インドネシアへの進出・展開において重要な宗教と生活習慣からのアプローチ

インドネシアは世界最大のイスラム教徒を抱える国であり、そのほかキリスト教やヒンドゥー教などが混在する宗教国家です。

日本ではあまり意識しないことかもしれませんが、海外進出・展開のための調査を行うと、宗教観やそれから派生する価値観の違いなど、私たちの想像を超えるような市場性の国だったということはよくあります。

また、宗教だけでなく、日常生活での様々な場面において日本とは全く考え方が異なります。

こうした宗教・価値観の違う国ではどのようなビジネス戦略を策定すればよいのでしょうか。

インドネシアの宗教

インドネシアには上記の通り、宗教が多様です。それぞれの宗教の割合を見てみると、イスラム教が約90%、キリスト教が9%、ヒンドゥー 教が1%、その他は仏教、儒教などとなっています。

これを見てお分かりの通り、インドネシア全体における消費者の多くはイスラム教徒(ムスリム)に当たります。

インドネシアにビジネス進出・展開する際は、マーケットインの前段階の準備として彼らの宗教習慣を理解しておくことが必要不可欠となります。

何故なら、宗教による価値観・文化の違いを理解せず、日本の価値観でマーケティングをしていては、うまくニーズをつかむことができていないため製品が売れにくいからです。

そのため、以下ではそれぞれの宗教の特徴を先に見ていきます。

その次に宗教を踏まえたうえでの生活習慣を説明し、すでに進出している日系企業も例に挙げながら、インドネシアのマーケティングにおいて注意すべきことを述べていきます。

イスラム教に合わせた進出・展開

イスラム教は主神アッラーを敬い、預言者であるムハンマドを通して神の命令が書かれた教典コーランに基づいて生活をする宗教です。

コーランの中には六信五行というムスリムがすべき行動が定められています。

六信とは神、天使、啓典、預言者、来世、天命の6つを崇拝する事を意味し、五行とは信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼の5つの行いをしっかり実行することを表しています。

この六信五行を徹底して行い、善行を積むことで死後は天国に行くことができ、行いが悪ければ地獄に落ちて苦しみを受けるとされています。

これらの行いの中でも特にビジネスに関わってくる断食と礼拝について、以下で詳しく説明します。

断食は、イスラム歴のラマダンと呼ばれる月に1か月間、日の出から日の入りまでの間、飲食とその他すべての欲望を断つことです。

断食は信仰をより深めるため、また、貧しくご飯が食べられない人の気持ちを理解するために行います。

断食期間の日中はレストランやその他のお店は閉められていることがあり、ムスリムが多いインドネシアは全体的にビジネスペースが遅くなります。

しかし食事をとることが許されている日の入りから日の出までの間はレストランの予約はいっぱいで、その時間の食事はとても楽まれています。

断食期間が終わった後、インドネシアでは「断食明け大祭(レバラン)」という連休があります。

これは日本の正月のようなもので多くの人が実家に帰省して家族団らんを過ごします。

そのため、この時期には国民の大移動が起きます。そして市場やスーパーマーケット、その他多くのお店で人があふれかえり、大変賑やかになります。

このレバランではいつものとは異なる食習慣があります。

それは、「デーツ」と呼ばれるナツメヤシのドライフルーツや、ヤシの葉で編んだ物の中で蒸されたご飯「クパット」を食べることです。

これらの食べ物は消化器官にやさしい食べ物です。断食直後にいきなり暴食になると消化器官に悪いため、まずはこうした食べ物を食べてから普段の食事に戻るのが文化の一つとなっています。

賑やかな市場には数々の食品が並んでいますが、豚肉やお酒は一切ありません。

その理由はムスリムは豚肉を食べること、アルコールの消費を主神アッラーによって禁じられているからです。

イスラム教では豚は不浄な物とされており、食べることは勿論、豚の成分が入った化粧品や医薬品も使用できません。

アルコールに関しては、飲酒、アルコールが含まれているすべての物が禁じられています。

特に飲酒は時として人の思考力を低下させ、暴力的になり、信仰の精神を奪うものになります。そのため、アルコールを飲んではいけないことになっているのです。

酒以外では例えばアルコール除菌スプレーなども使うべきではないとされています。

これについては人々の信仰の解釈によって違いがあるため、一概には言えない部分もありますが、一般的なイスラム教上は禁止されています。

これら二つ以外にも主神アッラーが禁じた物はあります。

それらを「ハラム」と言います。これは禁じるという意味です。一方「ハラル」と呼ばれる、神が許した物もあります。ムスリムが食事をする際はこのハラルフードしか食べることができません。ハラムよりハラルフードの方がはるかに多いため、食品、生活用品における国内のイスラム教地域でのマーケット進出を考えている場合は、まずはハラムな物を覚えておく必要があります。

ちなみに、こうした宗教に合わせてインドネシアに進出している日系企業の例でいうと吉野家があります。

インドネシア国内の主要都市に続々と進出している企業の一つです。

吉野家の売りとなっている「牛肉」や「豚肉」は宗教によって食べられない人がいます。そこでどの宗教の人でも食べられるチキンに変えたメニューなど工夫を凝らしたものが沢山あります。

インドネシアジャワ島ジョグジャカルタに進出した吉野家

インドネシアジャワ島ジョグジャカルタに進出した吉野家

 

礼拝は、清潔な場所もしくは神聖なモスクで1日5回メッカの方向に向かって礼拝することです。

礼拝する時間は夜明け、正午、午後、日没、夜となっています。

礼拝の時間になると、たとえ仕事中でも中断し、清潔な場所かモスクに移動して、メッカの方角に向かって礼拝をします。

モスクはイスラム地域ではあらゆるところにありますが、家などでお祈りをしたいという人も中にはいます。

そうなると家の中をさぞかし清潔にしているのではないかと思いますが、実際インドネシアの家々は日本と比べるとあまり清潔であるとは言えない環境が多いです。この点については次章の衛生面の考え方のところで詳しくお伝えします。

インドネシアのバリ島デンパサールの空港近くにあるモスク

インドネシアのバリ島デンパサールの空港近くにあるモスク(※バリ島はヒンドゥーが島民の9割を占めるがイスラム教のこうしたモスクも都心部では見かける)

 

イスラム教には日本では考え難い、いろいろな決まりに従って生活している人々が沢山います。

このような生活は宗教をあまり意識しない日本人にとって、信じがたいことであり、宗教文化を受け入れてのマーケティングは難しいと感じることがあると思います。

しかし、上記のインドネシアにおける宗教事情をしっかり理解し、彼らの信仰を尊重してマーケティングをしていくことでその難点は徐々に良いアイデアに生まれ変わってくるでしょう。

次の章では宗教的な理由も含んだ生活習慣における日本との違いについてお伝えします。

生活習慣における日本との違い

今回私たちは、ジャカルタに住む中高所得者層を訪ね、生活習慣についてのヒアリング調査を行いました。その中で宗教から派生する価値観や宗教以外の生活習慣から見えてきた、日系企業の生活用品メーカーが進出するにあたって大きなヒントとなりうる事柄がありました。そのポイントを以下でお伝えします。

衛生面に対する考え方

インドネシアの人たちは、日本人に比べてそこまで清潔な環境に関して気を配っているわけではありません。

中高所得者層の家庭であっても自らは進んで掃除はせず、月1回のペースで清掃業者に依頼するだけという家庭や虫が家の中に入ってきてしまっても全く気にしない家庭が多々あります。

このように日本と比べると家庭内の衛生意識の違いがあります。温暖な気候である関係上、虫が多い地域なので多少屋内に入ってしまうことは仕方がない部分がありますが、入ってくる虫を気にして排除し、きれいな家内環境にしたいとは皆あまり思っていないようです。

しかし、中高所得者層でなおかつ小さい子どもがいる、あるいは病気の家族がいる家庭では、「子ども(家族)のために環境を何とかしたい」と清潔な環境を手に入れたいという意識が高いということが分かりました。

また、上記にも書きましたが、イスラム教での礼拝では清潔な場所が必要とされています。

イスラム教徒の彼らにとって、宗教的な儀式の場では清潔な空間を求めたいという気持ちがあることもヒアリングを進める中で分かりました。

このことから、宗教的儀式を行う部屋や子供のいる家では、清潔な空間を保てる生活用品の需要があることがわかります。

しかし、気持ちがあるだけで、なかなかこまめに掃除をするという行動に移せない人が多くいる問題があります。掃除のやり方やどんな製品を使えばよいのかを知らないパターンがあるのです。

食生活への意識の違い

インドネシアでは、食事は午前中にその日に食べるものを作り置きするため、1日に何度も調理をすることはありません。

食材の調達方法は市場へ行くか、売り子がリヤカーを引いて売りに来たものを買います。

そして買ってから家で保存する際には冷蔵庫を使用します。

しかし冷蔵庫は「冷えればいい」という感覚で、食品同士の匂いが移らないようにするなどの対策は特にしていません。

つまり、日本の冷蔵庫でスタンダードとなりつつある消臭や抗菌といった機能への意識は全くないというのが現状です。

そのため、彼らが意識をしていない機能性を全面的にアピールしてビジネス展開を策略するのではなく、ニーズに合わせて「冷えやすい」「腐りにくい」といったような機能性をアピールポイントにしていく方が効果が高いと言えます。

そうしたポイントはその他の生活用品においても言えます。

以下の写真はバリ島の主要都市デンパサールにあるスーパーマーケットで売られていた、消臭、抗菌作用のある食器棚シートです。

ダイソーなどの日本の100円ショップでもよく売られているPAL  Corporationの製品です。

店員の方に聞いたところ、食器が傷まないように敷くシートを求めてこれを買う人はたまにいますが、このパッケージに書いてある消臭や抗菌、防カビといったことを気にしてわざわざこれを買いに来る人はいないとのことでした。

この点からもこうした機能性はあまり需要がないように感じられます。

しかし、たとえ消臭などの効果に少し関心のある人がいても、インドネシア現地の人はパッケージに日本語で書かれた製品の効果を理解できないため、こうした売り方はあまり効果的ではありません。

何か他社の製品と違うアピールポイントかつ現地の需要にもマッチしていることをプロモートしていく必要があります。

インドネシア バリ島デンパサールのとあるスーパーマーケットにて

インドネシア バリ島デンパサールのとあるスーパーマーケットにて

生活用品の選び方

また、彼らにどんな風に生活用品を選ぶのかという質問をしたところ、現地女性からの意見として「私は女だからどのメーカーがよいかなどは分からない。『これがいい』と言われたらそれにする」という意見がありました。

男女限らず、製品のメーカーに詳しい人もいれば、そうでない人もいることは当然ですが、インドネシアで一般的に女性はメーカーに関してあまり詳しく知らない傾向が高いということが分かります。

生活用品の購入者は比較的買い物に来ている女性の方が多いため、生活用品のプロモーションを行う際には、パネルなどの店頭に置くツールよりも、プロモーターが商品の特徴を理解して現地の人にその魅力や特徴を正しく伝えられるようにすることに注力した方が効果的であると考えられます。

また、生活用品の分野でインドネシアに進出している日系企業を以下で紹介いたします。

洗剤などの様々な生活用品を手掛けるライオンはインドネシアを含む東南アジアの進出に積極的です。

洗濯洗剤や食器洗剤、その他日用品分野でビジネスを拡大させています。

そうした商品の中でも特に「ママレモン」という商品名で、日本でも馴染みにある食器洗剤がインドネシア向けに多く作られて売られています。

パッケージにも日本語からインドネシア語で製品の効果などが書かれています。

パッケージの影響からか購入者もインドネシアで一般的に売られている製品とさほど変わらないため、「外国の商品」という変な抵抗感を感じずに買うことができます。そして品質が良いとインドネシアの通販サイト全体での口コミ・評価も高くなっています。

日本とインドネシアのママレモンの違い

日本とインドネシアのママレモンの違い

 

ライオンの他に同業界の花王もインドネシアに進出しています。

コンビニやスーパーマーケットではロリエの生理用品が商品棚に並んでいます。

これは日本でもCMなどでよく目にする人気製品です。

値段も他社と比べてリーズナブルなのでインドネシアの女性にとって手に取りやすいことも人気の理由です。

また、AKB48のグループであるJKT48が花王インドネシアのロリエの広告に起用されたことでも国内でロリエが有名になった理由の一つです。こうしたイメージアップも必要です。

インドネシアの紙おむつ

インドネシアの紙おむつ

メイドを雇う文化

インドネシアの家庭ではメイドを雇うことが一般的です。

そのため、インドネシアで生活用品を売る際には、製品を使う人は家人なのかメイドなのかを考える必要があります。

なぜなら、ヒアリングの中で聞いた意見として「メイドはすぐ壊してしまうので安いものでいい」「メイドが使うものであれば高機能でなくていい」というものがあったのです。

インドネシアではメイドの文化が根付いているとはいえ、メイドの質はいいとは言えないのが現状です。

特に高所得者の家で働くメイドは、勤務態度が良くない人も多く、物を大切に扱わずに壊してしまったり、高級品を盗むといった事件が頻繁にあるそうです。

そのため、買う人である家人に製品のアピールを訴求しても届かず、うまくマッチしないという懸念があります。製品の使われ方やシチュエーションをイメージして、彼らのニーズにあった製品を提案できるかどうかがポイントです。

まとめ

インドネシアでのビジネス進出・展開において重要なことを宗教的なポイントと、生活習慣のポイントの2点からお伝えしてきました。

宗教面では礼拝や断食といった仕事の効率性や生活の利便性より宗教の教義を優先させるなど、私たちからすると一見非効率だと思う場面があります。

さらに、生活面における習慣の違いでは、不衛生な環境を清潔にできる方法はいくらでもあるのに行わない、きれいにするやり方を知らないといった既存の製品で解決する知識がないということがあります。

インドネシアの生活に日本の生活用品が入り込むことにより、彼らの課題を解決できる、ビジネス進出の可能性は大いにあります。

しかし、宗教観や価値観の違いにより、そのまま日本の製品を持ち込んでもうまくフィットしない可能性は高いでしょう。

しかし、国や地域によっては宗教ファーストでマーケットに製品を出していく必要があります。

そして彼らの生活習慣を視察しながら、戦略を変えていく事が大事です。

それが、海外における市場性を理解するということではないでしょうか。

例えば、ターゲットとなる国や地域に合わせて製品のコンセプトやネーミング変えてみるいうのも手ではないでしょうか。

プルーヴでは、本質的な市場理解を行い、海外事業を前進させる施策を一緒に考えます。海外進出・海外展開で悩みがある方は、ぜひご相談ください。

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