自動配膳ロボットとは、その名の通り飲食店において料理などを自動で配膳してくれるロボットのことです。ウィズコロナ時代の今、自動配膳ロボットを目にする機会が増えたと感じている方も多いでしょう。
本記事では、需要が高まっている自動配膳ロボットの世界の現状と、今後の展望について解説します。
自動配膳ロボットの世界市場規模
株式会社富士経済の「サービスロボット市場を調査」によると、2022年の自動配膳ロボットの世界市場規模は370億円でした。これは2021年と比較すると157.4%の増加です。2022年に大きく拡大した要因としては、人手不足の解消に向けた自動化・省人化のニーズが高まったためとみられています。
また同調査において、2030年の世界市場規模は605億円を見込んでいます。調査結果から、今後も導入店舗が増えていくといえるでしょう。
自動配膳ロボットの国内市場の現状
2022年の国内の市場規模は、株式会社富士経済の「サービスロボット市場を調査」によると、世界市場の約4割(約148億円)とのことです。
自動配膳ロボットに関する2022年の国内の注目すべき動きとして、すかいらーくグループの大量導入が挙げられます。
ガストやバーミヤンなどのチェーンを展開する「すかいらーくグループ」は、2021年に自動配膳ロボットの実証実験を開始し、本格導入を決定します。2021年末に約150店舗で180台だったのが、2022年には約2,100店舗に3,000台を導入したのです。
この大量導入は、同年の日本が世界に占めるシェア率を高める要因となったといえます。
自動配膳ロボットの技術と利点、導入メリット
自動配膳ロボットの自動運転の主な仕組みには、LiDAR(ライダー)とSLAM(スラム)があります。
LiDARとは「Light Detection and Ranging」の略で、レーザー光を照射して散乱光や反射光を測定し、対象との距離を測る仕組みです。
SLAMとは「Simultaneous Localization and Mapping」の略で、センサーを使い店舗内の環境地図を作成し、店舗のレイアウトを把握する技術です。
つまりLiDARとSLAMを組み合わせることで、店内のテーブルやいす、お客様を避けながら目的の位置まで移動できます。これらの技術の利点は、自動配膳ロボットに位置を知らせるマーカーを天井や床に設置する必要がない点です。
また店舗側にとって導入するメリットは以下のとおりです。
- 人手不足の状態でも飲食店を運営できる
- 生産性が向上する
- 物珍しさからお客様に喜ばれる
- 多くのお客様が非接触・非対面を安心と感じる傾向にある
これらのメリットにより、ウィズコロナ時代や人手不足が深刻な現代において需要が高まっているといえます。
自動配膳ロボットの導入が進んでいる国は?
自動配膳ロボットの導入が進んでいる国は、中国と韓国です。ここでは中国と韓国の自動配膳ロボットの導入状況と市場について解説します。
①中国
中国では、自動配膳ロボットの導入が急拡大しています。
餐宝典(New Catering Big Data)によると、中国の自動配膳ロボット市場は2019年に2.2億元(約44億円)に達しました。そして2025年には150億元(3,000億円)に拡大する見込みです。※1元=20円で換算
※2020年以降は推定
また中国では、「Keenon Robotics」と「Pudu Robotics」の製品が普及しています。Keenon Roboticsの李通CEOによると、同社の自動配膳ロボットは中国全土で1万台以上が導入されているとのことです。
②韓国
韓国ではコロナ禍において、感染者の移動経路や隔離、違反者への罰則などによる徹底した感染対策の「K防疫」が行われました。そのため、日本以上に非接触・非対面のサービスに関心があります。
そのような背景から韓国では、自動配膳ロボットに強い関心があり、市場も拡大傾向なのです。とくに大手外食チェーンや未来型レストランなどで、導入する動きが加速しています。
シェアを拡大している自動配膳ロボット企業
自動配膳ロボットを製造している主な企業は以下の3社です。
・Keenon Robotics
・Pudu Robotics
・Bear Robotics
それぞれの特徴や日本国内の導入事例について紹介します。
①Keenon Robotics/PEANUT
Keenon Roboticsは中国上海市に本社がある企業で、商用サービスロボットを製造しています。
Keenon Roboticsの自動配膳ロボットのなかで、日本で人気の製品は「PEANUT」です。SLAMと高性能LiDARにより、安定した自立走行ができるためです。また、AIにより複数のロボットが連携できるのも強みといえます。
Keenon Roboticsは、配膳ロボットの世界市場において80%を占める企業です。2010年代より、世界各地に自動配膳ロボットを導入した実績があります。日本では、幸楽苑や炭火焼肉悠々館などに導入しています。
②Pudu Robotics/BellaBot
出典:PuduRobotics
Pudu Roboticsは中国の深センに本社があり、自動配膳ロボットの研究・開発・設計・販売などをしている企業です。
代表的な製品は「BellaBot」です。「BellaBot」はネコ型の外見で、子どもから大人まで人気があります。
見た目に加えて、コミュニケーションも得意で会話ができたり、お誕生日ソングを歌えたりするのが特徴です。最大20台を同時に導入できるので、座席数の多い店舗やイベント施設での導入に向いています。
国内では、ガストやしゃぶ葉などの大型チェーン店で導入実績があります。
③Bear Robotics/Servi
Bear Roboticsはアメリカのシリコンバレーに本社を置く、韓国系スタートアップの企業です。ソフトバンクロボティクスなどの戦略的パートナーシップを通じて、自動配膳ロボットを韓国・日本・アメリカに販売しています。
代表的な製品は「Servi」です。Serviは、配膳・下膳をスムーズに行えるため、食べ放題の店舗であれば下膳専門として利用することもできます。
国内の導入事例は、かみむら牧場や100本のスプーンなどがあります。
自動配膳ロボット導入の課題
自動配膳ロボットの課題は、店内が込み合っている場合に作業効率が下がるケースがあることです。例えば、店内が込み合っているとセンサーが反応するため、進もうにも進めないといったことが起こるためです。
つまり忙しくなるほど、作業効率が落ちる可能性が高まります。加えて、高額なコストも課題です。
また導入する場合は、自動配送ロボットがスムーズに進めるように、幅広い通路を設けるなどの店内環境の整備も重要なポイントとなります。
配膳ロボットの今後の展望
デロイト トーマツ ミック経済研究所の「サービスロボットソリューション市場展望 2023年度版」によると、自動配膳ロボット導入の加速は続くと見込まれています。
非接触・非対面サービスの需要が高まり、今後も飲食店や小売店などで導入する動きが加速するとみているためです。また業務の自動化・省人化のために導入するケースも増えるでしょう。
まとめ
自動配膳ロボットは、ウィズコロナや人手不足が深刻な現代において需要が高まっています。今後も飲食店への導入が加速するとみられており、ロボットが人に代わって活躍する時代が近づいているといえるでしょう。世の中の変化についていくために、今後の展開や新しい技術革新にも注目していきたいところです。