ASMLホールディングとはどんな会社?会社概要や業績、事業内容を解説

ASMLホールディングは、オランダに本社を置く半導体製造装置メーカーです。特に、EUV露光装置を製造できる唯一のメーカーとして知られています。EUV露光装置とは、波長が13.5nm程度の極端紫外線(EUV)を用いた半導体露光装置のことで、最先端の半導体を作るのに欠かせません。

Reinforz Insightの「2023年最新版:世界の半導体・液晶製造装置(前工程)会社ランキング時価総額TOP64」において、同社は1位を獲得しました。このことからも半導体・液晶製造装置の分野において、大きな影響力を持っていることが伺えます。

本記事ではASMLホールディングの会社概要や業績、今後の展望について紹介します。

ASMLホールディングとはどんな会社

出典:ASMLホールディング

ASMLホールディングは、シリコン基板の回路パターンの形成に必要な露光装置に強みを持つ企業です。ここでは、同社の会社概要や歴史、事業内容を詳しく解説します。

会社概要

ASMLホールディングの会社概要は以下のとおりです。

会社名ASML Holding NV
本社オランダ
設立1984年
従業員数42,416人(2023年)
拠点数60拠点以上
売上高276億ユーロ(2023年)

歴史

ASMLは、1984年にフィリップスとASMインターナショナルが半導体市場向けの露光装置を開発するために、ASM Lithographyを設立したのが始まりです。同年に、最初の露光装置を開発し販売しました。以降の流れは以下のとおりです。

1988年:アジアへの進出を開始

1990年代:画期的な露光装置のPAS 5500を発売

2001年:Silicon Valley Group を買収

2007年:Brion Technologiesを買収

2010年:EUV露光装置の開発に成功し、販売を開始

2013年:EUV露光装置の技術開発促進を目的にCymerを買収

2016年:台湾のHermes Microvision Inc,を買収

2020年:Berliner Glas Groupを買収

このように、同社はいくつもの企業を買収して技術を取り込むことで、最先端のEUV露光装置の開発・性能向上を実現してきました。

事業内容

ASMLホールディングの主な事業は、EUV露光装置やDUV露光装置の製造・販売に加えて、同社製品の改修やカスタマーサポートです。

DUV露光装置とは、波長が193nm程度の深紫外線光(DUV)を用いた半導体露光装置のことで、比較的安価な半導体の製造に使われています。つまり、EUV露光装置とDUV露光装置の違いは、利用する光の波長です。EUV露光装置は13.5nmという極めて短い波長を用いることで、より細かな回路パターンを形成できます。

また、同社はカスタマーサポートも充実しており、これまでに出荷した露光装置を修理することで、ほぼすべてが現在も使われています。

ASMLホールディングの経営状況

ASMLホールディングの経営状況として、直近6年間の売上高と営業利益の推移を紹介します。

参考:ASMLホールディング「Annual reports

2023年の売上高は276億ユーロ(4兆1,400億円)で、2022年の212億ユーロ(3兆1,800億円)から64億ユーロ(9,600億円)増加しました。同様に、2023年の営業利益は90億ユーロ(1兆3,500億円)で、2022年の65億ユーロ(9,750億円)増加しました。※1ユーロ=150円換算

直近6年間で売上高は2.5倍に拡大し、営業利益も右肩上がりに増加していることから、同社は順調に成長していると言えます。

また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ASMLホールディング「Annual reports

※EMEAは、ヨーロッパ・中東・アフリカを指します。

台湾・中国・韓国が主な取引先で、全体の80.8%を占めています。

ASMLホールディングの事業別売上高の推移

ASMLホールディングの経営状況を事業別売上高から深掘りします。事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:ASMLホールディング「Annual reports

半導体には複数の種類があり、ASMLではロジック半導体向け・半導体メモリ向けの製造装置を製造・販売しています。

ロジック半導体は演算処理を行うための半導体で、パソコンやスマートフォン、デジタル機器などの中核部品の1つです。細かな回線パターンにすることで、演算処理の性能の向上や消費電力の低減につながるため、回路パターンの微細化技術が必要な分野です。一方、半導体メモリはデータの保存を担う部品で、様々な電子機器に利用されています。

ここではさらに、各事業の売上高の推移を紹介します。

ロジック半導体関連

ロジック半導体関連事業の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:ASMLホールディング「Annual reports

2023年の売上高は160億ユーロ(2兆4,000億円)で、2022年の100億ユーロ(1兆5,000億円)から60億ユーロ(9,000億円)増加しました。2018年と比較すると、4倍以上拡大しており、同社の成長を牽引している事業と言えます。

2023年の売上高が急拡大した要因は、5GやAIなどによるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の需要増加が挙げられます。DXとは、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、競争力を高めることです。

半導体メモリ関連

半導体メモリ関連の売上高の推移は以下のとおりです。

参考:ASMLホールディング「Annual reports

2023年の売上高は60億ユーロ(9,000億円)で、2022年の55億ユーロ(8,250億円)から5億ユーロ(750億円)増加しました。4年連続で前年比増を達成しています。

サービス及びフィールドオプション

サービス及びフィールドオプションの売上高の推移は以下のとおりです。

参考:ASMLホールディング「Annual reports

2023年の売上高は56億ユーロ(8,400億円)で、2022年の57億ユーロ(8,550億円)とほぼ同水準でした。成長できなかった要因として、半導体メモリ向けの露光装置の稼働率低下が挙げられます。

ASMLホールディングの今後の展望

ASMLホールディングの成長戦略として、2022年11月の投資家向け説明会で発表した「ビジネスモデルの最新の見解」を紹介します。同社は、今後も半導体市場全体の成長が続くと予想しており、将来の需要を満たすために、生産能力を調整する予定です。具体的な目標は以下のとおりです。

  • 2025年~2026年までに、EUV露光装置の年間生産能力を90台、DUV露光装置を600台に増強する。
  • 2025年~2027年までに、高NA(開口数)EUV露光装置を20台に増強する。
  • 2025年に年間売上高300億~400億ユーロ、粗利益率54%~56%を達成する。
  • 2030年に年間売上高440億~600億ユーロ、粗利益率56%~60%を達成する。

※EUV露光装置はレンズのNAが大きくなるほど性能が高くなり、従来の0.33から0.55に拡大した装置を高NA EUV露光装置と呼びます。

このように同社では、今後も高性能な半導体の製造に不可欠なEUV露光装置の需要が拡大すると見込んでいます。

ASMLホールディングの動向に注目しよう

ASMLホールディングは、高性能な半導体の製造に必要なEUV露光装置を製造できる唯一の半導体製造装置メーカーです。そして、半導体は「産業の米」と呼ばれるほど、現代の産業に欠かせない部品です。高性能な半導体の需要はますます高まると予想されることから、ASMLホールディングの今後の動向にも注目しましょう。

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