中国経済の現状と中国進出のポイント 

中国は世界最大のマーケットを誇り、コロナの影響を受けてもプラスの経済成長率を維持しています。日本の隣国ということもあり、中国を海外進出先として考えている事業者も多いことでしょう。 

近年ではサプライチェーンの中国離れや米中貿易戦争の長期化など、中国進出を考えている企業にとって必ずしもメリットだけではない事態が発生しています。 

今後も中国が巨大な市場として世界上位に位置することには変わりないため、まずは中国で起こっている問題や経済状況を踏まえて進出計画を立てることが重要です。 

本記事では、中国の基本情報・経済情報、進出時のメリット・デメリットについて解説。進出する際のポイントもまとめていますので、中国進出の検討にお役立てください。 

中国について 

中国の基本情報や現状について、次の項目を紹介します。 

  • 中国の基本情報 
  • 中国人の働き方 
  • 中国と日本の文化関係・交流 
  • 日本企業の進出状況 

中国の基本情報 

隣国である中国は、日本の約26倍の面積を誇り、人口は14億人超えの世界トップに位置しています。宗教は仏教・イスラム教・キリスト教など、日本と比較して多宗教国家です。 

米国に次ぐ世界第2位の経済大国でありながら、自らを「世界最大の途上国」と位置づけ、中国の発展は他国の脅威とはならないとする「平和的発展」を掲げています。2049年の建国100周年までに、富強・民主・文明・調和の美しい社会主義現代化強国の完成を目指しています。 

中国人の働き方 

中国人の働き方は、成果主義が主流です。業務経験や年齢、経歴を問わず、スキルがあり結果を残せる人が出世していく評価制度をとっています。日本人の会社に対する帰属意識の高さとは異なり、中国人は自分のキャリアアップのために結果重視で働く姿勢が見られることが多いです。 

就職条件として、中国人は常に自己成長ができる環境に身を置くことを望む場合が多いです。中国では、成果を残せばどんどんキャリアアップできる仕組みが整っているからだといえるでしょう。 

中国と日本の文化関係・交流 

日中間での人的往来はコロナ禍により大幅に減少したものの、コロナ前の2019年は日本から中国へは約268万人(中国文化旅遊部統計)、中国から日本へは約959万人(JNTO統計)もの人々が往来しています。 

2022年は日中国交正常化50周年にあたり、9月には記念式典が開催されました。式典では平和の誓いを新たにし、次の50年と更に先の日中両国の明るい未来に向けての契機として注目されました。 

日本企業の中国進出状況 

外務省の調査によると、2021年10月1日時点での中国における日系企業は31,047拠点でした。うち日本企業が100%出資した現地法人は2,738拠点、支店は817拠点となっています。日本企業の海外進出先として、2位の米国(8,874拠点)に大差をつけて中国が堂々の1位という結果となりました。 

参考:外務省「2021年海外進出日系企業拠点数調査」 

中国の経済状況 

中国進出を検討する場合は、まず現地の経済状況を把握しておく必要があります。中国の経済状況について、以下の5つの項目に分けて紹介します。 

  • 主要産業 
  • GDP 
  • 経済成長率 
  • 貿易状況 
  • 日本との経済関係 

中国の主要産業 

中国の主要産業は、第三次産業です。かつて中国は「世界の工場」として発展してきた背景があり、第二次産業が主流でした。しかし2012年に第三次産業が1位に逆転を果たすと、2015年には中国産業全体の50%を超える急成長を遂げる結果に。 

第三次産業が発展した背景には、中国のIT業の急成長があります。ECサイトやスマホ、ゲームなどのITサービスは急速な普及をみせ、特にスマホ利用者の拡大が第三次産業に影響をおよぼしたとみられています。「世界の工場」として生産拠点を発展させてきた中国は、第三次産業の発展に伴い世界有数の大型マーケットへと成長し、世界からも注目の的です。 

中国のGDP 

中国の2021年名目GDPは114兆9237億元(約17.73兆USドル)でした。世界ランキングでは米国に次ぐ2位で、アジアではトップの経済大国の座を維持しています。 

中国の経済成長率 

中国の2022年における経済成長率は世界平均と同等の3%にとどまり、過去50年近くで2番目の低水準を記録しました。2021年の経済成長率8.1%と比較しても、大きな減少であることがわかります。 

経済成長率の伸び悩みの要因は、感染者数が拡大した状況をおさめるために実施されたゼロコロナ政策です。ゼロコロナ政策は2022年12月に緩和され、2023年の経済成長率は5%程度まで回復すると予想されています。 

中国の貿易状況 

外務省の中国基礎データによると、2021年中国の貿易状況は次のとおりです。 

 貿易額 主要貿易品 主要貿易相手国・地域 
輸出 3兆3,633億ドル 機械類及び輸送用機器類、軽工業生産品、化学工業生産品 米国、日本、ベトナム 
輸入 2兆6,864億ドル 機械類及び輸送用機器類、非食料原料、鉱物性燃料品 台湾、韓国、日本 

引用:外務省「中華人民共和国基礎データ」 

中国と日本の経済関係 

前項の表に記載のとおり、中国の主要貿易相手国に日本が入っていますが、日本にとっても中国は最大の貿易相手国です。 

JETROの統計によると、2021年における日本の中国に対する貿易収支は208億6,576万ドルで、5年連続の黒字となりました。また黒字幅は前年から7割超拡大し、過去最高の2010年(228億37万ドル)に次ぐ水準です。 

中国進出における4つのメリット 

中国進出における次の4つのメリットを紹介します。 

  • 驚異的人口を誇る世界最大のマーケットに進出できる 
  • 経済特区・開発区の恩恵を受けられる 
  • 往来のしやすさと安価なコストが期待できる 
  • 日本製品への関心が高い 

驚異的人口を誇る世界最大のマーケットに進出できる 

中国に進出するメリットのひとつに、世界1位の人口を誇る巨大なマーケットに進出できることが挙げられます。一人っ子政策の影響で今後は人口が減少していくことが予想されますが、世界人口の割合でみるとまだまだ多くのビジネスチャンスが潜んでいるといわれています。 

コロナ禍で一時は低い経済成長率となりましたが、米国などで軒並みマイナス成長がみられるなか、プラス成長をみせた中国には期待が高まる声もあがりました。2023年からはウィズコロナを掲げているため、今後は緩やかに経済回復していくことでしょう。 

経済特区・開発区の恩恵を受けられる 

中国に進出するメリットとして、経済特区や開発区の恩恵を受けられることがあります。経済特区と開発区の制度は、ともに中国の経済発展を促進するために政府が定めたことが始まりです。 

これらの特定地域に進出すれば、一定期間の所得税免除や支援金の受給など、嬉しい恩恵が受けられます。 

往来のしやすさと安価なコストが期待できる 

中国と日本間の平均フライト時間はおよそ4時間で、時差も1時間と比較的往来しやすい国です。特に初めての海外進出を検討している企業にとって、往来のしやすさやコミュニケーションのとりやすさは重要となるため、立地的な面で考えても進出するメリットといえるでしょう。 

また、中国は日本と比べて人件費が安価におさえられる傾向にあります。全体的な物価でみても日本より低くなっており、大都市を除けばオフィス代などの固定費用も安くおさえられるのが嬉しいポイントです。 

日本製品への関心が高い 

中国人は日本製品への信頼や関心度が高いといわれています。コロナ前には中国人観光客による爆買いもみられていたように、中国人にとって日本製品は魅力的に映っています。 

日本製品の技術の高さもそうですが、中国人にとってはいわゆるニセモノが多く出回っている自国で買い物するよりも、先進国で購入したほうが良いという安心感もあるようです。 

中国人が日本製品に興味・関心を持つことは、同時にビジネスにとっても多くのチャンスがあることになります。 

中国進出における4つのデメリット 

中国進出におけるデメリットを事前に把握し、進出後のギャップを軽減することが重要です。主なデメリットは次の4つです。 

  • 文化や国民性が日本と異なる 
  • 転職市場が活発で終身雇用が通じない 
  • サプライチェーンの中国離れが進んでいる 
  • 米中貿易戦争の影響を受ける可能性がある 

文化や国民性が日本と異なる 

中国進出のデメリットのひとつに、文化や国民性が日本と異なることが挙げられます。言語や文化が違うことに加え、日本人は仕事に対する態度や姿勢を大事にする風習がある一方で、中国人は完全な成果主義です。 

働き方が根本的に違う中で、お互いに受け入れあいながら仕事をすすめていく必要があります。中国人労働者を雇わなかった場合も、現地で取引する場合は国民性に配慮することが大切です。 

転職市場が活発で終身雇用が通じない 

中国では転職市場が活発で終身雇用が通じないことも、進出時のデメリットといえるでしょう。日本でも近年は転職率が高まっており、徐々に終身雇用の風習が薄れてきていますが、会社や業種によってはいまだに根強く残っています。 

中国人は最短ルートでのキャリアアップを目指す傾向にあるため、会社への帰属意識よりも高い報酬を優先して転職することを念頭においておくといいでしょう。 

サプライチェーンの中国離れが進んでいる 

コロナ禍の影響で、サプライチェーンの中国離れが世界的に加速しています。各国がアジア諸国へ生産拠点を移管していることから、今後の中国進出にもマイナスに働くことが予想されます。 

米中貿易戦争の影響を受ける可能性がある 

2018年、トランプ政権により始まった米中貿易戦争は、ひとまず休戦で合意されてはいるものの米中は互いに高い関税を発動したままです。今後も米中貿易戦争の状態は続いていくことが予想されています。 

もともと中国の外資規制は厳しいことで知られていますが、米中貿易戦争の長期化により、今後外国企業に対する法改正がおこなわれる可能性も視野にいれておく必要があります。 

中国進出の際のポイント4 

中国進出を成功させるために、進出の際のポイントを紹介します。次の4選をおさえて、進出計画にお役立てください。 

  • 輸出入貿易制度を理解する 
  • 政治制度を理解する 
  • WEBマーケティングを促進する 
  • ローカライズ商品の開発をおこなう 

輸出入における貿易制度を理解する 

中国に進出する際は、輸出入における貿易規制があることを把握しておきましょう。中国において自社名義で貿易をおこなう場合、「貿易権」を取得しなければなりません。貿易権の取得は複雑なので、事前に申請方法を確認する必要があります。 

政治制度を理解する 

中国では、基本的な政治制度が省・都市ごとに異なっています。行政区域によって規則や政治方針も異なるため、進出先の地域の政治制度を事前に確認しておくといいでしょう。 

WEBマーケティングを促進する 

中国はIT業界やWEBマーケティングの成長が大きく、2021年のEC市場では2兆4,886億ドルとなり世界1位に輝きました。今後も中国でのEC市場は成長し続けることが予想されています。 

中国は世界1位の人口を誇り、国面積も広いことから数店舗進出しただけではせっかくの巨大マーケットを活用しきれません。ECサイトを利用すれば、14億人の人口に向けて効率よく情報発信が可能であり、EC市場が発展している現状と相性がいいです。 

中国進出の際は、ぜひEC市場も視野に入れて検討してみるといいでしょう。 

ローカライズ商品の開発をおこなう 

中国に進出する際は、日本で販売している製品をそのまま流用するだけでなく、中国の国民性や文化にあわせてローカライズすることも大切な考え方です。 

ローカライズを検討する場合は事前調査が重要になります。中国の宗教性や食文化、現地に馴染むデザインなどに考慮して十分に検討しましょう。 

まとめ 

本記事では、中国の基本情報・経済状況、進出の際のメリット・デメリットと進出時に気をつけたいポイントをご紹介しました。 

中国はコロナ禍により経済的に大きなダメージを受けましたが、ゼロコロナ政策のような厳しい規制を設けたにもかかわらず経済成長率はプラスを維持しています。 

今後はウィズコロナが進む予定のため、経済成長率の回復が予想されており、中国の巨大なマーケットは今後も注目度の高い進出先といえるでしょう。 

進出の際はメリット・デメリット、中国ならではの気をつけるべきポイントをおさえて慎重に準備を進めましょう。 

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