イーストマン・ケミカルとはどんな会社?会社概要や業績を徹底解説

イーストマン・ケミカルは、アメリカに本社を置く化学メーカーです。持続可能性を追求した繊維の開発・販売など、サステナビリティを推進している企業として評価されています。本記事ではイーストマン・ケミカルの会社概要や経営状況、成長戦略を紹介します。

イーストマン・ケミカルとはどんな会社

出典:イーストマン・ケミカル

イーストマン・ケミカルは先端材料や中間体、繊維などの開発・販売を行っている化学メーカーです。この章では同社の会社概要や歴史、経営理念を紹介します。

会社概要

イーストマン・ケミカルの会社概要は以下のとおりです。

会社名Eastman Chemical Company
本社アメリカ
設立1920年
進出地域100カ国以上
従業員数14,000人(2023年度)
売上高92億ドル(2023年度)

歴史

イーストマン・ケミカルは1920年、イーストマン・コダックの写真事業の原材料を供給するために、ジョージ・イーストマン氏により設立されました。ジョージ・イーストマン氏はイーストマン・コダックの創業者で、世界初のロールフィルムの開発に成功し、映画産業の発展にも貢献した人物です。

イーストマン・ケミカルは設立当初、数種類の化学薬品を供給していました。1930年以降には、ハイドロキノンや酢酸の生産を開始し、それらは現在も生産が続いています。

1960年代にはイギリスに工場を開設して繊維の生産を開始しました。1994年にはイーストマン・コダックから分離し、当時のアメリカで10番目、世界で34番目に大きい化学メーカーになりました。

2000年代には、オランダに地域本部を開設して海外進出を加速させ、売上高が50億ドルを突破します。現在は、持続可能な素材のリーディングカンパニーとして、気候変動、廃棄物危機、人口増加などの地球規模の問題に取り組んでいます。

経営概念

イーストマン・ケミカルの目標は、「世界をリードするイノベーション企業になること」です。そして、持続可能な素材の開発により、次世代の生活の質を向上させることが目的です。これらの実現のために、幅広い業界の顧客やブランドと協力して、社会や地球規模のニーズに応えようとしています。なお、同社が大切にしている価値観は以下の4つです。

  • 安全と健康
  • 正直さと誠実さ
  • 包括と多様性
  • 成果重視のチーム

イーストマン・ケミカルの経営状況

イーストマン・ケミカルの経営状況として、過去6年間の売上高・EBITの推移を紹介します。※EBITとは、金利税引前利益のことです。

参考:イーストマン・ケミカル「Annual Reports

2023年度の売上高は92億ドル(1兆3,800億円)で、2022年度の105億ドル(1兆5,750億円)から13億ドル(1,950億円)減少しました。一方、2023年度のEBITは13億ドル(1,950億円)で、2022年度の11億5,000万ドル(1,725億円)から1億5,000万ドル(225億円)増加しました。売上高が減少した理由は、需要の低迷による販売数の減少が挙げられます。※1ドル=150円換算

また、地域別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:イーストマン・ケミカル「Annual Reports

地域別売上高の構成割合から、同社は世界各地で製品を販売していることがわかります。なお、アメリカ国内の売上高の比率は41.2%です。

イーストマン・ケミカルの事業別売上高の推移

イーストマン・ケミカルの経営状況を深掘りするために、この章では事業別の売上高に焦点を当てて解説します。まず、事業別売上高の構成割合は以下のとおりです。

参考:イーストマン・ケミカル「Annual Reports

さらに、各事業の事業内容に加えて、売上高とEBITの推移を紹介します。

先端材料

先端材料は、エレクトロニクス・医療・医薬品・インフラストラクチャー分野向けに、ポリマー・フィルム・プラスチックなどを製造・販売している事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

参考:イーストマン・ケミカル「Annual Reports

2023年度の売上高は29億ドル(4,350億円)で、2022年度の32億ドル(4,800億円)から3億ドル(450億円)減少しました。2023年度のEBITは3億4,000万ドル(510億円)で、2022年度の3億7,000万ドル(555億円)から3,000万ドル(45億円)減少しました。売上高が減少した要因として、販売数の減少が挙げられます。また、EBITが減少した要因として、販売数の減少に製造コストの増加が挙げられます。

添加剤と機能製品

添加剤と機能製品事業は、食品・飼料・農業・エネルギー・消耗品・エレクトロニクスなどの製品用素材を製造・販売している事業です。売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

参考:イーストマン・ケミカル「Annual Reports

2023年度の売上高は28億ドル(4,200億円)で、2022年度の31億ドル(4,650億円)から3億ドル(450億円)減少しました。2023年度のEBITは4億3,000万ドル(645億円)で、2022年度の4億8,000万ドル(720億円)から5,000万ドル(75億円)減少しました。売上高が減少した要因として、販売価格の低下と販売数の減少が挙げられます。また、EBITが減少した要因として、販売数の減少と製造コストの増加が挙げられます。

化学中間体

化学中間体事業は、工業用製品・インフラストラクチャー・健康・福祉・食品・飼料などの分野に向けて、中間体を製造・販売している事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。※中間体とは、原料から目的の化合物になるまでの途中の化合物

参考:イーストマン・ケミカル「Annual Reports

2023年度の売上高は21億ドル(3,150億円)で、2022年度の30億ドル(4,500億円)から9億ドル(1,350億円)減少しました。一方、2023年度のEBITは4億3,000万ドル(645億円)で、2022年度の4億ドル(600億円)から3,000万ドル(45億円)増加しました。売上高が減少した要因として、販売価格の低下と販売数の減少が挙げられます。また、EBITが増加した要因は、事業売却益に加えて、2022年度のEBITには生産拠点閉鎖に伴う資産減産やリストラ費用が含まれることが挙げられます。

繊維

繊維事業は、主にタバコのフィルターに使用するろ過媒体、アパレル・家庭用家具など向けの繊維を製造・販売している事業です。同事業の売上高とEBITの推移は以下のとおりです。

参考:イーストマン・ケミカル「Annual Reports

2023年度の売上高は12億9,000万ドル(1,935億円)で、2022年度の10億2,000万ドル(1,530億円)から2億7,000万ドル(405億円)増加しました。2023年度のEBITは3億9,000万ドル(585億円)で、2022年度の1億3,000万ドル(195億円)から2億6,000万ドル(390億円)増加しました。売上高が増加した要因として、販売価格の増加が挙げられます。また、EBITが急拡大した要因として、原材料・エネルギー・流通コストの低下や販売価格の上昇が挙げられます。

サステナビリティを推進するイーストマン・ケミカル

イーストマン・ケミカルは成長戦略として、サステナビリティを推進しています。具体的に、同社が掲げる目標は以下のとおりです。

  • スコープ1及び2の温室効果ガス排出量を2030年までに3分の1に削減し、2050年までにカーボンニュートラルを達成すること。※スコープ1は自社設備から排出される温室効果ガス、スコープ2は購入したエネルギーを作る際に排出される温室効果ガスのことです。
  • 2030年までに年間5億ポンド以上のプラスチック廃棄物をリサイクルすること。
  • 研究開発費の100%を、世界中の人々の生活の質を向上させる持続可能な材料の開発に使用すること。
  • 男女平等を達成すること
  • アメリカの業界内における人種平等のリーダーとなること。

実際に同社は2022年、フランスの分子プラスチックリサイクル施設の建設に最大10億ドル(1,500億円)の投資計画を発表しており、年間最大16万トンのプラスチック廃棄物をリサイクルする予定です。

参考:KYODO NEWS PRWIRE「イーストマンが、フランスに世界最大級の分子プラスチックリサイクル施設を建設し循環型経済を加速させるため、最大10億ドルを投資

まとめ

イーストマン・ケミカルは、世界100カ国以上に進出しているアメリカの化学メーカーです。サステナビリティを推進しているのが特徴で、先ほど紹介したフランスにおける分子プラスチックリサイクル施設への投資計画の他にも、アウトドアアパレルメーカーのパタゴニアと提携して衣料品のリサイクルにも取り組んでいます。事業拡大や海外進出を検討している経営者様は同社の手法を参考に、サステナビリティをキーワードにした事業展開を検討してみてはいかがでしょうか。

参考:イーストマン・ケミカル「Eastman and Patagonia join forces to tackle global textile waste crisis

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