CCSとは?世界が注目するCO2削減技術と各国の最新動向

2024年の世界の平均気温は、1891年に統計が開始されて以来、過去最高を記録しました。このように、地球温暖化は確実に進行しており、気候変動への対策が急務となっています。 

しかし、再生可能エネルギーの導入や電気自動車の推進だけでは、温暖化の要因である二酸化炭素(CO2)の削減には限界があります。そこで今、世界的に注目を集めているのが「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」という技術です。 

本記事では、新規事業のアイデアを探しているビジネスパーソンに向けて、CCSの基本的な仕組みや注目される背景、世界各国の最新動向をわかりやすく解説します。 

参考:国土交通省「世界の年平均気温」 

CCSとは?基本概念と仕組み 

CCSとは、排ガスや大気中からCO2を分離・回収して貯留する技術です。工場や火力発電所などで発生した排ガスからCO2を分離・回収し、地中深くにある安定した地層に閉じ込めることで大気中への排出を防ぎます。 

CCUSとの違い 

CCSとよく似た言葉に、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)があります。 CCUSは、日本語では「二酸化炭素の回収・利用・貯蔵」を意味します。CCSとの大きな違いは、回収したCO2を有効活用する点です。

例えば、古い油田から残存する原油を取り出す際に、CCUSが使われています。回収したCO2を地下に注入し、その圧力で原油を押し出します。注入されたCO2はそのまま地中に貯留されるため、原油の増産とCO2の削減を同時に実現できるのです。 他にも、CO2を燃料やプラスチックなどにして有効活用する方法も考えられています。 

CCSが注目される背景 

地球温暖化の進行を抑えるため、世界各国でCO2排出削減の取り組みが加速しています。
そうした中で、CCSは日本国内のみならず、世界でも注目されている技術です。その背景は次のとおりです。 

パリ協定による気候変動対策(世界の視点) 

2015年に採択されたパリ協定では、産業革命前と比べた地球の平均気温の上昇を2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求することが国際的な目標として掲げられました。 

これを受けて、120を超える国と地域が「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」という目標を宣言しています。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量に回収量を差し引いて実質ゼロにする考え方です。 

カーボンニュートラルを達成するには、排出量を抑えるだけでなく、回収量を増やす必要があります。そこで注目されているのがCCSで、国際エネルギー機関(IEA)も2050年に脱炭素化社会を実現するにはCCSが不可欠としています。 

2050年カーボンニュートラル宣言(日本国内の視点) 

日本では2020年に、政府が「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」と宣言し、取り組みが本格化しました。それ以来、官民が一体となり再生可能エネルギーの導入や技術開発に取り組んでいます。 

その中でもCCSは重要な柱の一つです。経済産業省は、2023年度から「先進的CCS事業」の支援を開始し、CO2の分離・回収から輸送、貯留までを一体的に支援しています。2024年度には、この事業の対象として9件のプロジェクトが選定されました。 

政府はこの取り組みを通じて、2030年までに年間600万~1,200万トンのCO2の貯留を目指しています。 

世界各国のCCS最新動向 

世界中でカーボンニュートラルの実現に向けた動きが活発になる中、多くの国がCCSの開発を進めています。ここでは、世界各国におけるCCSの最新動向を紹介します。 

米国 

米国は、2035年までに電力を100%クリーンエネルギーで賄うことを目指しています。CCSは、その実現に向けた重要な技術の一つに位置づけられています。

こうした中、2022年3月、米国の石油大手エクソンモービルは、テキサス州ベイタウンの複合施設で水素製造とCCSを計画していることを発表しました。この計画では、2030年までに年間約5,000万トン、2040年までに年間1億トンのCO2を回収・貯留することを目指しています。 

EU 

EUでは、脱炭素化を推進する政策の一環として、CCSの推進が本格化しています。2024年には、「ネットゼロ産業法」が施行されました。この中で、石油ガス業界等に対し、2030年までに年間5,000万トンのCO2の貯留に貢献することを義務付けています。

このような背景の中、EUではCCSのプロジェクト数が増加しています。 

英国 

英国でも、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの一環として、CCS及びCCUSの推進が加速しています。英国政府は現在、国内に4つのCCSクラスターを整備する計画を進めており、これらのクラスターで年間2,000万~3,000万トンのCO2を回収・貯留することを目指しています。 

2024年10月には、2つのCCSクラスターに対して、今後25年間で最大217億ポンド(約4兆円)の支援を行うと発表しました。この多額の公的資金は、インフラ整備や技術開発、商業化の促進に向けて活用される予定です。 

カナダ 

カナダでは、2024年6月から「クリーン経済投資税額控除」を導入しました。この制度は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、投資の促進や技術革新の支援を目的としています。

CCUS分野では、大気中から直接CO2を回収するプロジェクトは60%、それ以外の回収方法は50%が控除されます。 

インドネシア 

インドネシアは、2060年のカーボンニュートラル実現に向けて、CCSを国家戦略の重要な柱と位置づけています。2023年にはCCS実施に関する省令を、2024年にはCO2の越境輸送を可能にする大統領令を発表しました。

同国は、石油・ガス事業におけるCCSやCCUSの実現を通じて、CO2の排出削減と資源の増産を同時に目指しています。また、CO2貯留容量の最大30%を国外由来のCO2に割り当てることを認めるなど、国際連携にも積極的に取り組んでいます。 

CCSの課題 

CCSはカーボンニュートラルの実現に向けて期待されている技術ですが、実用化や普及にはいくつかの課題があります。ここでは、主な3つの課題を解説します。 

コストがかかる 

CCSの大きな課題の一つが、コストがかかることです。CO2を分離・回収し、輸送して地中に貯留するには、高度な技術の開発と専用設備への多額の初期投資が必要です。さらに、CO2を地中に貯留した後も、モニタリングやメンテナンスなどの維持管理に継続的なコストがかかります。

こうしたコスト負担は企業にとって大きな障壁となり、CCSの実用化や普及を妨げる要因となっています。 

技術が確立されていない 

CCSの課題の一つは、CO2を安価かつ効率的に回収する技術がまだ確立されていないことです。現在、排ガスからCO2を回収する技術は存在しますが、多くのコストと大量のエネルギーを必要とします。

こうしたコストやエネルギーの大きさが、CCSの普及を妨げる要因となっているため、より低コストで効率的なCO2回収技術の開発が急務となっています。 

貯留場所の問題 

CCSでは、CO2を地中に貯留するために、安定した地層の確保が不可欠です。しかし、適した地層は限られており、すべての地域で実現できるわけではありません。加えて、CO2の排出源と貯留場所が離れると、輸送コストが増大するという別の問題が発生します。さらに、地中からの漏れや地震による影響、周辺環境へのリスクも指摘されており、貯留場所の地域住民の理解を得られるかが重要な課題となっています。 

世界が注目するCO2削減技術 

カーボンニュートラルの実現に向けて、CCS以外にも様々な技術が開発されています。
ここでは、その中でも特に注目される3つの技術を紹介します。 

メタネーション 

メタネーションは、水素と二酸化炭素を反応させて合成メタンをつくる技術です。生成された合成メタンは都市ガスとして利用できるため、既存のインフラをそのまま活用できる点が特徴です。そのため、CO2を再資源化する方法として注目されています。 

詳しく知りたい方は、「メタネーションとは?CO2を都市ガスにするe-メタンの現状と課題をご紹介」も併せてご覧ください。 

e-fuel 

e-fuelとは、水素と二酸化炭素を合成した液体燃料です。ガソリンや軽油と同様の性質を持ち、既存の内燃機関で使用できます。海上輸送といった脱炭素が難しい分野におけるクリーンな代替燃料として期待されています。 

詳しく知りたい方は、「合成燃料のe-fuelとは?注目される理由や日本企業の動向を解説」も併せてご覧ください。 

水素エネルギー技術 

水素は、燃焼してもCO2を排出しないクリーンなエネルギーです。燃料電池車や液化水素運搬船などの開発が進んでいます。大阪・関西万博では実際に「水素燃料電池船」を運航し、注目を集めています。 

詳しく知りたい方は、「脱炭素の実現に向けて!進化を続ける水素エネルギー技術とは?トヨタや川崎重工を紹介」も併せてご覧ください。 

CCSは大きなビジネスチャンス 

世界各国がカーボンニュートラルの実現に向けて取り組みを進める中、地球温暖化の主な原因であるCO2を効率的に削減する技術として、CCSが注目されています。 

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