BASF(ビーエーエスエフ)は、ドイツに本社を置く世界最大の総合化学メーカーです。日本との関わりも長く、1888年に進出して以来、現在も事業を展開しています。本記事では、BASFの会社概要や経営状況、成長戦略について紹介します。
BASFとはどんな会社
出典:BASF
BASFは、石油化学品・中間体・パフォーマンスマテリアルズなどを取り扱っている総合化学メーカーです。この章では、BASFの会社概要や歴史、事業内容を紹介します。※中間体とは、原料から目的の化合物になるまでの途中の化合物です。
会社概要
BASFの会社概要は以下のとおりです。
会社名 | BASF SE |
本社 | ドイツ |
設立 | 1865年 |
生産拠点 | 93カ国に234拠点 |
従業員数 | 111,991人(2023年度) |
売上高 | 689億ユーロ(2023年度) |
歴史
BASFの歴史の始まりは、1865年に創業者のフリードリヒ・エンゲルホルン氏がドイツのルートヴィッヒスハーフェンに、バーディシェ・アニリン・ウント・ソーダ・ファブリーク社(Badische Anilin-& Soda-Fabrik)を設立したことです。当初は、染料や無機化学薬品の生産を主な事業としていました。
1906年には、同社のカール・ボッシュ氏とフリッツ・ハーバー氏によって、ハーバー・ボッシュ法が開発されました。ハーバー・ボッシュ法はアンモニアの生産方法の1つで、「空気からパンを作る」と言われるほど画期的な発明です。この発明により、化学肥料の大量生産が可能になり、食料生産量が急増して20世紀以降の人口増加を支えました。
1951年には、プラスチックのスタイロポールの生産を開始します。スタイロポールは98%が空気で構成されており、断熱性に優れた素材です。断熱材や包装材として人気を博しました。1965年からは海外に製造拠点を開設すると同時に、アメリカへのさらなる投資を行うことで、世界中の市場で存在感を強めました。
事業内容
BASFは現在、6つの事業を展開しています。各事業の事業内容について解説します。
- サーフェステクノロジー
サーフェステクノロジー事業は、触媒部門とコーティング部門で構成され、触媒やバッテリー材料の開発、自動車のコーティングなどを行う事業です。
- マテリアル
マテリアル事業は、パフォーマンスマテリアル部門とモノマー部門で構成され、先端材料やプラスチック製品を展開している事業です。
- ケミカル
ケミカル事業は、石油化学品部門と中間体部門で構成され、他の部門に基礎化学品や中間体を供給している事業です。
- アグロソリューション
アグロソリューション事業は、種子処理や農家の収穫量の向上を目的としたソリューションを開発している事業です。
- インダストリアル・ソリューション
インダストリアル・ソリューション事業は、ディスパージョン&レジン部門とパフォーマンスケミカル部門で構成され、産業用の原料及び添加剤の開発と販売を行っている事業です。
- ニュートリション&ケア
ニュートリション&ケア事業は、ケアケミカルズ部門とニュートリション&ヘルス部門で構成され、化粧品や洗剤などの日用消費財を開発・販売している事業です。
BASFの経営状況
BASFの経営状況として、過去6年間の売上高・営業利益の推移を紹介します。
参考:BASF「Ten-year Summary」
2023年度の売上高は689億ユーロ(10兆3,350億円)で、2022年度の873億ユーロ(13兆950億円)から184億ユーロ(2兆7,600億円)減少しました。2023年度の営業利益は22億ユーロ(3,300億円)で、2022年度の65億ユーロ(9,750億円)から43億ユーロ(6,450億円)減少しました。2023年度の経営状況が悪化した要因として、販売価格の低下と販売数の減少、為替の影響が挙げられます。※1ユーロ=150円換算
また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:BASF「Reporting」
地域別売上高の構成割合より、BASFの主要地域はヨーロッパ・北アメリカ・アジア太平洋地域と言えます。
BASFの事業別売上高の推移
BASFの経営状況を深掘りするために、この章では事業別の売上高に焦点を当てて解説します。まず、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。
参考:BASF「Reporting」
さらに、各事業の売上高と営業利益の推移を紹介します。
サーフェステクノロジー
サーフェステクノロジー事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:BASF「Reporting」
2023年度の売上高は162億ユーロ(2兆4,300億円)で、2022年度の212億ユーロ(3兆1,800億円)から50億ユーロ(7,500億円)減少しました。2023年度の営業利益は3億6,000万ユーロ(540億円)で、2022年度の6億1,000万ユーロ(915億円)から2億5,000万ユーロ(375億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した理由として、販売数の減少が挙げられます。
マテリアル
マテリアル事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:BASF「Reporting」
2023年度の売上高は141億ユーロ(2兆1,150億円)で、2022年度の184億ユーロ(2兆7,600億円)から43億ユーロ(6,450億円)減少しました。2023年度の営業利益は3億7,000万ユーロ(555億円)で、2022年度の17億7,000万ユーロ(2,655億円)から14億ユーロ(2,100億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した理由として、販売価格の低下と販売数の減少が挙げられます。
ケミカル
ケミカル事業の売上高・営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:BASF「Reporting」
2023年度の売上高は103億ユーロ(1兆5,450億円)で、2022年度の148億ユーロ(2兆2,200億円)から45億ユーロ(6,750億円) 減少しました。2023年度の営業利益は3億6,000万ユーロ(540億円)で、2022年度の17億5,000万ユーロ(2,625億円)から13億9,000万ユーロ(2,085億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した理由として、需要の低迷による販売数の減少が挙げられます。
アグロソリューション
アグロソリューションの売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:BASF「Reporting」
2023年度の売上高は100億ユーロ(1兆5,000億円)で、2022年度の102億ユーロ(1兆5,300億円)から2億ユーロ(300億円)減少しました。2023年度の営業利益は11億3,000万ユーロ(1,695億円)で、2022年の12億2,000万ユーロ(1,830億円)から9,000万ユーロ(135億円)減少しました。売上高と営業利益が微減した理由として、販売数が伸び悩んだことが挙げられます。
インダストリアル・ソリューション
インダストリアル・ソリューション事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:BASF「Reporting」
2023年度の売上高は80億ユーロ(1兆2,000億円)で、2022年度の99億ユーロ(1兆4,850億円)から19億ユーロ(2,850億円)減少しました。2023年度の営業利益は6億6,000万ユーロ(990億円)で、2022年度の10億9,000万ユーロ(1,635億円)から4億3,000万ユーロ(645億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した理由として、販売数の減少が挙げられます。
ニュートリション&ケア
ニュートリション&ケア事業の売上高と営業利益の推移は以下のとおりです。
参考:BASF「Reporting」
2023年度の売上高は68億ユーロ(1兆200億円)で、2022年度の80億ユーロ(1兆2,000億円)から12億ユーロ(1,800億円)減少しました。2023年度の営業利益は1億1,000万ユーロ(165億円)で、2022年度の6億ユーロ(900億円)から4億9,000万ユーロ(735億円)減少しました。売上高と営業利益が減少した理由として、販売価格の低下と販売数の減少が挙げられます。
BASFの成長戦略
BASFは成長戦略として、2024年9月26日に「Winning Ways(勝利への道)」戦略を発表しました。同戦略では、以下の4つの柱により成長を目指すとのことです。
- Focus(集中)
マテリアル事業、ケミカル事業、インダストリアル・ソリューション事業、ニュートリション&ケア事業を中核事業に位置付けて集中すること。
- Accelerate(加速)
各事業部門の権限を強化し、価値創出のスピードアップと組織の簡素化を達成すること。
- Transform(変革)
グリーントランスフォーメーションを推進すること。※グリーントランスフォーメーションとは、クリーンエネルギーを中心とした社会へ転換する取り組みのこと。
- Win(勝利)
BASF全体における結果責任やスピード、パフォーマンス志向を向上すること。
BASFの事業展開の仕方を参考にしよう
BASFは、世界最大の総合化学メーカーで、93カ国に234の拠点を持っています。2023年度の売上高と営業利益は、2022年度と比べて大幅に減少しましたが、それでも689億ユーロ(10兆3,350億円)という大きな売上高を達成しています。同社の特徴は、6つの事業を通じて幅広い分野で製品を展開していることです。海外進出を検討している経営者様は、1つの手法としてBASFの事業展開の仕方を参考にしてみてはいかがでしょうか。