
2025年4月13日に「EXPO 2025 大阪・関西万博」がついに開幕しました。連日メディアでも大きく取り上げられ、多くの注目を集めています。
これまでの万博(万国博覧会)では、未来を感じさせる技術が数多く登場し、やがて私たちの暮らしに自然と取り入れられてきました。今回の万博でも、最先端技術が数多く登場しています。そこで本記事では、大阪・関西万博で注目の最先端技術・企業5選を紹介します。
万博は未来技術の祭典
万博は、世界各国の人やモノが集まるイベントで、最先端技術や文化、芸術などが展示されています。これまでの万博においても、数々の革新的な技術が発表されてきました。実際に、過去の万博で初めて紹介され、その後社会に普及した技術やサービスは数多くあります。
例えば、1853年のニューヨーク万博では、「エレベーター」が展示されました。当時は革新的な技術でしたが、現在では欠かせない技術となっています。また、1876年のフィラデルフィア万博では、「電話」が登場し、その後の通信のあり方を変えました。
1970年に開催された大阪万博においても、革新的な技術が数多く登場しました。ファミリーレストラン、ワイヤレステレフォン、電気自動車、動く歩道など、現代ではこれらの技術が私たちの暮らしを支えています。
さらに、2005年の愛知万博(愛・地球博)では、AED(自動体外式除細動器)が登場し、現在では命を守る重要な設備として普及しています。
大阪・関西万博で注目の最先端技術・企業5選
万博は、未来の技術を先取りして体験できるイベントです。大阪・関西万博においても、次世代に普及すると思われる新たな革新が数多く披露されています。今回はそのような技術の中から、注目度の高い5つの最先端技術・企業を紹介します。
株式会社SkyDrive:空飛ぶクルマ

出典:株式会社SkyDrive
大阪・関西万博の目玉の一つが「空飛ぶクルマ」です。複数の企業が開発を進めており、万博会場ではデモ飛行や展示が行われています。今回は、株式会社SkyDriveの技術を紹介します。
同社は、2018年に設立されたスタートアップ企業です。「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」というミッションのもと、空飛ぶクルマの開発をはじめ、物流用ドローンやドローンショーの企画・運営を手がけています。同社が開発している空飛ぶクルマ「SD-05型」は、3人乗り仕様で、12基のモーターとローターによって飛行します。特徴は以下のとおりです。
静音性:地上での体感ノイズはヘリコプターの3分の1以下
軽量性:離陸時の重量はヘリコプターの約半分
構造のシンプルさ:電動化により、使用する部品はヘリコプターの10分の1程度
万博会場では、「空飛ぶクルマ ステーション」にて、株式会社SkyDriveが開発する「SD-05型」の実物大モックアップ(模型)が展示されています。※7月中旬~8月下旬に、大阪湾岸とポートの2地点間飛行を予定。
近い将来、誰もが自由に空を移動する時代を迎えるかもしれません。株式会社SkyDriveの挑戦は、その第一歩と言えるでしょう。
※「空飛ぶクルマ」とは、電動化や自動化といった最新の航空技術、そして垂直離着陸が可能な空の移動手段です。ただし、「クルマ」と称していますが、道路を走行する機能を備えているとは限りません。
岩谷産業株式会社:水素燃料電池船

出典:岩谷産業株式会社「水素燃料電池船特設サイト」
大阪・関西万博の開催地である夢洲(ゆめしま)と大阪市街地を結ぶ移動手段として、水素燃料電池船「まほろば」が運航されています。「まほろば」は、岩谷産業株式会社が開発した、日本初の水素燃料電池と蓄電池のハイブリッドで航行する客船です。持続可能な交通手段として注目を集めています。
水素燃料電池は、水素と酸素の化学反応を利用した発電装置です。具体的には、発電時は水素と酸素を使用し、電気と水が生成されます。地球温暖化の原因とされるCO2(二酸化炭素)を一切排出しない、非常にクリーンな発電方式です。
「まほろば」の特徴は以下のとおりです。
- 運行中のCO2化炭素排出ゼロ
- 燃料のにおいがしない
- 騒音や振動が少ない
環境性能に優れているだけでなく、乗客にとっても快適な移動体験を提供してくれます。
水素は、持続可能な社会の実現に向けた重要なエネルギーのひとつです。「まほろば」に乗船すれば、未来のクリーンエネルギーがもたらす快適さと可能性を実感できるでしょう。
クオリプス株式会社:iPS心臓・心筋シート

出典:クオリプス株式会社
大阪・関西万博のパビリオン「PASONA NATUREVERSE」では、「iPS心臓」が注目を集めています。これは、クオリプス株式会社が開発した心筋細胞シートから作られたものです。親指ほどの大きさのiPS心臓が実際に拍動する様子を見ることができます。※心筋細胞シートは、「大阪ヘルスケアパビリオン」で展示されています。
iPS細胞は、2006年に誕生した多能性幹細胞です。すべての細胞に分化できる能力と、ほぼ無限に増殖できる性質を持ち、再生医療において大きな期待が寄せられています。この画期的な発見をしたのは、京都大学の山中伸弥教授です。同氏はその功績により2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
そして、クオリプス株式会社はiPS細胞から作製した心筋細胞を用いて、「心筋細胞シート」を開発しました。このシートは心臓の表面に貼り付けるように移植することで、損傷した心筋を修復したり、心臓に新しい血管の形成を促したりすることにより心臓全体の働きを助けるとされています。これまでは心臓移植を必要としていた、重症の心不全患者の治療法として期待されています。
NTTグループ:IOWN APN

出典:NTTグループ「IOWN APN」
大阪・関西万博の会場内では、主要施設が次世代ネットワーク「IOWN APN(アイオン・オールフォトニクス・ネットワーク)」で接続されています。これはNTTグループが開発中の通信技術です。「低消費電力」「大容量高品質」「低遅延」といった特徴を持ち、2030年以降の本格導入を目指して開発が進められています。IOWN APNの目標性能は、以下のとおりです。
- 電力効率を100倍に向上
- データ伝送容量を125倍に拡大
- 通信の遅延を200分の1に短縮
会場内では、この最先端ネットワークを活用し、未来の通信体験を一足早く体感できます。
例えば、万博のオープニングイベント「1万人の第九」では、IOWN APNの低遅延ネットワークが重要な役割を果たしました。大屋根リングに配置された大合唱団とウォータープラザの映像・音響装置をネットワークでつなぎ、映像と音のズレを感じさせない一体感あるパフォーマンスをサポートしました。
鹿島建設株式会社:CO2を吸い込むコンクリート

出典:鹿島建設株式会社「CO2吸収コンクリート」
鹿島建設株式会社は、大阪・関西万博の「CUCO-SUICOMドーム(クーコスイコムドーム)」を建設しました。このドームの特徴は、同社が2008年に中国電力株式会社・デンカ株式会社・ランデス株式会社の3社と共同で開発した、CO2を吸い込むコンクリートが使われていることです。
一般的なコンクリートは、主原料であるセメントの製造過程で多くのCO2を排出します。一方、CO2を吸い込むコンクリートは製造時のCO2の排出量を削減するのに加えて、硬化時には周囲からCO2を取り込むという特性を持ちます。これにより、トータルでCO2排出量を実質ゼロ以下に抑えることが可能となりました。
この技術は、世界で初めて実用化されたCO2吸収コンクリートとして、世界中から注目されています。
大阪・関西万博から日本企業の次なる成長戦略を学ぼう
大阪・関西万博には多くの日本企業が出展しており、それぞれが次世代に向けた革新的な技術やサービスを発信しています。これらの取り組みは、日本企業が描く「次なる成長戦略」の一端を示すものです。そのため、こうした最先端技術から、自社の成長戦略や海外展開のヒントを得られるでしょう。