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移転価格税制とは?わかりやすく解説|否認される取引と企業の対応方法
2026.08.19 更新 / PROVE通信編集部
監修:森英朗(グループ代表)
移転価格税制とは?わかりやすく解説|否認される取引と企業の対応方法

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移転価格税制とは、法人が海外の関連会社と行う取引の対価を、第三者同士なら付く価格(独立企業間価格)で見直す仕組みです。グループ内だから安い、高い、無利息、という決め方だと、日本側の所得が減ったとみなされることがあります。ご担当者様が「利益を移しただけ」と社内で説明すると、文書と調査の話が後回しになります。本記事では、現行の根拠、否認されやすい取引、文書の期限、相互協議の公表値をわかりやすく解説します。

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当コラムで注目する用語

  • 国外関連者:発行済株式等の50%以上の保有など、法令が定める特殊の関係にある外国法人。細目は租税特別措置法第66条の4。
  • 独立企業間価格:資本関係の無い第三者同士なら成立する対価。移転価格の物差し。
  • ローカルファイル:その対価が独立企業間価格だと説明する書類。電磁的記録でも可。
  • 同時文書化:確定申告書の提出期限までにローカルファイルを作成または取得し、保存する義務。
  • 事前確認(APA):算定方法を税務当局が事前に確認する手続。昭和62年に日本が導入。
  • 相互協議(MAP):租税条約に基づき、日本と相手国の税務当局が二重課税を減らす協議。

移転価格税制とは何か

国税庁の案内では、法人と国外関連者との取引価格が独立企業間価格と異なり、日本の課税所得が減っている場合に、その取引が独立企業間価格で行われたとみなして所得を計算する、と整理されています。根拠は租税特別措置法第66条の4です。2026年時点でも、この枠組みが現行です。

迷いやすいのは、「税金を払いたくないから海外に利益を飛ばす悪い会社の話」だと思い込むことです。通常の親子間の製品売買、ロイヤルティ、本社の管理費、グループ内融資も対象になります。確定申告書の別表十七(四)(国外関連者に関する明細書)は、取引区分として棚卸資産の売買、無形資産の使用料、役務提供、金銭の貸借(貸付金・借入金の利息)を挙げています。企業様の海外子会社が量産を担い、日本が開発と販売を担う、という分担そのものが、対価の説明を求められます。

歴史では、昭和61年度税制改正で導入されました。事前確認は昭和62年に日本が世界に先駆けて始め、米国は1991年、その後各国に広がりました。2016年度(平成28年度)改正で、OECDのBEPS行動13を踏まえた文書化が入りました。いま見る条文と期限は、この2016年以降の形が土台です。

海外子会社との取引で、なぜ重要か

国内の100%子会社との取引は、連結で相殺される感覚が残りやすいです。国外関連者との取引は、国が二つあるので相殺しません。日本で安く売ると日本の所得が減り、相手国で高く買うと相手の所得も歪みます。両方の税務当局が、同じ取引を別の物差しで見ます。2010年代のBEPS(税源浸食と利益移転)対応で、文書の型が国をまたいで揃ったのも、この二重の見方を減らすためです。

OECDの移転価格ガイドラインは、独立企業原則を国際的な共通語にしています。2022年版が、2026年時点の参照の中心です。日本の事務運営は、平成13年6月1日付の「移転価格事務運営要領」が指針で、令和4年6月10日付改正が案内に明示されています。調査官がどの書類をどの期限で求めるか、比較対象の更新をいつ求めないかは、この要領に落ちています。

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将来の着地も同じです。子会社を増やした年、無形資産のライセンスを始めた年、金利を変えた年は、対価の説明が翌期の申告に間に合うかが論点になります。価格表を変えた事実だけ残し、比較対象の説明が無いと、調査のときに45日では足りません。相手国でも同じ取引を見るので、日本側の増額だけが先に確定すると、二重課税が残ります。

独立企業間価格と、グループ内の社内価格

見方グループ内の社内価格独立企業間価格
決める人本社の予算・資金繰り第三者なら付く対価(比較対象・利益率など)
よくある目的子会社の運転資金、税負担の平準機能・リスク・資産に見合う対価
税務上の扱いそのままでは通らないことがある措置法第66条の4の物差し

社内価格が悪い、という話ではありません。資金繰りのための仮の数字と、申告に使う対価を分ける、ということです。例えば、立ち上げ期の子会社に在庫を安く出す判断は経営としてあり得ます。税務では、その安さが第三者間でも説明できるか、値引きの期間と回収の計画があるかを見ます。

算定方法は、比較対象価格、再販売価格、原価基準、取引単位営業利益、利益分割など、法令と事務運営要領が置くメニューから、その取引に最も適切なものを選びます。方法の名前を契約書に書くだけでは足りず、比較対象の選定過程がローカルファイルの中身になります。公開情報で近い第三者取引が見つからない場合でも、利益率で比べる、という逃げ道はあります。その場合は、機能とリスクが近い会社をなぜ選んだかを、数字の前に書きます。

否認されやすい三つの取引

無形資産

技術ライセンス、商標、顧客データ、ノウハウの対価です。開発したのが日本なのに、海外子会社がほぼ無償で使う、あるいは逆に海外が開発したのに日本が高いロイヤルティを払う、どちらも説明が要ります。OECD側では、開発・改良・維持・保護・使用(いわゆるDEMPE)の機能を誰が果たしたかが論点になります。契約書の名義と、実際に研究開発費を払っている場所がずれると、対価が動きやすいです。無形資産の取引だけでも、相手先あたり前年度3億円以上なら、売買が小さくても同時文書化の対象になります。

役務提供

本社の経営指導、IT、人事、品質監査などのグループ内役務です。例えば「グループ貢献料」という名前で売上の何%かを取るだけでは、役務の中身と便益が分かりません。国税庁の文書化FAQは、経営管理料の受領やグループ内役務の対価を、取引の例に挙げています。議事録も成果物も無い月次チャージは、調査で「何をした対価か」と聞かれます。

金銭貸借

親子ローンの金利、保証料、債権放棄です。無利息や市場と大きくずれた金利は、独立企業間の借入条件と比べられます。運転資金の立替を毎月繰り返していると、貸付の実態と認定されやすいです。契約期間、担保、相手の信用力を、第三者の銀行ならどう付けるか、に引き直します。保証だけ日本親会社が付け、金利は子会社の単独信用と同じ、という組み合わせも、保証料の有無が論点になります。

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ローカルファイルの期限と、50億円・3億円

同時文書化は、一の国外関連者との取引ごとに見ます。国税庁FAQ(問66)では、前事業年度の①国外関連取引の対価の合計が50億円以上、または②無形資産取引の対価の合計が3億円以上のとき、その相手との取引について、確定申告書の提出期限までにローカルファイルを作成または取得し、保存する、とあります。保存期間は原則7年、欠損金が生じた事業年度は10年です。電磁的記録での作成・保存も認められています。前事業年度が無い場合は当該事業年度で見ます。

免除は、「50億円未満かつ3億円未満」の両方を満たす相手についてです。グループ全体で50億円、ではありません。相手が3社いれば、3社それぞれで判定します。保存場所は納税地または国内の事業所等です。紙の原本が海外本社にしか無い、という置き方は、調査の45日に間に合いません。

国別報告事項と事業概況報告事項(マスターファイル)は別物です。直前の最終親会計年度の総収入が1,000億円未満の多国籍企業グループは、これらの提供が免除されます。ローカルファイルの50億円・3億円とは基準が違います。中堅でも、特定の海外子会社との取引が大きいと、ローカルファイルだけ先に対象になります。国別報告を出していないことと、ローカルファイルが要らないことは別です。

調査で見られる点と、45日・60日

調査では、ローカルファイルの提示または提出を求められた日から、45日を超えない範囲で職員が指定する日が期限です(措置法第66条の4第12項等、FAQ問85)。独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類は、60日を超えない範囲です。同時文書化が免除された取引でも、相当する書類を60日期限で求められることがあります。

期限までに出せないと、推定課税や同業者調査ができる、とFAQは書いています。推定課税とは、納税者の書類が揃わないときに、類似の事業を営む者の利益率などから対価を推計して所得を計算し得る、という仕組みです。記載誤りや漏れのままでは、提出したことにならない場合もあります。調査の直前に比較対象を作り始めると、45日に間に合いません。

事前確認を受けている取引でも、同時文書化義務は免除されません。ただしFAQ(問80)は、申出書や年次報告書などで同様の書類が揃っているなら、原則として追加作成は要らない、としています。確認を取ったから何も残さなくてよい、という読みは危険です。

相互協議とAPAの位置づけ

日本で増額更正され、相手国で減額されないと、同じ利益に二つの税金が残ります。相互協議は、租税条約を使って当局同士が調整する手続です。事前確認のうち相互協議を伴うものは、算定方法を両国で先に揃えるためのものです。伴わないAPAは日本側の予測可能性は高まりますが、相手国の課税リスクは残ります。

国税庁が令和7年11月に公表した令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の状況では、発生280件(前年度比132%)、処理242件(同111%)、繰越773件です。発生のうち事前確認は194件(69%)、移転価格課税とその他は86件です。処理のうち事前確認は194件(80%)です。

処理1件当たりの平均期間は39.6か月(前年度31.8か月)でした。事前確認は42.4か月(前年度35.8か月)、移転価格課税その他は28.5か月です。国税庁のAPA案内には「平均2年程度」という実績の書き方もありますが、直近の相互協議統計は3年超です。申出は、確認対象初年度の開始日までに行う必要があります。申出の前に事前相談ができます。確認後は年次報告書の提出が続きます。日本の事前相談・APA審査に手数料は不要です。相手国では手数料がある場合があります。

注意点と、次に確認すること

本稿の金額基準と日数は、国税庁の文書化FAQと措置法第66条の4に依拠します。国外関連者の判定、比較対象の適否、加算税の計算は事案ごとに分かれます。有報の税務注記に「移転価格の不確実性」と書いてある会社はありますが、否認額の横断統計を本稿では使いません。

次に確認するのは、国外関連者ごとの受払合計(前事業年度)と、無形資産だけの受払です。50億円または3億円に当たる相手は、今期の申告期限までにローカルファイルがあるかを見てください。当たらない相手も、調査の60日に出せる説明があるかを別表にします。APAを検討するなら、初年度開始前に事前相談の予約が間に合うかが先です。平均40か月前後かかる前提で、稟議の期限を切ると遅れます。更正を受けたあとの相互協議は、条約の申立期限があるので、税理士と相手国側の期限を同じ表に置いてください。

よくある質問

主な出典

調査時点:2026年8月

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※2026年8月時点の情報をもとに作成しています。監修:森英朗(グループ代表)。

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