
商品開発やマーケティング、海外進出など、事業を成功させるためにはターゲットユーザーの本音や価値観を理解することが重要です。しかし、一般的なアンケート調査では表層的な回答にとどまり、ユーザーのインサイト(深層心理にある本音や欲求)まで把握できないことがあります。
こうした心理にアプローチするには、より密なコミュニケーションが必要です。そこで有効な調査手法はFGI(フォーカスグループインタビュー)です。本記事では、FGIの意味や目的、具体的なやり方、メリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
FGI(フォーカスグループインタビュー)とは?
FGIとは、特定のテーマに基づいて少人数のグループを構成し、座談会形式で意見や感想を聞く定性調査です。
一般的に、FGIは4〜8名程度の少人数で実施されます。なかでも6〜8名は、参加者同士の意見交換が生まれやすく、多様な視点を得やすい人数とされています。モデレーター(進行役)が質問を投げかけながら議論を進め、参加者は自由に発言したり、他の参加者の意見に反応したりすることで、インサイトが表出されます。
一方で、海外調査や同時通訳を伴うFGIでは、4〜6名程度に抑えて実施することもあります。参加者の発言を通訳する時間が必要になるためです。
このように、参加者同士のやり取りによって新たな意見や気づきが生まれる点がFGIの特徴です。特に海外FGIでは、人数設計や進行方法を現地の文化・言語環境に合わせて調整することが、質の高いインサイトを得るために重要になります。
FGIとデプスインタビューの違い
FGIとデプスインタビューは、どちらも消費者の意見や価値観を深く理解するために用いられる定性調査です。しかし、調査の進め方や得られる情報の特徴には違いがあります。
FGIは複数の参加者を集めて座談会形式で実施し、参加者同士の意見交換や反応を通じて多様な視点を引き出す点が特徴です。一方、デプスインタビューは1対1でインタビューを行い、個人の経験や考え方を掘り下げていく手法です。
FGIでは、他の参加者の発言をきっかけに新しい意見や気づきが生まれるなど、グループ内の相互作用から多角的な意見を収集できます。これに対してデプスインタビューでは、他者の影響を受けることなく、個人の価値観や行動の背景を深く掘り下げることができます。両者の違いをまとめると次のとおりです。
| 項目 | FGI | デプスインタビュー |
| 調査形式 | 複数人による座談会形式 | 1対1の個別インタビュー |
| 参加人数 | 4~8人程度 | 1人 |
| 特徴 | 参加者同士の議論や相互作用から意見を引き出す | 個人の意見や経験を深く掘り下げる |
| 得られる情報 | 多様な視点や共通意見、集団の反応 | 個人の価値観や行動の背景 |
このように、FGIとデプスインタビューはそれぞれ特徴が異なるため、調査の目的や知りたい情報の種類に応じて使い分けることが重要です。
海外でのデプスインタビューについては以下の記事で解説しております。
FGIの目的と活用シーン

FGIの目的は、簡単に言えばユーザーのインサイトの把握や多様な視点を得ることです。そのため、次のようなシーンで効果を発揮します。
- 新商品やサービスの評価
- 既存商品やサービスの改善点の把握
- 広告やプロモーションの反応調査
- 新規市場や海外市場におけるニーズ調査
このようにFGIは、ユーザーの本音や潜在的なニーズを把握し、商品開発やマーケティング施策の改善につなげるための調査手法として活用されています。
FGIのやり方・流れ
FGIでユーザーのインサイトを得るには、計画的に進めることが重要です。一般的には、次のような流れで実施されます。
1. 調査目的の定義
まず、FGIを実施する目的を明確にします。どのような課題を解決したいのか、どのような情報を得たいのかを明確にすることで、調査の方向性が定まります。
2. FGIの設計
次に、調査目的に合わせてFGIの設計を行います。具体的には、対象者の属性、参加人数、実施方法などを決めます。
3. インタビュー項目とFGIシナリオの設計
インタビューで使用する質問項目を作成するとともに、質問の順序や進行の流れを整理し、FGI全体のシナリオを設計します。FGIでは、参加者が自然に意見を出し合えるよう、導入から本題、まとめへと段階的に議論が深まる構成にすることがポイントです。こうしたシナリオ設計は、参加者の発言を引き出し、調査目的に沿ったインサイトを得るための重要なプロセスです。
4. FGIの実施
シナリオに沿ってFGIを進行します。参加者が自由に発言できる雰囲気をつくり、意見交換を促すことがポイントです。発言内容は録音やメモなどで記録します。
5. インタビュー内容の確認・まとめ
インタビュー終了後は、記録した内容を確認し、重要な意見や共通点をまとめます。
6. インタビュー内容の分析
最後にまとめた情報をもとにインタビューの内容を分析します。参加者の意見に共通する傾向や特徴的な意見から、消費者の価値観やニーズ、インサイトを読み取ります。
海外FGIを実施する際に注意すべきポイント
海外市場でFGIを実施する場合、日本国内で行うFGIとは異なる視点が必要です。参加者の意見を正しく引き出すためには、言語だけでなく、文化、宗教、性別、生活習慣、商習慣などを踏まえた調査設計が求められます。
1. 文化・宗教・性別などへの配慮
海外FGIでは、文化や宗教、性別によって、商品・サービスへの評価や発言のしやすさが変わる場合があります。例えば、食品、化粧品、ヘルスケア、日用品などの商材では、宗教上の禁忌、成分に対する考え方、家族内での意思決定、性別役割などが購買判断に影響することがあります。
日本では自然に聞ける質問でも、国や地域によってはセンシティブに受け取られる可能性があります。そのため、質問内容や聞き方は、現地の価値観を踏まえて設計することが重要です。
2. 現地語モデレーターの選定
海外FGIでは、現地語に対応できるモデレーターの選定が重要です。単に言語を話せるだけでなく、参加者の発言の背景にある文化的なニュアンスを理解し、必要に応じて深掘りできることが求められます。
特に、参加者が目上の人や異性の前で本音を話しにくい文化圏では、グループ構成や進行方法も慎重に設計する必要があります。誰が進行するかによって、得られる意見の質が変わることもあります。
3. 通訳を入れる場合の時間・コスト
同時通訳や逐次通訳を入れる場合、通常のFGIよりも時間とコストがかかります。通訳を介すると、1つの質問にかかる時間が長くなるため、質問数を絞ったり、1グループあたりの人数を少なめに設計したりする必要があります。
また、BtoB商材や専門性の高い製品では、業界用語や製品理解のある通訳者・モデレーターを確保することが難しい場合もあります。事前に調査テーマや製品情報を共有し、通訳者が内容を理解できる状態を整えておくことが重要です。
4. 質問票を直訳しない
海外FGIでは、日本語の質問票やインタビューガイドをそのまま直訳するだけでは、意図が正しく伝わらないことがあります。日本語では自然な表現でも、現地語では不自然に聞こえたり、回答しにくい聞き方になったりする場合があります。
そのため、質問票は単に翻訳するのではなく、現地の生活者や企業担当者が自然に理解できる表現に調整することが重要です。必要に応じて、現地パートナーやネイティブによる確認を行うとよいでしょう。
5. 複数国で比較する場合の設計
複数国でFGIを実施する場合は、国ごとの違いを比較できるように、共通で聞く項目と、各国の事情に合わせて調整する項目を分けて設計する必要があります。
すべての国で同じ質問をすれば比較しやすくなる一方で、現地事情に合わない質問では有効な回答が得られない可能性があります。比較のしやすさと、各国の実態を深掘りする柔軟性のバランスを取ることが重要です。
このように、海外FGIでは、リクルーティング、質問設計、モデレーション、通訳、分析のすべてにおいて、現地市場への理解が欠かせません。PROVEでは、対象国や調査テーマに応じて、現地事情を踏まえたFGIの設計・実施を支援しています。
FGIのメリット

FGIを効果的に活用するためには、メリットを理解しておくことが重要です。ここでは、FGIを実施することで得られる主なメリットを紹介します。
- 多様な意見や新たな気づきを得られる
FGIのメリットは、参加者同士が意見を交わすことで議論が広がり、新しい視点や気づきが生まれることです。ある参加者の発言をきっかけに他の参加者が自身の体験や考えを思い出して発言するなど、相互作用によって多様な意見を引き出します。
- ユーザーのリアルな反応を把握できる
FGIは表情や声のトーン、他の参加者への共感といった反応を観察できる点がメリットです。こうした反応は、商品やサービスに対する印象や評価を判断する際の材料となります。
- 商品・サービス改善のヒントを得られる
ユーザーが実際に感じている不満、期待などを共有することで、商品やサービスの改善につながる具体的な意見を得られます。企業側では気づきにくいユーザー視点の課題を発見できる点がメリットです。
- 属性ごとの意見の違いを比較できる
FGIでは、年代や性別、利用経験などの属性ごとにグループを分けて実施することで精度が高まります。複数のグループの結果を比較することで、ターゲット層ごとの価値観やニーズの違いを把握できるためです。
FGIのデメリット
FGIには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。これらのデメリットを理解し、適切に対策を講じることがFGIを効果的に活用するうえで重要です。主な課題は次のとおりです。
- 個人の行動や思考を深く掘り下げにくい
FGIは複数人で議論を行う形式のため、個人の体験や価値観をじっくり掘り下げるには限界があります。個人の意思決定のプロセスやインサイトを詳しく知りたい場合には、1対1で行うデプスインタビューの方が適している場合があります。
- 日程調整が難しい
FGIでは複数の参加者が同じ時間に集まる必要があるため、日程調整に労力を要します。特にターゲットユーザーを絞り込んでいる場合は、参加者の確保やスケジュール調整の難易度が上がります。
- モデレーターに高いスキルが求められる
FGIの成功を担うのは、モデレーターの進行です。グループの話し合いを活発にし、参加者同士の意見交換を促すには適切な進行が不可欠です。発言の偏りを防ぎながら参加者全員の意見を引き出し、議論を調査目的に沿って進めるには、一定の経験やスキルが求められます。そのため、FGIの実施に慣れていない場合は、専門的な知見を持つ外部の専門家に委託することも一つの選択肢です。
FGIでユーザーのインサイトを把握しよう
FGI(フォーカスグループインタビュー)とは、少人数の参加者を集め、座談会形式で意見や感想を聞く定性調査です。商品開発やマーケティング、海外市場のニーズ調査など、様々な場面で活用されています。「商品やサービスがユーザーからどのように評価されているのか知りたい」「海外市場にどの程度の需要があるのか把握したい」といった場合は、FGIの実施を検討してみてはいかがでしょうか。
特に海外市場でFGIを行う場合は、言語や文化、宗教、商習慣の違いを前提に、調査対象者の設計や質問内容、進行方法を検討することが重要です。
PROVEでは、海外におけるFGIの企画・設計から実施、分析までを一貫してサポートしています。海外ユーザーのインサイトを把握し、事業戦略に生かしたいご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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