2025年G7サミット|開催地やスケジュール、議題候補を解説

2025年6月、主要先進国の首脳が集う「G7サミット(主要国会議)」が、カナダで開催される予定です。 

現在、世界は多くの深刻な課題に直面しています。例えば、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、米中対立の激化、そして気候変動対策の遅れなどです。 

これらの世界的な問題に対して、G7がどのような議論を交わし、どのような方向性を打ち出すのかは、今後のビジネス環境にも大きな影響があります。そこで本記事では、ビジネスパーソンに向けて、2025年G7サミットの概要と、注目される議題についてわかりやすく解説します。 

G7サミットとは?構成国とその役割 

G7サミットとは、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、日本の7カ国に欧州連合(EU)を加えた枠組みによる国際会議です。各国の首脳が参加し、毎年開催されています。 

G7サミットの役割は、世界経済や国政情勢、気候変動などの地球規模の課題について、各国の立場を共有しながら意見を交わすことです。会議での議論は、「首脳宣言」として文書にまとめられ、世界に向けて公表されます。 

G7とG20の違い 

G20は、G7の参加国に加え、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、さらに欧州連合(EU)と欧州中央銀行を含む計20の国・地域で構成される枠組みです。1999年からは「G20財務大臣・中央銀行総裁会議」が開催されており、主に金融政策や世界経済に関する議論が行われています。 

一方、G7サミットは、自由、民主主義、人権といった共通の価値観を持つ先進国を中心に構成され、経済だけでなく国際安全保障や地球規模の課題についても幅広く議論しています。
 つまり、2つの違いはG20が「多様な国々による経済協議の場」であるのに対し、G7が「価値観を共有する先進国による国際的な対話の場」と言えるでしょう。 

G7サミットの歴史と成果 

G7サミットの起源は1975年、当時のフランス大統領ヴァレリー・ジスカール・デスタン氏の提案により、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、日本の6カ国によって開催された「第1回先進国首脳会議」にさかのぼります。当初は「G6」としてスタートしましたが、1976年にカナダが加わり、現在の「G7」体制が確立されました。 

以降、議長国が毎年交代でサミットを主催し、世界的な課題に関する議論が継続的に行われています。 

G7サミットの代表的な成果は以下のとおりです。 

  • 2005年(グレンイーグルズ・サミット) 

アフリカ支援と、重債務貧困国に対する債務免除を合意 

  • 2015年(エルマウ・サミット) 

気候変動への強い決意を表明 

  • 2021年(コーンウォール・サミット) 

途上国への新型コロナウイルス対策やワクチン提供を合意 

このようにG7サミットは、その時々の国際的課題に対応し、各国の政策にも影響を与える重要な会議として位置づけられています。 
なお、1998年から2013年まではロシアも参加し、「G8」として運営されていましたが、2014年のクリミア併合を受けてロシアの参加が停止され、それ以降は再び「G7」体制に戻っています。 

2025年G7サミットの概要 

2025年のG7サミットは、カナダ西部のアルバータ州カナナスキスで、6月15日から17日の日程で開催される予定です。カナナスキスでのサミット開催は2002年以来2度目であり、カナダでの開催自体は2018年のシャルルボワ以来となります。 

注目すべきは、2025年4月28日に実施されたカナダの総選挙で、マーク・カーニー首相率いる自由党が過半数を確保し、政権を維持したことです。新政権は対米関係において強硬姿勢を取っており、今後の国際協調や議論に影響を与える可能性があります。
なお、カナダ総選挙の注目点については、別記事「2025年カナダ総選挙!首相の選出プロセスと注目ポイントを解説」にて詳しく紹介しています。 

2025年G7サミットの議題候補 

2025年のG7サミットの議題は、正式に発表されていません。しかし、近年の国際情勢や経済環境を踏まえると、取り上げられる可能性の高いテーマはいくつかあります。ここでは、そうした議題候補を紹介します。 

ウクライナ情勢 

ロシアによるウクライナ侵攻は、国際秩序への重大な挑戦として、G7はこれまでウクライナ支援とロシアへの制裁を強化してきました。また、2025年3月12日から15日にかけて開催されたG7外相会合では、ウクライナを支持する共同声明が採択されています。さらに、トランプ米大統領がロシア・ウクライナの仲介役として、停戦の実現に向けた交渉を継続していることから、2025年G7サミットにおいても主要議題の一つとなる見通しです。なお、2025年G7サミットにはウクライナのゼレンスキー大統領の参加も予定されています。 

参考:Reuters「G7外相会合、ウクライナ支持で一致・対中硬化 米も「満足」」 

中東情勢 

2023年以降、パレスチナとイスラエルの戦争が続いており、さらに2024年にはシリアでアサド政権が崩壊するなど、中東地域は極めて不安定な状況が続いています。こうした情勢は、国際社会にとって深刻な懸念材料であり、人道支援の強化や停戦合意の実現が強く求められています。 

エネルギー安全保障の観点からも中東情勢の安定化は重要な課題です。原油価格の高騰によって、すでに世界経済に大きな影響を与えていることから、G7でも優先順位の高い議題として扱われる可能性があります。 
また、イランとの核合意の再交渉をめぐる米国の動きも活発化しており、こうした外交的な進展や課題についても、G7サミットで取り上げられる可能性があると見られます。 

対中政策 

近年、米国は中国に対して強硬な姿勢を貫いており、関税の引き上げなどを通じて両国の対立が激化しています。加えて、2025年のG7サミットの議長国であるカナダも、中国の貿易慣行に懸念を示しており、対中政策は主要な議題の一つとなる見通しです。 

一方、トランプ米大統領が推進する相互関税政策の影響で、G7内部の結束にほころびが見え始めているとの指摘もあります。そのため、G7サミットで各国がどのような対中方針で足並みをそろえるのかが注目されています。 
相互関税について詳しく知りたい方は、関連記事「トランプ政権の“相互関税”がもたらす世界再編~日本企業が備えるべき変化とは~」も併せてご覧ください。 

海洋安全保障 

台湾海峡や南シナ海をめぐる緊張が高まる中、これらの地域における平和と安定の維持は、ますます重要になっています。さらに、世界経済の安定と繁栄を支えるために、「自由で開かれたインド太平洋」の重要性も高まっています。こうした背景から、2025年のG7サミットでは、「海洋安全保障」に関して議論される見通しです。 

米国の関税政策 

世界経済に大きな影響を与えている要因の一つが、トランプ米政権による「相互関税」政策です。日本との交渉も進められていますが、その合意内容は依然として不透明な状況です。特に、自動車、半導体、鉄鋼といった主要産業への影響が懸念されており、各国が米国に対してどのような対応を取るのか、また日米間の関税交渉の行方が注目されています。このような背景から、米国の関税政策は2025年のG7サミットでも重要な議題として取り上げられる可能性があります。 

グローバルサウスとの連携 

2023年に広島で開催されたG7サミットでは、「グローバルサウス」との関係強化が主要な議題の一つとなりました。今後、グローバルサウスは人口の増加や市場の拡大により、国際社会における影響力を一層高めていくと予測されています。そのため、先進国にとって同地域との連携を深めることは重要な課題です。さらに、中国やロシアがグローバルサウスへの影響力を強めていることに対する懸念もあります。このような背景から、2025年G7サミットにおいても、同地域への支援や連携の在り方が議題に上る可能性が高いと見られます。 
グローバルサウスについて詳しく知りたい方は、関連記事「グローバルサウスとは?抱える課題や日本との関係をわかりやすく解説」を併せてご覧ください。 

気候変動対策 

全人類にとって喫緊の課題である「気候変動対策」は、2025年G7サミットにおいても重要な議題と考えられます。これまでのサミットでも、温室効果ガスの削減、再生可能エネルギーの導入促進、炭素市場の整備などが議論されてきました。これらの取り組みは規制強化や政策変更につながる可能性があるため、経済活動への影響が大きく、注視が必要です。 

G7サミットからビジネスチャンスを見出そう 

G7サミットでは、世界経済に大きな影響を与える重要な方針が示されます。特に、対中政策や気候変動対策といったテーマは、日本企業の経済活動にも直接的な影響を及ぼす可能性があります。 

2025年はカナダで3日間にわたって開催され、様々な重要議題が話し合われる予定です。このようなG7サミットの議題や議論の内容を把握することは、ビジネスパーソンにとって、新たなビジネスチャンスを見出す手がかりとなるでしょう。 

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