経済成長を続けるベトナムの幼児教育の現状と可能性

経済成長が続き、消費が伸びているベトナムですが、最近では少子高齢化を憂う情報を見聞きします。しかし実際には、保育・幼稚園が次々と新設され増えているという実態がありました。
そこで今回は、ベトナムの保育・幼稚園事情と教育市場のニーズについてお話します。

保育施設の不足と高まる教育熱

ベトナムでは出生率の減少が続いていることから、将来的に少子高齢化の懸念が高まっています。確かに15歳未満の人口構成比は年々その幅を縮小させ、2017年までの10年間で2.5%減少しました。
これは1992年に3.74だった特殊出生率が、直近では2.09にまで減少していることが影響しています。とはいえベトナムの人口は、今も増え続けています。2012年から2017年までの5年間で673万人増え2050年までは増え続けると予測されていますので、若年層の割合は減少しつつも、当面は子どもの数は増えていくことでしょう。

そこで必要となるのが保育施設です。子どもの増加に加えて、ベトナムでは共働きが主流なので、保育・幼稚園が新設されてもいまだにニーズに追いついていない状況です。

また所得が上がってきたベトナムの家庭は、子どもの教育に対しても高いレベルを求めるようになってきました。
特に英語教育を重視する家庭が多く、ホーチミンでは国立、私立を問わずどの園も英語に力を入れています。すべての園で英語教育が取り入れられていることから、家庭の経済力に関係なく英語教育には熱心だということがわかります。実際に現地でも、降園後の19時頃イングリッシュセンターへ子どもを送り迎えする多くの保護者を見かけました。

参考:
News Liner『ベトナムの特殊出生率2.09=少子高齢化の懸念も-ベトナム保健省 』
http://www.n-liner.jp/society/6148-ベトナムの特殊出生率%EF%BC%92%EF%BC%8E%EF%BC%90%EF%BC%99%EF%BC%9D少子高齢化の懸念も%EF%BC%8Dベトナム保健省.html

経済産業省『医療国際展開カントリーレポート ベトナム編』P5
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/countryreport_VietNam.pdf#search=%27%E3%83%99%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%A0+%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E6%8E%A8%E7%A7%BB%27

ベトナムの保育・幼稚園事情

ベトナムの保育・幼稚園のうち4割は国立園、6割が私立園です。国立園の新設には限界があり、この2~3年は国立園の4%増に対し、私立園は12~13%増えているので、今後も私立園が増えていくと考えられます。保護者側にしてみると選択肢が増えることになり、人気の高い園も出てきています。

国立園

区内に1~2園がモデル園に認定され、1回1時間の英語授業が週2~3回あるほか、タブレットやタッチスクリーン式の教材ソフトウェアを導入するなど、教育にも力を入れています。
保育料は1万円程度と私立より安いうえに、満足できる教育が受けられるので人気があります。しかし国立園自体は多くないので、入園できない人も出ています。

私立園

私立園の中でも保育料が一番高いのが「インターナショナルスクール」です。英語教育を重視する保護者のニーズに合い、保育料が月10万円以上にも関わらず人気です。またインターナショナルスクールは2018年の法改正によって、ベトナム人入園枠がそれまでの10%から50%へ緩和され、ベトナム人家庭にとっては入園しやすくなりました。
その他にも、英語で保育をする「インターナショナルプログラム」、「バイリンガルスクール」などがあります。

数が多い私立園にはハイエンドとローエンドの園があり、どの園に子供を預けるかは各家庭の経済状況によってかなり差が出ています。
特にホーチミンにはレベルの高い教育を求めて私立を選ぶ保護者が多いので、ハイエンドの園はホーチミンの2区と7区、中心部の1区に集中し、富裕層が住んでいるエリアに増えています。

参考:
日本貿易振興機構JETRO『ビジネス短信 外資系教育施設の設立規制が改正(ベトナム)』
https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/09/59235030f9477621.html

差別化している私立園がトレンド

私立園が増えてくると必然的に差別化され、多くの私立園が教育方法やサービス、イベントなどの情報をFacebookなどのSNSを活用してPRしています。

教育熱心なベトナムでもっとも訴求ポイントとなるのは、教育方法です
ベトナムでは今、モンテッソーリやイタリア発のレッジョ・エミリア教育が人気がありますが、その他にもシンガポール式や韓国式など、それぞれの園が推奨する教育方法を押し出しています。ベトナム人向けに日本式教育を取り入れている園もいくつかあり、教育方法に重点を置いて選択できる私立園が主流になっています。

日本企業の取り組み例

日本式教育のコンサルティングShoPro Vietnam ホーチミン

ShoPro Vietnam

ベトナムで教育熱が高まる中、2018年に㈱小学館集英社プロダクションが「ShoPro Vietnam」をホーチミンに設立し、現地の保育・幼稚園向けに日本式教育のコンサルティングを始めました。既に日本式教育を選んだベトナムの園がコンサルティングを受けて、いくつか開園しています。

教育方法には特徴があり、たとえばシンガポール式教育は学習能力や能力開発が中心ですが、日本式教育は学習よりも心の成長を重視した教育方法と言われています。このような違いが、詰め込み式になりがちな教育に疑問を持った保護者からニーズがあるようです。

また親日国であるベトナムの本屋では日本の漫画や絵本がたくさん並び、特に「ドラえもん」や「名探偵コナン」が大人気です。こうした日本の漫画や絵本などがきっかけとなって、日本式教育をポジティブに受け入れる土壌ができていると思われます。

ベトナム ドラえもん商品
ベトナムの本屋 風景 名探偵コナン

経済成長が続くベトナムは教育熱心な家庭も多く、所得が上がれば今以上に教育にお金を使うことが予想できます

今回、ホーチミンでの調査を通して子どもの増加と保護者の教育熱に触れ、改めてベトナムの教育マーケットの成長性を感じました。

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