
米国ニューヨークにおいて日系FMCG商材の受容性調査を実施し、複数の消費者に対してデプスインタビューを行いました。本調査は、2019年以来約4年ぶりの現地訪問となり、コロナ後の米国経済の変化を直接観察する貴重な機会となりました。
ニューヨークはコロナ禍で大きな打撃を受け、飲食業界では約80%の従業員が失業し、53%の店舗が閉店するなど深刻な影響を受けたものの、タイムズスクエアやMoMAなどの観光スポットには世界中からの観光客が絶え間なく訪れていました。当時、東京ではマスクを着用する人が3~4割いたのに対し、ニューヨークではほとんどの人がマスクをしておらず、人々の表情からは明るさや活気が感じられました。また、路上マーケットですれ違う見知らぬ人々のフレンドリーな態度やスモールトークの様子から、都市の回復のスピードや社会の活気の大きさを実感し、強く印象に残りました。
一方で、物価高騰は顕著でした。600mlのボトル入りの水は5〜6ドル(日本円で約750〜900円)、レストランでの食事はチップを含めると30〜50ドルが一般的でした。実際に、当時宿泊していたAirbnbのホストに物価や生活状況について尋ねたところ、生活は非常に厳しく、外出や外食を極力控える生活を送っているとのことでした。

今回の調査対象となったFMCG商材は、コロナによるライフスタイルの変化を受け、アナログ回帰のトレンドの中で成長の可能性が期待される商品でした。商品自体の機能性には以前と比べて大きな変化はないものの、新規ユーザー層の増加により、商品価値の再定義が進んでいることが確認できました。特にニューヨークでは、高収入者や海外の富裕層の移民が多いため、多言語・多文化への適応が求められるとともに、商品を単体で使用するのではなく、さまざまなツールと組み合わせて活用するケースも見られました。 (製品を、ツールを効果的に活用するための手段の一つとして捉えるユーザーも存在しました。)
以上の調査結果から、米国が依然として世界の潮流をリードする市場であることが再確認されました。米国市場は世界でも有数の規模を誇りますが、トレンドを発信する市場として、企業はユーザーにどのような価値を提供できるかがより一層問われています。日系企業にとってもシェア拡大は依然として大きなチャレンジですが、その挑戦に値する市場であることに変わりはありません。