インドの各都市にみる多様性と進出の見極め

世界第2位となる13億人という人口を誇るインド。南アジア最大とされる広大な国土の中には、多様な民族、言語、宗教を持った人々が暮らしており、現地では50kmごとに文化やビジネス習慣も変わると言われています。

今回は、現地調査の中で感じたインド進出における様々な可能性について、訪れた各都市(デリー、ムンバイ、アーメダバード)の様子を交えながらお伝えします。

ビジネスの障壁となっていた複雑な税制が一本化

2017年7月、インド独立後最大ともいえる税制改革が起こりました。
これまでインドでは一部の間接税を州が独自に定めていたため、複数の国税や州税が混在し、税体系は複雑を極めていました。
この問題は長らくビジネスの障壁となっていましたが、モディ政権の改革によって全国一律の物品サービス税(GST)が導入されたのです。

7月導入に向け、GST税率が決定

インドで間接税が全国統一 税率4種類、中央販売税は廃止

GSTではバラバラだった税体系を一本化し(関税は除く)、生活必需品や嗜好品といった品目ごとに4段階の税率を定めています。
これに伴い、州を越えて物品を取引する際に課せられていた中央販売税も一部廃止され、煩雑な手続きが簡素化・透明化されることになりました。

実態としては現在も製品ごとに税率の微調整を行っているところではありますが、複雑な税制の一本化によって、国内の市場が円滑化するだけでなく、インド進出を狙っていた海外企業にとってもビジネスをしやすい環境が整いつつあります。

「漠然としたイメージ」という見えない壁

とはいえ、インド進出における障壁は税制の問題だけではありません。
治安や衛生面に不安を感じる人も多いでしょうし、多様な宗教や言語が入り混じる環境もインド進出を躊躇する一因となっているのではないでしょうか。

その複雑さゆえにインドは“混沌の国”と呼ばれ、それが大きな魅力である一方、日本人にとってはなかなか馴染みづらい部分でもあります。こうしたイメージこそが、ある意味ではインド進出時の最も大きな壁となっているのです。

しかし、実際に現地を訪れてみると、インドという国に抱いている漠然としたイメージとはまた違った面も見えてきます。
不安要素の多い言語に関しても、ビジネスシーンではほぼ英語が通じるので支障はそれほど感じません。
広大で複雑な国だからこそ、インドにはさまざまな特色を持った都市が各地で発達しており、その中には喧騒や混沌といった従来のイメージとは異なる場所も存在しています。

異なる魅力を持ったインドの各都市

現地調査で訪れたデリー、ムンバイ、アーメダバード(アフマダーバード)の3都市を例に見ていきましょう。

デリー

デリー インド

インド北部に位置する首都デリーは、政府機関などの首都機能が集中する「ニューデリー」と、古くからある「オールドデリー」を中心に構成される巨大都市です。

近代的で整然としているニューデリーに対し、その東側にあるオールドデリーは名前の通り歴史の古い地区で、雑然とした雰囲気を持つ昔ながらの庶民の街です。
少し外れたところに足を運ぶと廃墟のような場所にホテルが建っていたり、一口にデリーといってもエリアによって大きく印象が変わります。

また、サウスデリーからグルガオン(現在はグルグラム)にかけては富裕層が住むエリア、イーストデリーは中流層以下が住むエリアなど住居や店舗、ショッピングモールの質などもエリアごとに明確に区切られています。

ムンバイ

ムンバイ インド

次に、インドの西海岸にあるムンバイ。インド最大の商業都市であり、ボリウッド(ムンバイの旧称「ボンベイ」と「ハリウッド」を組み合わせた造語)の名で知られるインド映画の中心地でもあります。

歴史的に織物産業を中心に発達したムンバイは、インドの主要港として古くから海外との貿易を盛んに行ってきました。現在は都市別でインド国内最大のGDPを誇っており、国内の70%の金融取引が行われている金融都市となっています。外資、内資の銀行の拠点や輸入代理店なども多く経済の首都とも言われています。

インドで最も土地が高い都市と言われ、海沿いの高級エリアではインド有数の財閥であるリライアンスグループの創業者やボリウッド俳優のシャールーク・カーンなどが住居を構えています。

日本でいうと神戸や横浜のようなイメージに近く、海外の文化をいち早く取り入れられる環境にあったため、文化面でも流行の最先端が集まる街となっています。

アーメダバード(アフマダーバード)

アーメダバード インド

インド西部に位置するアーメダバードは、人口600万人ほどの都市です。デリーやムンバイに比べるとこじんまりした印象を受けますが、アーメダバードがあるグジャラート州は自動車産業の集積地として近年は注目を集めています。
また、現在も市内中心地を流れるサバルマティ川の周辺を中心にホテルなどの開発が進んでおり、アーメダバードとムンバイの間には日本の新幹線システムを導入した高速鉄道の建設も予定されているなど、インフラの発展と共に今後の成長が期待される地域です。

イメージにとらわれず、各都市を見極めることが重要

このように、インドは都市ごとに異なる特色を持っており、各エリアでビジネスのコネクションも違うため、一括りに考えることが非常に難しい国です。

また、東南アジアに進出する場合はインドネシアならジャカルタ、タイならバンコクといったように地域を絞ることができますが、インドは大きな商業都市が点在しているため、進出先の見極めが難しい国でもあります。

そのため、パートナー企業や代理店を探す際にも各地の特徴を把握しつつ、自社の商材に適した都市、エリアを選定していく必要があります。そういう意味では、特色あるマーケットが多く存在するアメリカや中国と似ているかもしれません。

インド進出時には、国全体の漠然としたイメージにとらわれず、各都市の特色を把握して自社製品・サービスのターゲット層がいる地域を見極めることが重要となります。

そういった背景や状況に対応するためにプルーヴ社ではインド全般をカバーし、各都市(または各国)を横軸で同時に調査できることを大切にしています。

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