
- エンタメ・メディア
映画や動画配信、ゲームなどは、文化や言語の違いが顧客体験に直接影響する業界です。Netflixや任天堂の事例に見られるように、現地向けに翻訳や表現の調整を行うことで、顧客満足度を高めることができます。
- 化粧品
美意識は地域によって異なります。例えば、色白が美しいとされる地域もあれば、日焼けを健康的と捉える地域もあります。このような多様なニーズに対応するには、ローカライゼーションが有効です。
グローカリゼーションが向いているビジネス
グローカリゼーションは、基本的なニーズは同じでも、地域ごとに調整が必要な業界に向いています。具体例は以下のとおりです。
- 食品・飲料
基本の製品やビジネスモデルを共通化しつつ、味や香料を現地向けに調整することで顧客満足度を高められます。
- FMCG(日用品)
FMCGは世界中でニーズのある商品です。基本的な機能は同じでも、パッケージを現地向けに調整することで、生産コストの削減と同時に市場拡大を目指せます。
ローカル化が海外戦略の一つのカギ
海外進出や海外事業の拡大には、ローカライゼーションやグローカリゼーションが重要です。いずれも、現地のニーズや文化に対応するローカル化によって、競争力の強化や顧客満足度の向上が期待できるためです。海外進出を検討している企業様は、これらの戦略を参考にしてみてはいかがでしょうか。