COP29の概要とテーマ、日本の気候変動に関する取り組みを解説

2024年11月11日から22日にかけて、アゼルバイジャン共和国・バクーで国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が開催されます。COPは気候変動のテーマでよく聞くキーワードですが、「どのような意味?」や「どのような内容が話し合われるの?」などの疑問をお持ちの方もいるでしょう。そこで、今回はCOPの概要やCOP29での主要テーマをわかりやすく解説します。

COPとは

COPとは、「Conference of the Parties」の略で、日本語で締約国会議を意味する言葉です。締約国会議は国際条約を締結した国同士の会議のことで、COPは多くの国際条約において最高決定機関として設置されています。COPの最も代表的な条約は国連気候変動枠組条約ですが、その他にも生物多様性条約や砂漠化対策条約などのCOPが話題に上ることがあります。

目的

国連気候変動枠組条約は、1992年5月に採択され、1994年3月に発効した条約です。大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目的としています。そして、その実現のために、1995年から毎年開催されているのが国連気候変動枠組条約のCOPです。※2020年のみ新型コロナウイルスの影響で中止。なお、現在の締約国数は198カ国・機関で、これらの代表者や学者、NGOなどの様々な関係者が参加しています。

参考:環境省「地球環境・国際環境協力

歴史

国連気候変動枠組条約のCOPの第1回は、1995年4月にドイツのベルリンで開催されました。ベルリンでの締約国会議をCOP1と呼び、COPの後に続く数字は回数を表しています。そのため、今年のCOP29は、29回目であることを示しています。これまでの28回のCOPで特に重要なのは、COP3とCOP21です。それぞれについて解説します。

京都議定書の採択

1997年12月に京都で開催されたCOP3では、京都議定書が採択されました。京都議定書は、2008年から2012年の間に、「1990年比で温室効果ガス排出量の5%削減」を目標とした取り決めのことです。この取り決めは、国際社会が協力して気候変動を予防する第一歩位となりました。

パリ協定の採択

2015年12月にパリで開催されたCOP21では、パリ協定が採択されました。パリ協定とは、京都議定書の後継となるもので、定められた目標は以下のとおりです。

  • 世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2度より充分低く保ち、1.5度以内に抑える努力をすること。
  • 今世紀後半に人為的な温室効果ガス排出量を実質ゼロにすること。

パリ協定の最大のポイントは、温室効果ガスの排出削減を全ての参加国に義務を課している点です。

COP29の概要

出典:COP29 Azerbaijan

COP29が開催される首都は、アゼルバイジャン共和国のバクーです。アゼルバイジャン共和国は旧ソ連の構成国で、東にカスピ海、北西にジョージア、南にイランがあります。国土は日本の約4分の1で、人口は1,050万人です。この章ではCOP29の概要として、スケジュールと主要テーマについて紹介します。

COP29のスケジュール

COP29は2024年11月11日から22日まで開催されます。期間中のスケジュールは以下のとおりです。

COP29の日程と議題

日程議題
11月11日COP29開幕
11月12日~13日気候行動世界リーダーズサミット
11月14日金融・投資・貿易
11月15日エネルギー/平和・救援・復興
11月16日科学・技術・イノベーション/デジタル化
11月17日休息日
11月18日人的資本/子どもと青少年/健康/教育
11月19日食料・農業・水
11月20日都市化/交通/観光
11月21日生物多様性/先住民/ジェンダー/海洋と沿岸域
11月22日最終交渉

参考:COP29 Azerbaijan「What is COP29?

COP29の主要テーマ

COP29で議論される予定の主要テーマは以下の3つです。

  • 気候資金の新規合同数値目標
  • 1.5度目標の実現に向けた各国の削減目標
  • 隔年透明性報告書(BTR)の提出

各テーマについてわかりやすく解説します。

気候資金の新規合同数値目標

COP29での主要テーマの1つ目は、気候資金の新規合同数値目標です。

気候資金とは、先進国が途上国に対して温暖化対策を支援するための資金のことです。COP15では、2020年までに気候資金を年間1,000億ドルに引き上げることを目標としました。その後、目標の期間は2025年まで延長されています。なお、2022年に年間1,159億ドルとなり、年間1,000億ドルの目標を達成しています。

COP29では、この気候資金の2025年以降の新規合同数値目標が議論される予定です。しかし、先進国と途上国の間で調整が難航しており、具体的な金額もまだ議論されていない状況です。さらに、先進国は特定の途上国を気候資金の拠出国に求めるなどの提案もしており、議論の行方が注目されています。

1.5度目標の実現に向けた各国の削減目標

COP29の主要テーマの2つ目は、1.5度目標の実現に向けた各国の削減目標です。1.5度目標とは、COP21で採択されたパリ協定の気温上昇を1.5度に抑える目標のことです。前回のCOP28では、温室効果ガスの削減に向けた各国の取り組みが評価されました。その結果、世界の取り組みが1.5度目標を達成できる水準でないことが示されました。そこで、各国の新たな削減目標の提出期限が2025年2月に迫るなか、1.5度目標を達成できるように、各国の協力が進むのかに注目が集まっています。

隔年透明性報告書(BTR)の提出

COP29の主要テーマの3つ目は、隔年透明性報告書です。パリ協定では、2年ごとに各国の進捗状況である隔年透明性報告書の提出を求めています。その1回目の提出期限が2024年12月31日です。COP29では、何カ国の隔年透明性報告書が提出され、どのような議論がされるのかに注目が集まっています。

日本の現状と取り組み

日本は気候変動に対する目標として、以下の中期的目標と長期的目標を掲げています。

  • 中期的目標

2030年度に、2013年度比で温室効果ガス排出量を46%削減すること。

  • 長期的目標

2050年までにカーボンニュートラルを実現すること。
※カーボンニュートラルとは、温室効果ガス排出量と削減量を合算して実質ゼロにすることです。

この目標に対して、2022年度の日本の温室効果ガス排出量は吸収量を差し引くと約10億8,500万トンであり、2013年度比で22.9%減少しました。減少しているものの、中期的目標あるいは長期的目標を達成するには、さらなる取り組みが必要な状況です。そこで、この章では現在日本が実施している取り組みの一例を紹介します。

革新的なイノベーションの推進

経済産業省では、次世代太陽光発電や低コストの蓄電池、カーボンリサイクルなどの分野において、革新的なイノベーションの推進を支援しています。具体的には、2兆円の基金により、最先端技術の開発・実用化を加速させていくとのことです。

エネルギー政策の推進

資源エネルギー庁では、「水素や洋上風力などの再生可能エネルギーの拡充」「デジタル技術による水力発電の効率化」「原子力政策の推進」などに取り組んでいます。これらの取り組みにより、安定的なエネルギーの確保とグリーン社会の実現に貢献するとしています。

グリーン成長戦略の推進

グリーン成長戦略とは、経済産業省が中心となり策定したカーボンニュートラル実現のための政策です。具体的に14の重点産業分野が指定されており、具体的な目標と取り組みを示しています。

地域脱炭素ロードマップ

地域脱炭素ロードマップは、環境省が中心となり取り組んでいる政策です。地域脱炭素ロードマップでは、2025年までに少なくとも100カ所の脱炭素先行地域を指定する予定です。2025年までの5年間を集中期間として、脱炭素先行地域に対して重点的に対策を実施しています。そして、脱炭素先行地域から他の地域に脱炭素の取り組みが広がる「実行の脱炭素ドミノ」を起こすことで、2050年を待たずに、脱炭素で強靭な活力ある地域社会を全国で実現できるとしています。

持続可能な社会に貢献するビジネスを検討しよう

2024年11月11日から22日にかけてCOP29が開催され、今後の気候変動対策における主要テーマが議論されます。これまでのCOPにおいて、日本は気候変動対策に積極的な姿勢を示していますが、中期的目標・長期的目標の達成にはさらなる対策が必要です。

そのため、企業に対してもカーボンニュートラル達成に向けた技術革新や環境負荷低減の取り組みが求められています。そこで、再生可能エネルギーの活用や新技術開発を推進し、持続可能な社会の構築に貢献するようなビジネスを検討していくことが重要になっています。

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