もうすぐ台湾総統選挙!歴史や注目のポイント、日本企業への影響とは

2024年1月13日に、台湾総統選挙が実施されます。

次の台湾の総統に誰が選ばれるかで、中台・米台の関係性が変化する可能性も指摘されています。

しかし、「台湾総統選挙についてあまり知らない」という方も多いでしょう。

そこで本記事では台湾総統選挙の歴史・仕組み、注目のポイントを紹介し、日本企業への影響について考察します。

第1回台湾総統選挙は1948年

2024年の注目すべきポイントを解説する前に、台湾総統選挙の歴史について解説します。

台湾総統選挙の始まりは1948年で、前回までに15回実施されています。第1回から第15回の選挙方式と総統・政党は以下のとおりです。

選挙方式総統政党
1948年第1回国民大会蔣介石中国国民党
1954年第2回
1960年第3回
1966年第4回
1972年第5回
1978年第6回蔣経国
1984年第7回
1990年第8回李登輝
1996年第9回直接選挙
2000年第10回陳水扁民主進歩党
2004年第11回
2008年第12回馬英九中国国民党
2012年第13回
2016年第14回蔡英文民主進歩党
2020年第15回

「直接選挙」に変更してからは、民主進歩党(民進党)と中国国民党(国民党)が2期・8年を交互に政権を獲得している状態です。2024年に民進党が勝利すれば、直接選挙に移行後、初めて3期連続で政権を獲得することになります。

1996年から直接選挙に変更

台湾総統選挙が現在の直接選挙に変更されたのは、1996年の第9回からです。それまでは国民大会による間接選挙で選出していました。しかし、全土からの代表の選出が困難になったことから、1996年に直接選挙へと移行します。

直接選挙とは、国民の投票により多数決で選ばれる方式です。

また国民大会による台湾総統の選出は6年に1度でしたが、直接選挙では4年に1度に変更されました。加えて、台湾総統選挙ならではのポイントは以下の2つです。

1. 総統の任期

現行憲法では、総統の任期は連続2期・8年までです。そのため、現職の蔡英文総統は出馬できません。

2. 世論調査の公表期間

投票日の10日前からは、世論調査が禁止されます。つまり2024年1月3日以降は世論調査の公表・報道・拡散などを禁止しています。

台湾総統選挙2024の注目のポイント

2024年の台湾総統選挙で注目のポイントは、現政権の継承を掲げる頼清徳氏が選ばれるかどうかです。

蔡英文総統は親米路線で、対中強硬派として知られています。頼清徳氏は、「台湾はすでに独立国家である」と主張していたことから、現政権の対中強硬策を受け継ぐとみられています。

しかし、これらの言動は台湾と中国の緊張を高める大きな要因です。

台湾の民意も中国との関係の悪化を望んでおらず、2022年11月に実施された統一地方選挙では与党の民進党が惨敗しました。その責任をとって蔡英文総統は党主席を辞任しています。

頼清徳氏が選任されても中台関係は現状を維持するとみられるため、中国との関係改善は困難でしょう。場合によっては、中国による中台統一に向けた動きが活発になるかもしれません。

ポイントとなる3つのキーワード

台湾総統選挙では立候補者の対中・対米路線について注目が集まりがちです。その背景を理解するためには、以下の3つのキーワードがポイントとなります。

・1つの中国原則

台湾は中国の不可分の領土であり、一部であるとする主張のこと

・1つの中国政策

「台湾は中国の一部である」という立場を認知しているが、承認はしていないという米国の対中政策のこと

・92年コンセンサス

1992年に中国と台湾の当局間で「1つの中国」問題に対する合意のこと

※ただし、合意内容については中国と台湾で解釈が異なっています。

台湾総統選挙2024の3人の有力候補

2024年の台湾総統選挙における注目のポイントの1つは、与党に対抗するために野党が候補者を一本化できるかでした。しかし、野党の国民党と台湾民衆党は連合に合意するものの、結局は調整に難航し破談します。そのため与党の民進党に加えて、野党の国民党と台湾民衆党からそれぞれ候補者が立候補しました。

ここでは、第16回台湾総統選挙の有力候補の3人について解説します。

民進党:頼清徳

与党の民進党が擁立した候補者は頼清徳氏です。2010年に台南市長、2020年に副総裁に就任し、民進党の主席でもあります。頼清徳氏の政策の特徴は、蔡英文路線の継承を掲げていることです。蔡英文路線は中台関係の現状を維持しつつ、米国や米国の同盟国との関係強化を目指す政策です。

つまり親米派・対中強硬派のため、米台の関係は強化・維持されるものの、中台関係は冷え込む可能性があります。また頼清徳氏は候補者のなかで唯一、2025年の脱原発を掲げています。

国民党:侯友宜

国民党が擁立した候補者は新北市市長の侯友宜氏です。国民党の首席である朱立倫氏は立候補を見送っており、今回は侯友宜氏が出馬することになりました。国民党の特徴は、「親米・友日・和睦(対中融和)」の米中間の中立路線を掲げていることです。

「92年コンセンサス」は国民党の政権時代の合意で、同コンセンサスをもとに中国との対話・交流を促進するとみられています。

なお民進党の蔡英文総統は「92年コンセンサス」の合意文書がないことから、合意自体の存在を認めていません。台湾民衆党の柯文哲氏は、「92年コンセンサス」が台湾で市場を失っているとしています。

このことから、候補者のなかでも親中派なのが国民党の侯友宜氏です。

台湾民衆党:柯文哲

台湾民衆党は台湾の第3政党で、党主席の柯文哲氏が出馬を表明しています。2019年に民進党・国民党以外の選択肢の必要性を訴え、中道政党として台湾民衆党を設立しました。

民進党の台湾独立、国民党の中台統一は非現実的として、現状維持をしながら中国との戦争を回避するための対話を重視する考えです。その考えは若者や無党派層の支持を集めています。

また柯文哲氏は「92年コンセンサス」を受け入れていないものの、中台関係の改善を目指しており、候補者のなかでは侯友宜氏に次いで親中寄りです。

考えられる日本企業への影響

台湾総統選挙でどの候補が選ばれても、米台関係は現状維持を目指すと考えられています。そのため、すぐにでも日本企業に大きな影響を及ぼすとは考えにくいでしょう。

しかし、中国は「1つの中国原則」を実現するために、今後も中台統一を推進することに変わりありません。武力統一の可能性は低いものの、選ばれる総統によっては軍事力を背景に台湾に統一を認めさせることも考えられます。

もし中台統一がなされると、日本企業には大きな影響があります。例えば半導体産業では、日米台韓によるサプライチェーン構築の動きがありますが、統一するとサプライチェーンの混乱を招くでしょう。

このように日本企業においては、中台が統一した際の対策方法を検討しておくことが必要です。

2024年1月13日は台湾総統選挙を注目しよう

台湾総統選挙まであと1カ月を切りました。年明け早々に、今後4年間の中台・米台の関係を大きく左右する台湾総統が選ばれます。場合によっては、日本企業にも影響があるかもしれません。親米派の与党か、それとも親中派の野党が選ばれるかに注目してみましょう。

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