JETROは”Japan External Trade Organization”の略で、「日本の貿易の発展と拡大」という意味があります。
日本語名では「日本貿易振興機構」が正式名称です。
ジェトロは、このように日本の貿易の振興と開発途上国・地域の発展のために活動している「公的機関」です。
商社や貿易会社では、独自に各国のリサーチをしている会社もありますが、そのようなリサーチにお金をかける余裕のない中小企業にとってジェトロは強い味方です。
もちろん本格的な進出サポートやコンサルティングには費用がかかりますが、公的機関という性質上、比較的安価にサービスが受けられます。
https://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g30707h3111j.pdf
海外ビジネスに今後関わる方は、ジェトロがどのような機関なのかを知っておくと将来役立てることができるでしょう。ここでは、ジェトロのご紹介と、サービスを受けるとビジネスにどのような発展が期待できるかについてお話します。
JETROの沿革
日本の貿易の発展・拡大のために活動しているジェトロですが、もう一つの役割は、海外の企業への働きかけです。
- 日本のマーケット情報を海外企業に提供
- 日本への誘致
日本への投資や、海外企業の日本への参入によって、日本で新しいビジネスが生まれ、雇用が拡大すれば商品の流通や消費の活発につながります。ジェトロはこのことも「日本の発展・拡大」として捉えています。
ジェトロを創立したのは山口県出身の杉道助氏です。
杉氏の祖父である民治氏の実弟は、明治維新の時代に「松下村塾」を主宰した吉田松陰です。
杉氏は大阪商工会議所の会頭を23年間勤め、戦後大阪の経済復興に多大な貢献をしたことで知られています。
また、一貫して専心したのが「貿易の振興」でした。
杉氏は、「日本経済の発展は、貿易が拡大することなしにはあり得ない」との信念を持ち、ジェトロを「中小企業者のためのジェトロ」と位置付けました。
戦後、日本の貿易は戦時中のブランクもあったことから、特に中小企業にとっては、世界市場を十分認識せずに貿易活動を行わざるを得ない状態になっていました。
このような状況を脱するために、杉氏は英国のBETRO(英国輸出調査機関)に倣い、世界の市場調査を行う財団法人海外市場調査会を1951年に大阪に設立したのです。
これが、ジェトロの前身である「財団法人海外市場調査会」で、1958年(昭和33年)、日本貿易振興会法に基づき特殊法人日本貿易振興会に改組しました。
https://www.jetro.go.jp/jetro/profile.html
上記ジェトロのHPでは、
「ジェトロの目的」は「我が国の貿易の振興に関する事業を総合的かつ効率的に実施すること、並びにアジア地域等の経済及び、これに関連する諸事情について基礎的かつ総合的な調査研究、並びにその成果の普及を行い、これらの地域との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的とする。」と示されています。(独立行政法人日本貿易振興機構法第3条より抜粋)
ジェトロに入会している企業は中小企業がメインですが、大企業も存在しているようです。
入会企業の一覧を見てみると、商社や製造業だけで3分の1を占めているような印象です。
JETROが支援してくれること
世界約70カ所の海外事務所の現地で、現地一般経済事情やビジネス環境について、専門アドバイザーや海外駐在員が情報提供を行います。
ジェトロが提供するリサーチ情報は信頼性が高く、中立的なビジネス情報が得られるのが大きなメリットです。
それでは、ジェトロがどのようなサービスを提供しているかを見てみましょう。
対日直接投資の推進促進
対日投資の総合的支援機関として外国企業に対する誘致活動を行っています。
投資を誘致することで、日本における拠点設立や、事業拡大を支援しています。特に、下記のような事業を重点的に誘致しています。
- 高い付加価値を創出する可能性がある、新しい技術やビジネスモデルを持つ事業
- 生産性の向上に貢献する事業等
海外で開催するセミナーやウェブサイトを通して、日本の投資環境、市場、インセンティブ等に関する情報を提供しています。
また、外国企業の誘致に積極的な地方自治体とタッグを組み、地域経済の活性化に期待できる外国企業の誘致にも注力しています。国内外でのプロモーションや、企業招へいを実施し。外国・外資系企業の地域への進出もサポートしています。
スタートアップの海外展開支援
世界で活躍するスタートアップ企業創出のために、政府や関係機関と連携することで海外展開を支援しています。
特にJ-Startup 企業を始めとし、世界各地のネットワークに直結した展示会への出展支援、、メンタリング、ブートキャンプなどの派遣前の個別集中研修を提供しています。
日本の農林水産物・食品輸出を支援
「2019 年に農林水産物・食品の輸出額1 兆円」という政府目標や、政府が推進する地方創生に貢献するために、国内外のネットワークを最大限活用しています。
2017 年に設立された日本食品海外プロモーションセンターの販売促進部とも連動し、品目別輸出団体等との連携、関係省庁等と一体になって農林水産物・食品の輸出に取組んでいます。
- 全国に輸出相談窓口を設置しワンストップで情報提供
- 海外企業との商流構築機会の提供
- 輸出に向けた個別支援の提供
- 海外における日本産農林水産物、食品のブランド構築を推進
中小企業などの海外展開を支援
旺盛な需要や経済連携で拡大が期待される海外市場において、中小企業等の販路開拓、現地進出企業の活動円滑化、拠点設置を支援するために、官民の支援機関で構成される「新輸出大国コンソーシアム」を設立。
同時に、グローバル人材の活躍、フロンティア市場の開拓、越境EC の活用、日本の魅力発信、知的財産の活用などを通じて、日本企業の海外展開を支援します。
調査や研究を通じ、企業の活動や通商政策等に貢献
国内外の拠点、海外の地域・産業調査等において豊富な知見を持つ人材、アジア経済研究所における研究成果の蓄積、現地政府・企業・研究機関。国際機関とのネットワークを提供し、最新の海外ビジネス情報を日本企業に供給しています。
会員になるには
ジェトロは「海外へ輸出をしたい」日本企業をサポートしており、国内外に設置された数多くの事務所でも相談が可能です。
各地の大都市に事務所を構えているため、地方にある企業でも場所に関係なく相談が可能です。
国の公的機関のため相談料などは無料のものもあり、費用をかけずに活用できます。
しかし、進出に際して本格的なサポートをしてほしい場合、費用は有料となります。
1口7万円で入会できる会員制度を活用すれば、リサーチ費用やコンサルティング費用を安く利用できるというメリットもあります。
・年会費;1口 70,000円(税抜、入会金不要)
・会期の更新:1年間の会期満了
・会員条件:日本にある企業、団体、研究機関、個人
会員特典として、ジェトロ主催の各種イベント、セミナー、展示会に参加ができ、ジェトロメンバーズ対象のメールマガジンに広告を無料で掲載することが可能です。
https://www5.jetro.go.jp/docs/members/export/index.html#step_01
会員になると、下記に挙げられるサービスが、ほぼ半額で受けられます。
https://www.jetro.go.jp/members/memberservice/option/creditcheck.html
会員にならなくても閲覧できる質の高いレポート
ジェトロは無料で「海外ビジネスニュース」などの海外情報の提供も行っていますが、これらのレポートは現地のリアルな情報と数値が反映されています。公的機関として中立的な立場でレポートを作成しているため非常に信頼性が高いと言われています。
最新のレポートとして掲載されている『コロナ渦で未曽有の危機下にある世界経済と新たな潮流』では、コロナ禍の影響が1930年代の大恐慌以来の経済悪化に陥る可能性を示唆しながら、海外進出日系企業の事業活動に、大きなマイナスの影響及ぼしているアンケート調査を提示しています。
会員になるかどうか迷っている方は、まずこのような無料で得られるレポートを閲覧したり、無料相談を受けるところからスタートしてみてもよいでしょう。
活用事例
それでは次に、ジェトロの代表的なサービスである「新輸出大国コンソーシアム」の活用事例を1つご紹介します。
https://www.jetro.go.jp/consortium.html
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_News/releases/2019/48c3ea6f0bbe6a95/1rev.pdf
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_News/releases/2019/48c3ea6f0bbe6a95/1rev.pdf
新輸出大国コンソーシアムのサービスでは、グローバル市場開拓、事業拡大を目指す日本の中小企業の海外展開支援をしています。
山形県の日本酒酒蔵「東光」の事例
日本酒の国内市場は、少子高齢化によって縮小傾向にあります。世界ではワイン市場の大きいですが、日本酒の知名度はまだ低いのが現状です。
今後展開する余地が充分にあると考え、2012年に本格的に輸出への取り組みを開始。
2013年、ジェトロ主催の商談会に参加し、複数国のバイヤーと商談し契約がまとまりました。
ジェトロのサポートのもと商談会、情報交換会、各種セミナー、貿易実務講座等を通して、1年かけて輸出への理解を深めることができ、現在、欧州、北米、中東、アジアの18ヵ国・地域に展開を成功させています。
※輸出大国コンソーシアムの成功事例集はこちらのページからご覧になることができます。
https://www.jetro.go.jp/news/releases/2019/48c3ea6f0bbe6a95.html
ジェトロに似たサービスを提供する機関
ミプロ(一般財団法人 対日貿易投資交流促進協会)
ジェトロが輸出メインとすると、ミプロは輸入に特化しています。輸入に関する相談だけでなく、セミナーやイベントなども開催しています。
日本アセアンセンター(東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター)
日本アセアンセンターは、ASEAN加盟国政府と日本国政府との協定により、1981年に設立された機関です。
日本とASEAN諸国間の貿易、投資、観光における経済発展と人物交流を目的としています。
ASEAN諸国の国別情報、ASEANの有望な輸出企業の情報などが入手できます。東京の事務所内で現物をチェックし、商品のサプライヤーと交渉することが可能です。
最後に
ジェトロという機関が具体的にどのようなサポートをしているか、ご理解いただけましたでしょうか。無料レポートでは各国のGDPからトレンドまで質の高い情報を収集できるので、是非ビジネスに役立てることをお勧めします。
https://www.jetro.go.jp/jetro/activities/support/
https://lab.pasona.co.jp/trade/faq/442/
https://hunade.com/yunyu-kankei#toc5
https://www.jetro.go.jp/case_study/2020/8427.html
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jetro/japan/yamaguchi/magazine/pdf/vol23.pdf