国境の町:ポイペトから見るカンボジア経済発展の可能性

日本の国土の約2分の1ほどの広さの国、カンボジア。現在、カンボジアは東南アジアの企業進出先として、世界中の企業から注目を集めています。
今回は、カンボジアが注目されている理由とその現状についてお伝えします。

企業進出国としてカンボジアが注目されている2つの理由

現在、東南アジアへの進出国としてカンボジアが注目を集めている理由は、大きく2つあると考えられます。

タイからベトナムまでをつなぐ「南部経済回廊」

2015年、タイのバンコクからベトナムのホーチミンまでをつなぐ、約1000kmもの「南部経済回廊」が開通しました。

南部経済回廊
グローバルニュースアジアより抜粋

この回廊には、陸路だけではなくメコン川を横断するための橋も作られました。「つばさ橋」もそのうちの一つで、日本も経済支援をし、建設にも日本企業が携わりました。メコン川は乾期と雨期とでは水位が7mも変化しますが、それらを計算した上でいつでも渡ることのできる橋が作られたのです。

これまでは、このような川がある場所では船で移動をしていましたが、回廊が完成したことにより、自転車、オートバイ、車などさまざまな手段で移動することが可能になりました。

つばさ橋
つばさ橋(カンボジア経済より抜粋)

「南部経済回廊」ができたことにより、今後、タイ、カンボジア、ベトナムにどのような変化がもたらされるのかについては、今もなお、世界中の人々が注目をしているポイントです。

「タイ・プラスワン」という動向

もう一点は、「タイ・プラスワン」という視点です。
カンボジアの西側に隣接するタイは、2000年以降、製造業の拠点として多くの工場が立てられてきました。

しかし、①タイ国内の道路が国境まで整備されたこと②タイ周辺国のラオス、カンボジア、ミャンマーの方が、タイに比べて人件費が低いこと③2015年1月1日までに、タイ、ラオス、カンボジア、ミャンマーなどの国々が一部例外を除く品目について関税を撤廃した※1こと、などの理由から、タイ周辺国に工場を移したり、一部の工程だけタイ周辺国に切り出すなどの動きが見られるようになりました。

このような動向は「タイ・プラスワン」と呼ばれ、東南アジアに進出する企業から注目を集めています。

※1:「ASEAN共通効果特恵関税(CEPT)」
ASEAN域内の関税率は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイの先行加盟6ヵ国が2010年1月1日付で一部例外を除く原則すべての品目について実施済み。ASEAN新規加盟国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)は、2015年1月1日付で一部例外(全品目の7%まで)を除く品目について関税を撤廃。残る品目の関税撤廃についても2018年1月1日までに実施予定。(JETRO参照

カンボジアとタイとの国境を訪れて

このような背景を理解した上で、今回はカンボジアとタイとの国境沿いにある、ポイペトという町を訪れました。

ポイペト
http://scsajapan.s202.xrea.com/volunteer.htmlより抜粋

まず、国境ゲートを視察しました。そこは、それぞれ1車線しかなく、人、リヤカー、バイク、一般車両、貨物車両も同じゲートを通るため、ひどく渋滞していました。

国境ゲート
人もリヤカーも車両も同じゲートを通る
国境ゲート
国境通過を待つトラック
国境ゲート
国境ゲートの様子1
国境ゲート
国境ゲートの様子2

国境を陸路で渡ることができ、関税がかからなくなっても、渋滞してしまっては輸送に時間がかかり、余計なコストがかかってしまいます。また、人も通るため、排気ガスなどを考えると環境面においても課題が残ります。

そのような課題を解消するため、現在、新しくバイパスが建設されている最中です。

現地ヒアリングの中で、この新バイパスは今年中に完成するのでは、という話を耳にしたため、早速新バイパスの視察に出かけました。しかし、カンボジア側からは、バイパス建設の様子が分かりづらく、工事の進捗がよくわかりませんでした。

そこで急遽予定を変更し、国境を越えて、タイ側からも視察を行うことになりました。

国境を越えて新しいゲートに伸びるタイ側の新バイパスを訪れると、道が綺麗に整備されており、トラックも走りやすい状況にあることが分かりました。一方、ゲートができると思われる国境沿いは川と野原が広がっており、橋の建設はまだ始まっていませんでした。この状況からすると、今年中の完成はまだ難しそうです。

国境バイパス
タイ側新国境用バイパスの様子

ポイペトの中には、経済発展を目的として法的、行政的に特別な地位を与えられている経済特区「SEZ(Special Economic Zone)」がいくつかあり、その場所には工業団地が立てられています。

経済特区内のインフラについては、すでに整備が進んでおり、比較的進出しやすい環境が整ってきています。

ポイペトに経済特区ができる前、ポイペトという町に地理的な優位性があると判断し、実際に進出をして成功を収めている日本企業もあります。この日本企業は、経済特区、工業団地ができる前に進出したため、インフラ整備を独力で行ったそうです。

今回の調査では、6業界30社以上の企業、業界団体、専門家などのさまざまな方を対象にヒアリングを実施しました。

このように、現地に行く際にはできる限りいろいろな立場の人に会うようにしています。同じ事象であっても、立場が異なればそれに対する認識や意見は必ず違うからです。時間の許す限り、多くの方々から話を聞くことで、より正確に現地の状況を理解することができるようになります。

現代は、インターネットで検索をすれば、あらゆることが分かる時代です。しかし、その情報を現地の背景や状況を理解しないまま鵜呑みにしてしまうと、誤った解釈をしてしまうリスクがあります。だからこそ、現地に足を運び、現地にいる方々からお話を聞くことが何よりも大切なのです。

そして、企業進出において成功を収めるためには、今回、ポイペトを訪問したように他の企業が進出していない地域に早くから目を付け、調査を通じて進出の可能性を見出すことも重要なポイントと言えるでしょう。

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