世界第一位のICT化社会シンガポールの現状と課題

東南アジア10ヵ国から成るASEAN(東南アジア諸国連合)。その中でもシンガポールは、一番の先進国と言われています。その理由を、シンガポールの「ICT化」という視点で見てみましょう。

「ICT」とは

昨今、よく耳にする「ICT」という言葉ですが、これは「Information Communication Technology」の頭文字をとった略語で、それぞれの単語を直訳すると「情報伝達技術」 となります。つまり、「情報技術を使った、コミュニケーションの方法」という意味合いです。

「ICT」の類義語として「IT」という言葉がありますが、これと「ICT」との違いは、「Communication 」という言葉の有無です。
また、最近「IoT」という言葉もニュースなどで聞く機会が増えました。これは「Internet of Things」の略称で、「モノのインターネット化」、すなわち「さまざまな物事がインターネットと繋がること」を指します。

つまり、以下のような違いがあります。

  • ICT:情報伝達技術【コミュニケーションの手段】
  • IT:情報技術【技術そのものを指す】
  • IoT:モノのインターネット化【物事がインターネットと繋がること】

今回は、シンガポールの「ICT化」、つまり「コミュニケーションの手段」に注目します。

シンガポールにおけるICT化推進の背景

シンガポールがイギリス統治下だった1948年、シンガポール国籍を証明し、不法移民を排除する目的で国民登録番号制度が開始されました。

現在、シンガポール国民は、国民登録番号カード「NRIC(National Registration Identification Cardの略称)」を所持しており、これがシンガポール社会のICT化を進めるにあたり、重要な役割を担っています。

役所の手続きにおけるICT化

役所の窓口の様子

例えば、役所での手続きは徹底的にデジタル化されており、シンガポール国民は役所に出向くことなく、パソコンやスマートフォンで住所変更や婚姻届などの手続きをすることが可能です。

その際には、「Sing Pass」と呼ばれる、シンガポール政府の電子サービスにアクセスするための一般的なオンラインパスワードを利用します。また、政府の電子サービスと国民登録番号も紐づいていることから、政府へのさまざまな申請手続きを同一IDとパスワードで行うことができます。

なお、役所に問合せをしたい場合には窓口で担当者に尋ねることもできますが、将来的にはそのような体制もICT化されていくことが予測されます。

料金の支払いにおけるICT化

料金の支払いに関しても、ICT化が進んでいます。

シンガポール国内には支払いができる「AXS Station」という、ATMのような機械が設置されており、専用のカードを使って、税金、チケット、電話代などの支払いをします。

現金を扱うと両替などの手間が発生することから、カードを使って支払いをする仕組みになっています。

AXS Statiion
AXS Statiion
AXS Statiion画面イメージ
AXS Statiion画面イメージ

それではなぜ、シンガポールではこのようにICT化が進んでいるのでしょうか。

それは、シンガポールの国土面積と人口に理由があります。

シンガポールの国土面積は、東京23区と同程度の広さです。また人口は、約561万人。国土が小さく人口も少ないため、国としての生産性を高めるためには、国民がより多くの時間を生産性の高い仕事に充てる必要があります。そのためにシンガポール政府は、ICTを活用し、役所で働く人の時間の効率化と国民の手続きにかかる時間を省くことに注力しているのです。

このような取り組みを行った結果、シンガポールは、世界139ヵ国を対象とした「ICT活用度ランキング」で1位となっています。

https://www.youtube.com/embed/RKXcZoMd9ng?rel=0

<出典>WEF – The Global Information Technology Report

ICT化推進国 シンガポールが抱える課題とは

高齢者 シンガポールICT

このようにICT化が進んでいるシンガポールですが、新たな課題に直面しています。

まず、政府の電子サービスはセキュリティを強化していく必要性が出てきており、今後政府が対応を検討していくことが予想されます。また、「Sing Pass」を使った不正ログインも発生しています。例えば、高齢者の「Sing Pass」を身内が勝手に入手し、口座から預金を引き落とすなどのトラブルが報告されています。

高齢化が進むシンガポールでは、電子サービスのセキュリティ強化と同時に、高齢者のICTリテラシー向上が課題となっています。

積極的にICTを導入し、生産性を上げているシンガポール。

シンガポールへの進出を検討する際は、徹底的な効率化を図るシンガポールのICT事情を把握することが、成功のカギとなりそうです。また、高齢化や人口減少によって今後、日本が直面するであろう課題に対しても、シンガポールの現状から学べることがあるのではないでしょうか。

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