ダウ(Dow Inc.)とはどんな会社?会社概要や業績を紹介

ダウ(Dow Inc.)は、アメリカに本社を置く世界有数の化学メーカーです。同社は、アメリカ企業の職場の多様性や公平性を評価するFair360の「2024年トップ50企業」において、3位に選出されました。また、フォーチュン誌の「働きがいのある会社100選」にも4年連続でランクインしており、包括性・多様性・公平性を推進していると評価されています。本記事ではダウの会社概要や経営状況、成長戦略について紹介します。

ダウとはどんな会社

出典:ダウ

ダウはプラスチックや産業用中間体、コーティングなどの分野において製品を提供しているアメリカ企業です。日本との関係も深く、日本企業の東レ株式会社と合弁会社「ダウ・東レ株式会社」を設立し、シリコーンをベースとした高機能材料の開発及び販売も行っています。この章では、同社の会社概要や歴史、企業理念を紹介します。※中間体とは、原料から目的の化合物になるまでの途中の化合物です。

会社概要

ダウの会社概要は以下のとおりです。

会社名Dow Inc.(持株会社)
本社アメリカ
設立2018年
生産拠点31カ国に98拠点
従業員数35,900人(2023年度)
売上高446億ユーロ(2023年度)

歴史

1897年、創業者のハーバート・ヘンリー・ダウ(H.H.ダウ)氏は、ダウ・ケミカルを設立しました。H.H.ダウ氏は、1891年に電流を使用して塩水から臭素を抽出するダウ法を発明した人物です。ダウ・ケミカルは同氏が設立した3社目で、それまでの1社目は倒産、2社目(ミッドランド・ケミカル)では出資者から経営の座を追われました。

そして、ダウ・ケミカルでは1898年に漂白剤の生産を開始しました。1900年には、H.H.ダウ氏が2社目に設立したミッドランド・ケミカルを買収・合併します。

1920年代以降、H.H.ダウ氏は有機化学の研究を優先し、農業・製薬・浄水・エネルギー・自動車産業向けの様々な化学製品を開発しました。

1942年にはカナダへの進出を開始し、1947年には石油とガスの生産を開始します。1952年には旭ダウ株式会社を日本に設立し、1953年には家庭用サランラップを発売しました。

1960年代以降は急成長を遂げ、世界中に製造工場を設立しました。このように事業の多様化、世界進出を推進し、現在では31カ国に98の生産拠点を持つグローバル企業に成長しています。

企業理念

ダウの目的と目標は、同社がサービスを提供する市場の持続可能性と循環性の改善、コミュニティの発展と健康に積極的に貢献し、包括性・多様性・公平性のある文化を育成することです。

その実現のために、以下の3つの価値観を重視しています。

  • 誠実さ

倫理基準を維持することに尽力すること。

  • 人々への敬意

すべての人間に本来備わっている価値を信じること。

  • 地球を守る

世界の資源を保護すること。

ダウの経営状況

ダウの経営状況として、過去6年間の売上高・EBITの推移を紹介します。※EBITとは、金利税引前利益のことです。

出典:ダウ「Annual Reports

2023年度の売上高は446億ドル(6兆6,900億円)で、2022年度の569億ドル(8兆5,350億円)から123億ドル(1兆8,450億円)減少しました。2023年度のEBITは27億ドル(4,050億円)で、2022年度の65億ドル(9,750億円)から38億ドル(5,700億円)減少しました。売上高とEBITが減少した要因として、世界の経済活動の減速による価格と需要の低下が挙げられます。※1ドル=150円換算

また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

出典:ダウ「Annual Reports

地域別売上高の構成割合から、同社は世界の各地域で売上を確保していることがわかります。

ダウの事業別売上高の推移

ダウの経営状況を深掘りするために、この章では事業別の売上高に焦点を当てて解説します。まず、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

出典:ダウ「Annual Reports

さらに、各事業の内容、売上高とEBITの推移を紹介します。

パッケージング・スペシャリティプラスチック

パッケージング・スペシャリティプラスチック事業は、ポリエチレンやプロピレンといった高分子樹脂製品をモビリティや送配電インフラストラクチャー、再生可能エネルギー分野などに提供する事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

出典:ダウ「Annual Reports

2023年度の売上高は231億ドル(3兆4,650億円)で、2022年度の292億ドル(4兆3,800億円)から61億ドル(9,150億円)減少しました。2023年度のEBITは27億ドル(4,050億円)で、2022年度の41億ドル(6,150億円)から14億ドル(2,100億円)減少しました。減少した主な要因として、製品価格の低下と販売数の減少が挙げられます。

産業用中間体・インフラストラクチャー

産業用中間体・インフラストラクチャー事業は、洗剤・農薬・医薬品・エレクトロニクスなどの製造プロセスに不可欠な中間体を開発・販売する事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

出典:ダウ「Annual Reports

2023年度の売上高は125億ドル(1兆8,750億円)で、2022年度の166億ドル(2兆4,900億円)から41億ドル(6,150億円)減少しました。2023年度のEBITは1億2,000万ドル(180億円)で、2022年度の14億1,000万ドル(2,115億円)から12億9,000万ドル(1,935億円)減少しました。減少した主な要因として、製品価格の低下と販売数の減少に加えて、為替の影響が挙げられます。

パフォーマンスマテリアルズ・コーティング

パフォーマンスマテリアルズ・コーティング事業は、電子機器・モビリティ・工業用品・インフラストラクチャーなどの分野に向けて塗料を提供する事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

出典:ダウ「Annual Reports

2023年度の売上高は84億ドル(1兆2,600億円)で、2022年度の107億ドル(1兆6,050億円)から23億ドル(3,450億円)減少しました。2023年度のEBITは2億1,000万ドル(315億円)で、2022年度の13億2,000万ドル(1,980億円)から11億1,000万ドル(1,665億円)減少しました。減少した主な要因として、製品価格の低下と販売数の減少に加えて、為替の影響が挙げられます。

ダウの成長戦略

ダウは持続可能な化学メーカーを目指しており、成長戦略として「脱炭素化と成長」及び「廃棄物の変革」戦略を掲げています。具体的な目標は以下のとおりです。

・脱炭素化と成長として、2030年までにスコープ1及び2の温室効果ガスの排出量を15%削減し、同時に年間収益を30億ドル以上増やすこと。※スコープ1は自社設備などから排出される温室効果ガス、スコープ2は外部から購入したエネルギーなどを作る際に排出される温室効果ガスのことです。

・廃棄物の変革として、年間300万トンの廃棄物を循環型及び再生可能ソリューションで商品化し、2030年までに年間5億ドル以上の収益を増やすこと。

また、2024年5月2日、同社はパッケージング・スペシャリティプラスチック事業内の柔軟包装積層接着剤事業を、Arkemaに売却することに合意したことを発表しました。この売却益は、成長戦略を加速させる費用に充てるとしています。

ダウの今後の動向に注目しよう

ダウは世界有数の化学メーカーですが、2023年度の業績は売上高とEBITが減少しました。そのため、事業の売却により収益力を強化する予定です。今後は事業の売却による収益をどの分野に投資して、どのように成長戦略を実現するのかに注目してみましょう。

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