
2025年10月4日に行われた自民党総裁選で、高市氏が選出されました。これにより、自民党として初めての女性総裁が誕生し、続く内閣総理大臣指名選挙を経て、女性として初の首相・高市政権が発足しました。
新政権の誕生は、しばしば新たなビジネスチャンスの創出につながります。加えて、高市氏が日本経済の再生に強い意欲を示していることから、ビジネスに与える影響に注目が集まっています。
その新政権の柱として掲げられているのは、「責任ある積極財政」と「安全保障の強化」です。本記事では、これらの政策方針を踏まえ、高市政権のもとでビジネスチャンスの拡大が期待される7つの業界を紹介します。
※本記事は2025年10月に執筆された記事です
高市政権が円安を招く背景
高市政権では、円安が一段と進む可能性があります。その背景は、高市氏が掲げる「責任ある積極財政」です。
積極財政とは、赤字国債を発行してでも景気対策や減税を行い、経済成長を促す政策を指します。市場の資金が増えることから、経済の活性化が期待できます。一方、この政策のデメリットは、財政赤字が拡大することです。
財政赤字の拡大は、日本円の信用を低下させ、円安や長期金利の上昇を引き起こす直接的な要因となります。
高市氏は歳入と歳出の差であるプライマリー・バランスではなく、国の保有資産を考慮した「純債務残高GDP比」を重視する立場です。これは簡単に言えば、赤字があっても国の資産が上回れば問題ないという考え方です。しかし、市場では財政赤字の拡大は日本円の信用低下につながるとの見方が根強く、円安になる可能性が高いとみられています。
高市政権が重視する安全保障の強化
高市政権で注目されている政策の一つは、「安全保障の強化」です。高市氏は、自身の基本理念として、国家の使命は以下の3点を守ることにあると掲げています。
- 国民の生命と財産
- 領土・領海・領空・資源
- 国家の主権と名誉
これらの理念からもわかるように、高市氏は安全保障の強化を重視しています。具体的な政策として、国防体制の構築、サイバーセキュリティの強化、エネルギー・資源安全保障の強化などを挙げています。
高市政権でビジネスチャンスが広がる業界7選

前述のとおり、高市政権では円安と安全保障分野への支援が見込まれます。これらの影響により、ビジネスチャンスが拡大する7つの業界を紹介します。
自動車
円安は輸出企業にとって大きな追い風となります。円安が進むほど、輸出先での価格競争力が高まり、利益の拡大が期待できるためです。特に恩恵を受けやすい代表的な業界は自動車産業です。
一般社団法人 日本自動車工業会の調査によると、2023年の日本国内の四輪車生産台数は889万9千台で、そのうち442万2千台が輸出されました。

出典:一般社団法人 日本自動車工業会「四輪車」
国内で生産される約半数が海外に輸出されており、円安の影響は極めて大きいと言えます。例えば、トヨタ自動車株式会社では、円安が1円進むごとに営業利益が500億円以上増加するとされています。
このような背景から、高市政権の積極財政による円安は、自動車産業にとって大きなビジネスチャンスとなるでしょう。
半導体
半導体は、現代のデジタル技術を支える「産業のコメ」です。特に、AIやDX、5Gといった先端技術の発展には不可欠です。その重要性から日本政府も経済産業省を中心に「半導体・デジタル産業」の強化を支援しています。その最たる例が最先端半導体の国産化プロジェクトの推進です。
また、経済安全保障の観点からも半導体の重要性は増しています。米中関係の悪化やロシアのウクライナ侵攻以降、サプライチェーンの安定化が国際的な課題です。そこで、部品や材料が入手困難になるのを回避するため、自国生産体制の構築や地政学リスクの低い地域からの供給ルートの確保が求められています。
このように、「円安による競争力向上」「手厚い政策支援」「経済安全保障の強化」という三つの要素が重なることから、半導体産業は高市政権下でビジネスチャンスが拡大すると期待されています。
サイバーセキュリティ
高市氏は、以前からサイバー攻撃を国家安全保障上の重要な脅威と位置付けています。それを示すように、直近ではアサヒグループホールディングスがランサムウェア攻撃を受け、大きな被害が発生しました。このように、サイバーセキュリティの強化は国家安全保障における喫緊の課題です。
また、高市氏はサイバー人材の育成にも意欲的な姿勢を示しています。こうした背景から、サイバーセキュリティ分野は、高市政権下においてビジネスチャンスの拡大が期待できるでしょう。
インフラ
日本政府は、2013年に成立した「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」に基づき、国土強靱化を推進しています。国土強靱化とは、自然災害に強く、被災後も迅速に復旧できる社会の構築を目指す取り組みです。
この政策には、2026年度から2030年度までの5年間で総額20兆円強が投じられる予定であり、インフラ業界にとって大きなビジネスチャンスが見込まれています。主な施策は以下のとおりです。
- 老朽化したインフラの整備
- 交通・通信・エネルギーなどライフラインの強化
- デジタル技術を活用した復興・災害対応の強化
- 災害時における官民連携の強化
- 地域防災力の向上
また、高市氏も国土強靱化を安全保障の観点から重視しており、新政権でもこの取り組みは継続される見通しです。
AI(人工知能)
高市氏の陣営は総裁選挙中に「AIサナエ」を公開し、大きな話題を呼びました。これは、高市氏の過去の著書やSNS投稿を学習したAIが、支持者からの質問に自動で回答する仕組みです。
この取り組みからもわかるように、高市氏はAIの活用に前向きであり、新政権でもAI推進の立場を取るとみられています。AIを重視する背景には、主に次の2つの観点があります。
- 国防体制の強化
- 国際競争力の維持
また、高市氏自身も成長産業としてAI分野を挙げており、積極的な支援策が期待されています。欧州などでAI規制が進む中、こうした新政権の姿勢は、日本のAI関連企業にとってビジネスチャンスの拡大につながる可能性があります。
宇宙
高市氏は、内閣府特命担当大臣(宇宙政策担当)を務めた経験があり、宇宙ビジネスや宇宙政策に精通しています。在任中には、宇宙ごみ(デブリ)の回収技術を有する日本企業を高く評価したこともあります。宇宙ごみとは、過去のロケットや人工衛星の破片など、地球の周囲を漂う不要な物体のことです。これらは衛星の打ち上げや宇宙開発の妨げとなる深刻な国際的課題です。日本は宇宙ごみの除去の分野で世界をリードすることで、宇宙開発をけん引する存在になると期待されています。
防衛
高市氏は、安全保障の観点から防衛力の強化を重視しており、防衛費増額の必要性を訴えています。その方針のもと、防衛費の上限とされてきたGDP比2%を超えることも容認する可能性が高いです。こうした方針により、防衛関連産業ではビジネスチャンスの拡大が期待されています。
高市政権がもたらすビジネスチャンスを掴もう
高市政権は積極財政によって、経済の活性化を図るとみられています。これは1930年代のアメリカで実施されたルーズベルト大統領の「ニューディール政策」に通じる考え方です。すでに成功した実績もあることから、多くの産業にビジネスチャンスをもたらすと考えられています。
特に円安の進行は輸出企業にとって大きな追い風となります。高市政権がもたらす新たなビジネスチャンスを掴むためにも、この機会に海外進出を検討してみてはいかがでしょうか。