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サウジAramcoの現地調達はなぜ「70%達成」で終わらないのか
2026.08.09 更新 / PROVE通信編集部
監修:森英朗(グループ代表)
サウジAramcoの現地調達はなぜ「70%達成」で終わらないのか

サウジAramcoの現地調達はなぜ「70%達成」で終わらないのか

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2026年2月11日、Saudi Aramcoは旗艦プログラム「iktva(In-Kingdom Total Value Add)」が現地調達比率70%の目標を達成したと公式に発表しました。同時に、財・サービスの調達における現地調達を2030年までに75%へ引き上げる意向も示しています。開始時点の水準は2015年頃に約35%、2024年時点では約67%とForum発表で説明されてきた流れの延長線上にあり、70%は終着点ではなく通過点です。日系の装置・EPC(設計・調達・建設)・化学品・商社にとっては、「達成ニュース」で終わるか、「次の5ポイント」の入札条件を読み込むかで対応が分かれます。本稿では、2015年のプログラム開始から2026年2月の70%達成、2030年の75%意向までを時系列で追い、日系企業が次にどこを見るべきかを整理します。

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当コラムで注目する用語

  • iktva(In-Kingdom Total Value Add):サウジアラムコが運営する現地調達比率の向上プログラム。調達スコアと契約継続に直結する。
  • 現地調達比率(local content):調達先企業が現地でどれだけ価値を生み出しているかを示す比率。iktvaの評価軸そのもの。
  • EPC:設計(Engineering)・調達(Procurement)・建設(Construction)を一括で請け負う事業形態。

2015〜2016——輸入依存の供給網に「現地比率」が入った

Aramcoは2015〜2016年頃にiktvaを本格化し、調達の評価軸に現地価値(local content)を組み込みました。当時の説明では、開始時点の現地調達はおおむね3割台で、大型プロジェクトの多くが輸入機器と海外コントラクターに依存していた時期です。ここで変わったのは、「価格と納期だけで勝つ」から「現地でどれだけ価値を残すか」への転換でした。日系企業が最初に誤解しやすいのは、これをCSRや寄付の話だと読んでしまう点です。実態は、調達スコアと契約継続に直結するサプライチェーン政策でした。ルールが変わった瞬間から、工場立地・人材・JV(合弁事業)の設計が受注の前提になります。この前提を稟議に反映できない会社は、見積もり段階で採点項目そのものが欠落し、価格を下げても挽回できません。入札後に気づいてからでは、埋め合わせる余地はほとんど残っていません。

2010年代後半——「機会リスト」が産業政策になった

この時期に広がったのは、機会の可視化です。iktvaは12の重点セクターにまたがる200件超の現地化機会を示し、年間市場規模として約280億ドル規模を提示してきました(件数は発表により「200超」「210」など表現差あり)。これは単なる努力目標ではなく、どこに工場を建て、どの製品を初めてサウジで作るかを、調達側が先に示す仕組みです。主導権は「需要があるから来る」側ではなく、「来るべき製品を先に定義する」側に移りました。日系の部品・材料メーカーにとって、従来型のカタログ営業だけでは商談の入り口に立てません。機会リスト上でまだ埋まっていない工程に、自社の生産ラインを当てはめた提案書が要ります。そこが噛み合わない提案は価格が良くても優先順位が下がり、Forumのたびに同じ順番待ちを繰り返します。75%局面の短名簿に入るかどうかは、価格ではなくこの噛み合わせ方で決まります。

Forumと地域会合——「来てほしい国」を世界に呼ぶ仕組み

プログラムは、Dhahranの旗艦Forumに加え、2025年には世界各地で8回の地域サプライヤー会合を開いた、とAramcoは説明しています。調達の現地化を国内の通達だけで進めるのではなく、投資誘致の営業イベントとして回している点も見逃せません。2025年1月のForumでは、約145件・約90億ドル規模の合意・MOU(覚書)を結んだ、との発表もありました(金額・件数はForum時点の公式)。日系企業が見るべきは、サインの華やかさより、合意が工場・雇用・輸出に落ちるまでの時間軸です。MOUを結んだ翌年になっても立地調査が止まっている案件は、次のForumで優先度を下げられます。現地パートナーと工程表を先に固定し、監査で進捗を問われたときに答えられる状態にしておくことが、それを避ける唯一の方法です。

2024——67%まで来て、残り3ポイントが見えた

Forum時点の説明では、調達のiktvaスコアは2015年の約35%から2024年の約67%へ上昇した、とされています。この67%という数字を境に、「あと少しで70%」という心理が調達側と供給側の両方に広がりました。残り数ポイントは、簡単な組み立てや倉庫では埋まりにくく、高付加価値の製造・メンテ・デジタル・材料の現地化が必要になります。日系にとっての含意は明確です。すでにサウジに拠点がある会社は、スコアを押し上げる工程の追加投資が次の契約条件になります。拠点がない会社は輸出だけではスコアに寄与しにくく、JVか現地製造の検討が避けられません。この検討を先延ばしにすれば、2026年以降の入札では、これまでの原油の取引関係も加点材料にならず、採用にはつながりにくくなります。

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2026年2月——70%達成と、同時に出た75%の次目標

2026年2月11日の発表で、Aramcoは70%達成を宣言し、同時に2030年までの75%意向を示しました。達成と次の目標を同じ日に出す組み合わせは、「ゴールテープを切った」のではなく「次のレースのスタートラインを引いた」というメッセージになります。公式は、プログラム開始以来サウジGDP(国内総生産)へ2,800億ドル超の寄与、対内投資90億ドル、直接・間接で20万人超の雇用、35か国から350件超の新規製造投資、47の戦略製品を国内で初めて製造、といった成果も並べています。数字の読み方を誤ると、この発表は祝祭ニュースとして消費されて終わります。正しい読み方は、次の5ポイント分がどのセクターに残っているかを問うことです。そのセクターを名指しできない社内資料は、公式リリースをなぞっただけの要約にとどまり、次の四半期の投資判断を後押しする材料にはなりません。

なぜ「達成」で終わらないのか——調達はまだ伸びしろがある

70%から75%への5ポイントは、見た目より重いです。すでに現地化した汎用品の上積みではなく、まだ輸入依存が残る高難度品・サービスが中心になります。公式が示す年間280億ドル規模の機会と、12セクターに残る未着手の工程は、ここに集中しています。比率の加算ではなく供給網そのものの再設計が本質で、地政学リスクやコストインフレへの耐性を高めるため、という説明も公式にあります。日系企業が「もう現地化は一段落」と読むと、次の大型メンテナンスや増設で候補から外されます。一段落したのは第1目標にすぎず、第2目標の合否を分けるのは品質・認証・サウジ人材の深度です。深度が乏しい拠点は現地調達比率への貢献分が小さいと評価され、社内の稟議でも投資対効果を問われて縮小候補に挙がりやすくなります。

日系企業にとっての転換——原油の得意先から、調達の採点対象へ

日本は長年、サウジ原油の主要顧客でした。Aramco Japanの説明でも、日本・台湾とのパートナーシップが強調されています。ただし、この関係はもはや「買う側」だけでは済みません。iktvaの下では、日系は装置・EPC・化学品・メンテ・デジタルの供給側として採点されます。石化では住友化学とAramcoのPetro Rabighのように、JVの資本関係そのものが再編の対象になった事例もあります(個別条件は各社開示に依存)。重要なのは社名の列挙ではなく、構造の変化です。原油の取引関係があっても、現地調達スコアを上げる工場・人材・輸出ハブの設計がなければ、次のプロジェクトで優先供給者には選ばれません。採点表の項目を自社の製品仕様に落とし込んだ提案がなければ、関係は挨拶程度にとどまり、次の大型メンテナンスの発注対象からも外れます。

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実務の分岐——輸出継続/現地組立/本格製造の三択

分岐は3つです。A:完成品輸出を続け、スコアへの寄与はパートナー経由に任せる(短期は楽ですが、中期には対象案件が絞られます)。B:現地組立・在庫・サービス拠点でスコアの一部を取る(投資は中程度で、高難度品には不足します)。C:戦略製品リストや機会リストに乗る本格製造・JV(投資は大きいものの、70→75%局面では必要性が高まります)。中堅企業の現実解は、Bから始めつつCの候補工程を1つ決めることです。自社のどの工程が47の「初の国産」に続く候補かを、今のうちに社内で指名しておくことが要ります。Aの延長線上に留まったまま先送りすれば、2030年の75%局面までに間に合わず、原油の得意先としての関係は残っても、次のForumの発注対象や調達の候補からは外れていきます。

現場でまず直したい理解——「70%達成=入札が緩くなる」ではない

誤解の1つ目は、目標達成で審査が緩む、という読みです。実際は次の目標が示されており、審査はむしろ高難度側へ重心が移ります。2つ目は、現地法人を置けばスコアが自然に上がる、という思い込みです。スコアは、何を作り、誰を雇い、どれだけ王国に価値を残したかで決まります。3つ目は、ForumのMOU件数がそのまま実工場の数になる、という誤解です。合意と稼働は別物です。正しく時系列を読むなら、自社の投資判断は2015年のルール変更→機会リスト→67%→70%→75%意向という線の上に載せて考えるべきです。「原油の取引関係があるから大丈夫」という理屈は、この線を無視した古い前提であり、そのまま調達部門に持ち込んでも提案は通りません。現地チームの信頼を保つには、この前提を更新したうえで提案することが欠かせません。

この先の90日——75%局面で日系が先に書くべき一枚

90日でやることは次です。(1) 自社製品がiktvaの機会リスト/12セクターのどこに入るかを一枚にする。(2) 現状が輸出・組立・製造のどれかを正直に書き、次の一段を決める。(3) サウジ人材・認証・メンテ契約を、価格表と同じページに載せる。(4) 2025年Forum/地域会合のフォロー案件があれば、稼働マイルストーンを更新する。(5) 経営会議には「70%達成おめでとう」ではなく、「75%までに埋める工程と、その担当・期限」を出す。工程と期限を書けない資料は評価対象になりません。逆に、この2点まで書き込めた資料だけが、次の四半期の投資と提携の意思決定を動かせます。サウジの調達条件は、達成発表のあとにこそ厳しくなるのが実情です。この90日で一枚をまとめた会社から、次のForumで優先的な扱いを受けられるようになります。

読み解きのポイント ①2026-02-11にiktva 70%達成を公式発表 ②同時に2030年75%意向 ③GDP寄与2,800億ドル超・投資90億ドル・雇用20万人超 ④35か国350件超の製造投資・47製品を国内初製造 ⑤日系は原油顧客から調達採点対象へ——輸出/組立/製造の分岐

Aramcoのiktvaは、70%で終わりません。達成の日に次の目標が示された以上、日系企業が見るべきは達成の華やかさではなく、次の5ポイント分の空白です。この空白を自社の製品や工程に反映できる会社だけが、2030年までの調達に残ります。反映が甘いままの議論は公式発表の後追い説明で終わり、投資委員会を動かす具体策にはなりません。

よくある質問

Q. 70%はいつ達成と発表されましたか?

Aramco公式は2026年2月11日付で、iktvaが現地調達70%目標を達成したと発表しています。

Q. 次の目標は何ですか?

財・サービスの調達における現地調達を、2030年までに75%へ引き上げる意向が示されています。

Q. 日系は何をすればよいですか?

機会リスト上の空白に自社工程を当て、輸出・組立・本格製造のどこまで踏み込むかを決めることです。

Q. 原油の取引関係があれば十分ですか?

不十分です。iktva下では供給側の現地価値が採点され、関係だけでは次の入札を保証しません。

主な出典

Aramco「Aramco achieves 70% local content target through flagship iktva program」(2026-02-11)/Aramco Japan iktva解説ページ/Aramco「iktva Forum & Exhibition 2025」関連発表(合意件数・当時スコア)/MEED等の二次整理(開始年の補足)。

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※2026年8月時点の情報をもとに作成しています。監修:森英朗(グループ代表)。

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