
バークレイズは、イギリスのロンドンに本社を置く国際的な金融グループです。個人向け・法人向けの銀行業務に加え、富裕層向けの資産管理や資産運用など、5つの事業を展開しています。本記事では、バークレイズの会社概要や経営状況、成長戦略について解説します。
バークレイズとはどんな会社?

出典:バークレイズ「Our strategy」
バークレイズは世界38カ国で事業を展開している国際的な金融グループです。日本においても金融機関、機関投資家、公的機関向けの金融サービスを提供しています。ここでは同社の会社概要や歴史、企業理念を紹介します。
会社概要
バークレイズの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | Barclays PLC |
本社 | イギリス |
創業 | 1690年 |
設立 | 1896年 |
進出地域 | 世界38カ国 |
従業員 | 約10万人 |
売上高 | 268億ポンド(2024年度) |
歴史
17世紀後半のロンドンには、金匠銀行家(金細工師による銀行業)と呼ばれる金融業者が数多く存在し、王家や商人に対して国際的な事業を展開するための資金を提供していました。
1690年、そうした銀行の一つとして、ジョン・フリーム氏とトーマス・グールド氏がロンバード通りで創業した銀行業がバークレイズの起源です。
1736年には、ジョン・フリーム氏の娘婿であるジェームズ・バークレイ氏が経営に加わり、「バークレイ」の名が社名に取り入れられました。1896年には、20の銀行が合併し、「バークレイ・アンド・カンパニー」が誕生。以降、買収や合併を繰り返し、1918年には英国5大銀行の一角を占めるまでに成長しました。
1925年には海外展開を本格化させ、アフリカ、中東、西インド諸島への進出を開始。1926年には支店数が1,837店に達しました。
2003年にはスペインの民間銀行「バンコ・サラゴサーノ」を買収し、2005年には南アフリカ最大の個人向け銀行「アブサ・グループ・リミテッド」の株式の過半数を取得。さらに2008年には、リーマン・ブラザーズ破綻に伴い、同社の北米投資銀行及び資本市場業務を買収しました。
このような積極的な拡大戦略により、バークレイズは現在、世界38カ国で事業を展開する国際的な金融グループへと発展しています。
企業理念
バークレイズの企業理念として、同社のパーパス(目的)、ビジョン(将来像)、バリュー(価値観)を紹介します。
■パーパス
「より良い経済的な未来のために協力する。」
■ビジョン
「イギリスを中心としたグローバル金融のリーダーになる。」
■バリュー
- 尊敬:共に働く人々を尊重し、信頼を構築する。
- 誠実さ:誠実さ、勇気、透明性、公平さを持って行動する。
- 奉仕:お客様のことを全ての中心に考えて行動する。
- 卓越性:最高のサービスを提供するため、持ちうる全ての力、能力、資源を活用する。
- 管理責任:運営方法及び社会に与える影響の改善に取り組む。
バークレイズの経営状況
バークレイズの経営状況として、直近6年間の売上高と純利益の推移を紹介します。

参考:バークレイズ「Annual Reports」
2024年度の売上高は268億ポンド(5兆920億円)で、2023年度の254億ポンド(4兆8,260億円)と比較して、14億ポンド(2,660億円)増加しました。また、2024年度の純利益は53億ポンド(1兆70億円)で、2023年度の43億ポンド(8,170億円)と比較して、10億ポンド(1,900億円)増加しました。
※1ポンド=190円換算
売上高・純利益が増加した要因は、各事業の成長が影響しており、その詳細は次章で解説します。
地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:バークレイズ「Annual Reports」
グラフから、同社の主要地域はイギリス・アメリカ大陸・ヨーロッパです。これらの地域で全体の売上高の94.9%を占めています。
バークレイズの事業別売上高の推移
バークレイズの経営状況について、事業別売上高に焦点を当てて解説します。同社の事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:バークレイズ「Annual Reports」
各事業の事業内容に加え、売上高と純利益の推移を紹介します。ただし、事業再編の影響により、各データは直近3年間分のみです。
Barclays Investment Bank
Barclays Investment Bankは、世界中の多国籍企業や機関投資家に向けて銀行業務を提供している事業です。売上高と純利益の推移は以下のとおりです。

参考:バークレイズ「Annual Reports」
2024年度の売上高は118億ポンド(2兆2,420億円)で、2023年度の110億ポンド(2兆900億円)と比較して、8億ポンド(1,520億円)増加しました。また、2024年度の純利益は25億ポンド(4,750億円)で、2023年度の20億ポンド(3,800億円)と比較して、5億ポンド(950億円)増加しました。
売上高と純利益が増加した要因は、顧客の金融商品及び現物株取引の活発化による収益増が挙げられます。
Barclays UK
Barclays UKは、イギリスにおける個人向け銀行業務を提供する事業です。売上高と純利益の推移は以下のとおりです。

参考:バークレイズ「Annual Reports」
2024年度の売上高は83億ポンド(1兆5,770億円)で、2023年度の76億ポンド(1兆4,440億円)と比較して、7億ポンド(1,330億円)増加しました。また、2024年度の純利益は25億ポンド(4,750億円)で、2023年度の20億ポンド(3,800億円)と比較して、5億ポンド(950億円)増加しました。
売上高と純利益が増加した要因は、イギリスのテスコ銀行買収により収益性が高まったことが挙げられます。
Barclays US Consumer Bank
Barclays US Consumer Bankは、アメリカで個人向け銀行業務を提供する事業です。売上高と純利益の推移は以下のとおりです。

参考:バークレイズ「Annual Reports」
2024年度の売上高は、2023年度と同水準の33億ポンド(6,270億円)でした。また、2024年度の純利益は3億ポンド(570億円)で、2023年度の1億3,000万ポンド(247億円)と比較して、1億7,000万ポンド(323億円)増加しました。
売上高が横ばいの要因は、クレジットカード残高や口座数の増加が為替変動の影響で相殺されたことが挙げられます。一方、純利益が増加した要因は、運用コストの改善と債権の売却が挙げられます。
Barclays UK Corporate Bank
Barclays UK Corporate Bankは、イギリスの中小企業及び中規模企業向けの銀行業務を提供する事業です。売上高と純利益の推移は以下のとおりです。

参考:バークレイズ「Annual Reports」
2024年度の売上高は、2023年度と同水準の18億ポンド(3,420億円)でした。また、2024年度の純利益は4億9,000万ポンド(931億円)で、2023年度の5億8,000万ポンド(1,102億円)と比較して、9,000万ポンド(171億円)減少しました。
売上高が横ばいの要因は、預金残高の増加による利息収入の増加が流動性プールからの収益減少で相殺されたことが挙げられます。また、純利益が減少した要因は、事業成長に向けた投資による支出や営業費用の増加が挙げられます。
Barclays Private Bank and Wealth Management
Barclays Private Bank and Wealth Managementは、富裕層向けの資産管理や資産運用を行う事業です。売上高と純利益の推移は以下のとおりです。

参考:バークレイズ「Annual Reports」
2024年度の売上高は13億ポンド(2,470億円)で、2023年度の12億ポンド(2,280億円)と比較して、1億ポンド(190億円)増加しました。一方、2024年度の純利益は2億9,000万ポンド(551億円)で、2023年度の3億3,000万ポンド(627億円)と比較して、4,000万ポンド(76億円)減少しました。
売上高が増加した要因は、新規顧客と顧客の資産の増加が挙げられます。一方、純利益が減少した要因は、事業成長に向けた投資による支出増が挙げられます。
バークレイズの成長戦略
バークレイズは、成長戦略として「よりシンプルで、より良く、よりバランスの取れた組織」への変革を掲げ、その実現に向けて「3年計画」を推進しています。この3年計画における2026年までの財務目標は以下のとおりです。
- 有形株主資本利益率:12%以上(10.5%)
- 売上高:300億ポンド(268億ポンド)
- 費用収益比率:50%台後半(62%)
- 株主還元総額:2024〜2026年の3年間で少なくとも100億ポンド(30億ポンド)
- コア資本比率:13~14%(13.6%)
※括弧内は2024年度の実績です。
つまり、同社は収益性の向上、効率性の強化、資本配分の最適化に注力しています。
まとめ
バークレイズは、330年以上の歴史を持つイギリスの国際的な金融グループです。個人、法人向けの銀行業務をはじめ、多様な事業を通じて売上高を拡大しています。今後も、国際的な金融市場において高い影響力を発揮することが予想されます。世界経済の流れを読み解く上でも、同社の動向に注目しましょう。