パリ・ニューヨークのグルテンフリー事情と海外進出の際に抱くイメージの落とし穴

今回は、パリとニューヨークで実施した調査から、この2つの都市のグルテンフリー市場の現状と、海外進出の際の注意点について考察したことをお伝えします。

グルテンフリーとは

グルテンフリーとは、小麦粉に含まれるタンパク質であるグルテンを除去した製品、またはその製品を食べる食生活を指します。元々はグルテンに対して免疫反応を起こしてしまう病であるセリアック病の患者食として注目されていたのですが、2010年以降にプロテニスプレイヤーのノヴァク・ジョコビッチがパフォーマンス向上の為に取り入れた食事法として知名度を高め、健康感度の高い人たちの間で世界的なブームを起こしています。それにともない、グルテンフリー製品は欧米を中心に増え続け、主に健康志向の人たちから支持されています。

 
今回の視察では大まかな流通構造、価格帯、プレイヤー、代理店、どんな人が買ってくれそうなのかなどを見て把握することがミッションでした。また、コネクションのある方と関係性を築くために、現地の人と会うことも大切な仕事となりました。

パリ市民の価値観と流通事情

パリでは、パンは皆に愛される国民的フードです。特にバゲットはパリのみならず、フランスの国民食といっていいほど食べられています。実際、パリのパン屋にはバゲットを求める人が朝から集まり、長いバゲット2〜3本購入し、その場でちぎって食べるという光景を目にしました。

パリ ニューヨーク グルテンフリー

 
さらに、今回のパリでの調査で驚いたことは、フランスではパンは数百年にわたって続く歴史ある食べ物であるにもかかわらず、ベーカリー向けに穀粉原料を卸す代理店が無いということです。では、どのように原材料が流通しているかというと、小麦粉のメーかーから直接卸しています。これは昔からのやり方であり、パンは原材料メーカーにコンタクトを取り、それを受けてメーカーは週に1〜2回自社のトラックで原材料をパン屋まで運んでいます。ということは、仮に日本のグルテンフリー製品やその原材料がパリに進出しても、それだけを直接メーカーから買うということはコストや手間がかかってしまうことから、実現しにくいのではないかと予想されます。

パリではどんな人がグルテンフリー製品を求めているのか

パリの人はパンが大好きなので、「小麦だからこそ出せる味」に強いこだわり持っているパン屋が多く存在します。また、100%グルテンフリーの商品を作ろうとなると、他の原材料と混ざっていけないので、生産ラインを完全に別にしなければならず、相当なコストや手間がかかります。だったら、最初から100%グルテンフリーのものだけを取り扱うお店を作った方が早いということで、グルテンフリー専門店が増えています。もちろん、価格はグルテン製品より高く設定してあります。

 
しかし、驚いたことにグルテンフリー専門ベーカリー店に足を運んでみたところ、そこかしこで英語が聞こえて来たのです。お客さんに声をかけてみると、オーストラリアから来た、アメリカから来たと回答していただきました。反対に、フランス語はほとんど聞こえず、パリ市民が訪れているという印象が感じられませんでした。

 
それでは、パリで小麦粉を食べられない人はどうしているのでしょうか。あくまで私たちの推測ですが、もしかしたら彼らはパンを食べることを諦めているのかもしれません。

ニューヨークの流通事情と多様性

次に向かったニューヨークを擁するアメリカは、国土が日本の約25倍~と広いので、各地域毎に穀粉原料卸しが存在し、例えばカリフォルニアで収穫されたトウモロコシ粉も代理店を経由してニューヨークのベーカリーが仕入れる流通構造になっています。また、ニューヨークのでは原材料の代理店が存在し、様々なメーカーから原材料を買い、パン屋へと卸しています。

ニューヨーク 小麦

 
また、ご存知の通りニューヨークには様々な人種の人々が世界中から集まっています。なので、私たちアジア人が飛び込みで調査に行っても快く歓迎してもらい、パンを振る舞って頂くことが多かったです。パリの取材時とはまた違う、ニューヨーカーの気質や多様性文化を実感しました。

ニューヨークではどんな人がグルテンフリー製品を求めているのか

ニューヨークではどちらかというと、セリアック病の患者がグルテンフリー製品を求めているのではなく、小麦を避けた方が健康的だと考える人がグルテンフリー製品を求めている傾向があるようです。疾病に対する食事療法とは異なるため、100%グルテンフリーにこだわる人は少なく、グルテンフリー製品をグルテンを含む製品と同じ生産ラインでつくっていても、ちょっとくらい小麦が混じっていても構わないという考えのようです。実際、小麦で作られた製品とグルテンフリー製品を混在して販売しているカフェやパン屋を多く見かけました。

現地調査から見えてきた海外進出の際の注意点

今回の調査で得られた情報は、主に以下の二つです。

 
一つは、パリでは保守的で歴史を重んじる国民性があり、また製パン業界・流通業界の構造として代理店という存在がないため、日本からグルテンフリー製品・原材料が進出するには手段が限られたものになるのではないかということです。

 
もう一つは、世界的にグルテンフリー製品がブームになっているという情報があるにもかかわらず、パリではグルテンフリー製品が現地の人にあまり受け入れられていないという現状や、ニューヨークでは健康食品のような位置づけになっているなど、事前に抱いていたイメージと実情は違う可能性もあるということです。

 
どちらの情報にも共通することは、新事業の際には、流行や情報に踊らされることなく、綿密に調査項目を策定し、実情を把握すべきということです。

 
今回のお客様のように海外の調査経験がないお客様にも、私たちプルーヴは綿密な調査とコンサルティングでお客様の海外進出を成功へと導きます。ぜひ一度ご相談ください。

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